パパは今幸せだろうか
「まあ、かしこまられても困るしアリスティドって呼んでよ。態度もそのままでいいよ」
「うん、アリスティドさん」
「さん、じゃなくて先生がいいな」
「え」
「これから君の魔法のお師匠様になるからね」
え。
寝耳に水。
「ふふ、驚いたかな?」
「それも言ってなかったのか…アニエス、アリスティドは魔法の天才だ。習うならこいつがいいと思うんだが、どうだ?」
「え…うん、よろしくお願いします」
どうだと言われても、よろしくとしか言えない。
「はい、じゃあ先生って呼んで」
「アリスティド先生?」
「もう一声」
「…アリス先生?」
「よろしい!」
にっこりと笑うアリス先生。パパそっくりのお顔で笑顔なんて、眩しすぎる。
「まあ、本格的な訓練は明日からとして。今日はみんなでお茶でも飲んで色々語らおう!まずは仲良くならないとね」
そんなこんなでアリス先生とのお茶会が始まる。
アリス先生はおしゃべり好きで、饒舌に色んなことをお話してくれる。
アリス先生のおしゃべりのおかげで変な緊張は解けて、パパのお顔もまともに見れるようになった。
パパはお茶を飲みつつアリス先生のおしゃべりに耳を傾けている。
相槌を打つのは主に私だけど、パパも少しだけ楽しそう。
「それでね、元老院のジジイどもを正座させてやったわけ」
「なにしてるの?」
「で、元老院なんて組織自体解体してやったの。その功績で国から侯爵に叙爵されたのがうちの始まり」
「本当になにしてるの!?」
自分のお家の思いもしない始まりを聞かされて呆れ果てる。
アリス先生は反省するそぶりもなく笑う。
パパは「子供の頃アンタによく聞かされたな…」なんてため息。
「でも、おかげで皇室はむしろ政治をやりやすくなっただろう?」
「そうだな」
「それでいいんだ…」
「いいのいいの」
ちらっとパパを見た。
パパのお顔は変わらずクールだけど楽しそう。
…パパは今幸せだろうか。
あんな夢が本当なら、パパも相当堪えたはず。
…私の存在は、パパの役に立つだろうか。




