パパが心配
パパは基本的にとても忙しい。
それでも体調管理はバッチリで、睡眠時間も食事の時間もちゃんととってるしお風呂もゆっくり浸かっている。私との時間も作ってくれてる。
でも、自分の趣味の時間を過ごすことはない。
執事さんにそれを聞いたら、仕事が趣味みたいなお方ですと言われた。
それでいいんだろうか。
「いいんではありませんの?」
「ええ…?」
セリーヌ様とのお茶会の際に相談してみたが、思いもしない回答が返ってきた。
「貴族男性なんて基本そんなものですわ。そして、たまーに出来た余暇にギャンブルで憂さ晴らしするんですの」
「うわぁ…」
「仕方ないことですわ。そもそも、趣味といっても良くてせいぜいスポーツくらいでしょう?他に何をするんですの?」
まあ、ゲームとかはまだ無い世界だしなぁ…ゲームも執事さんにお話して、いつか実用化しようって言ってもらえたけど…他の技術の実用化が優先されているし。
そもそも、技術の実用化にも魔法ありきだったりはするんだけど。ガワだけそれっぽくした魔法というか、発想だけ盗んだ感じというか…いいんだけど。私もこういう技術があるって説明は出来るけど、原理なんか知らないし。
「それもそうですね…」
「でしょう?」
「けど、パパはたまーに出来た余暇も全部私との時間に費やしてギャンブルすらしてる気配がなくて」
「それも無問題ですわ!」
セリーヌ様は言い切る。
「なんでですか?」
「アニエスちゃんこそ最大の癒しですもの!」
セリーヌ様らしいというかなんというか…でも、パパもそう思ってくれたならすごく嬉しいけど。
「ところでアニエスちゃん」
「なんですか?」
「私、婚約者にプロポーズされましたの」
「え、おめでとうございます!」
「うふふ、ありがとう。それで婚約者との結婚が来年なんですけれど、その後も一緒にお茶会をしてくださる?」
ちょこっと不安そうなセリーヌ様に言う。
「もちろんです!セリーヌ様はお顔が好みなので!」
「うふふ!そうですわね。そんな素直なアニエスちゃんも大好きですわ!」
最初は高飛車なお嬢様なイメージしかなかったけれど、なんだかんだで頼れるお姉さんなセリーヌ様は今では大切な…お姉ちゃん?って言っていいのかな。そんな存在だ。一人っ子の私にはとても有り難い。
「じゃあ、また遊びにきますわね!元気でいるんですわよ」
「はーい!」
セリーヌ様を見送る。また今度のお茶会が楽しみになった。




