嵐が去った
その後、セリーヌ様は名残惜しそうにしつつも帰っていった。
今はパパとくつろいでいる。
「嵐のような女だったな」
「お顔は抜群に良かったけどね」
「…ああいうのが好みか?」
「お顔だけ」
「そうか」
理解できない、とお顔に書いてあるパパ。
そんなお顔も素敵。可愛い。
「パパ」
ほっぺにちゅーする。
「パパの方がもっと素敵」
「ふん」
当然、と言いたげな顔もかっこいい。好き。
「でも、セリーヌ様ってなんであんなに可愛いモノ好きなんだろう」
「さてな。幼少期から異常に小動物を猫可愛がりしていたらしいが」
「異常に」
私も過度な面食いだから、異常に思われないように気をつけよう。
「それよりアニエス」
「なに?」
「皇帝陛下がお前のことに言及してから、お前に誘いの手紙が大量に届いている」
皇帝陛下が私を可愛がるとわざわざ宣言なさったのが、そこまで影響をもたらしたらしい。
いや、正直遅かれ早かれそうなるとは思っていたけど。
「断っていいか」
「いいけど、いいの?」
「今更媚びを売る相手もいない」
まあ、うちならそうでしょうね。
「なんなら、それこそあの女と遊ぶからと盾にでもしてやればいい」
「公爵家のご令嬢だもんね」
「せいぜい大好きな子猫ちゃんとやらの役にでも立たせてやろう」
パパは本当に怖いもの知らずだなぁ。
まあそこがいいんだけど。
なんだかんだで許されている立場だし。
「私は今はあんまり外と関わるよりパパとのんびりしてたい」
「それでいい。そのくらいのわがままは叶えてやるから」
「わーい!」
顔がいい相手なら大歓迎だけど、そういう人ばかりでもないし。
あと最近顔のいい人ばっかり見てるから、自分の中の顔の価値基準おかしくなってそうな気がする。
「パパ、ぎゅー」
「ん」
お話ついでにパパに抱きついておく。
パパの綺麗なお顔がそばにあって素敵。
パパもぎゅっとしてくれる。
「アニエス。お前はまだ子供なんだからたくさん甘えておけ」
「うん」
「愛してる」
「私も!」
子供なのをいいことに、これからもまだまだパパに甘えようと思います。




