公爵家のご令嬢は顔だけは抜群にいい
「はい、子猫ちゃん。あーん」
「あ、あーん」
セリーヌ様はすごい。
私を足の上に乗せて、手ずからあーんしてくる。
まさに猫可愛がり。
「まあまあ!子猫ちゃんは本当に可愛いですわ!」
「…アニエスです」
「アニエスちゃん、お姉さんのことはお好きかしら?」
いや、この状況で嫌いとは言えまいよ。
「…わからないです」
「まあ、残念」
「俺の娘に無理強いするな」
「あら、好きって言って欲しいだけですわ」
「だからそれをやめろと言っている」
パパはセリーヌ様のヤバさにやや引き気味。
セリーヌ様はそれを気にすることさえない。
もういいや、セリーヌ様のお顔を堪能しておこう。
「…」
「あら?アニエスちゃん、どうしましたの?」
「セリーヌ様のお顔を見ています」
「それは分かっていますわ」
「とてもお綺麗なので、せっかくなら堪能しておこうかと」
私がそう言えば、パパは面食らった顔をしてセリーヌ様は嬉しそうに笑った。
「あら、私たち相思相愛ですわね!いっそ私と結婚します?」
「やめろ、娘はそういう意味で言ってない」
「あら、可愛いモノ好きと綺麗なモノ好きで相思相愛ですわよ?」
「そうだけど違う。やめろ」
結婚て。
「結婚はやめておきます」
「あら残念」
「あと、私目当てでパパと結婚するのもやめて欲しいです」
「えー、でも四六時中一緒に居たいですわ」
「四六時中は無理でも、たまに一緒に遊ぶなら大丈夫です」
私がそう言えば、セリーヌ様はにぱっと笑った。
「まあ!ではとりあえずそれで良いとしますわ!」
「そうしてください」
「アニエス、いいのか」
「お顔は好みなので」
「…そ、そうか」
パパは若干私にも引き気味だけど、まあいいかとお茶を飲む。
「でも、真面目な話…私そろそろ結婚適齢期ですもの。公爵家にも侯爵家にも利益があるお話ですし、アニエスちゃんとずっと一緒にいられると思っていい案だと思いましたのに」
「セリーヌ様にはいいお話たくさんあるでしょう?」
「ええ。でも、イマイチ気が乗らないんですの…可愛い子がいるお家が少なくて」
「子供が出来たらその子が可愛いでしょう」
私が言えば、セリーヌ様は目をパチクリする。
「あら、盲点でしたわ」
「旦那さんを好きになれば、その人もきっと可愛く見えますよ」
「まあ、そんなものですの?」
どうやらセリーヌ様は急にほかの縁談に前向きになった様子。
セリーヌ様の後ろに控える侍女さんに、こっそりと感謝されたのは秘密だ。




