教会に行く
今日はパパと教会に来てる。月に一度、貴族は王都にある教会に挨拶に行く習慣があるのだ。日付は本人の好きでいいんだけど。
ちなみに現在皇室と教会の仲は良好で、それにはなんとパパが一役買っているとか。
パパは特に気にした様子もないけど、教会はパパに感謝しているらしい?
「ごきげんよう、教皇猊下」
「ごきげんよう、アニエス様。ああ、皇帝陛下から皇室の紋章の入ったものを贈られたとは本当だったのですね」
そんなわけで、パパと私がご挨拶に行くと教皇猊下が出迎えてくれるVIP待遇だったりする。
教皇猊下は私のこともパパの娘として可愛がってくれる。教皇猊下は、あんまり私たちの血の繋がりは気にしてないみたい。
「皇帝陛下が大々的に、アニエス様を可愛がると宣言されてびっくりしました」
「あはは…」
「でもアニエス様は実際とてもお父様に似ていてお可愛らしいですからね。皇帝陛下のお気持ちもわかるというもの」
うん、パパとは隔世遺伝でそっくりだ。
「アニエス様がお家を継ぐ暁には、教会も全面的に支持いたしますよ」
「ありがとうございます」
「皇室の紋章を使わせてもらうということは、アニエス様は皇室の庇護を受けるということ。アニエス様の将来は約束されたも同然ですね」
教皇猊下は多分、あの日の事件を知っているだろうに。
でもまあ、たしかにこのまま皇室の庇護を受けて教会にも支持されることになればすごく貴族として生きていきやすくなるのは本当だけど。
「…挨拶も終わったし、帰るか」
「その前にお祈りでしょ、パパ」
「ふん」
パパはあんまりお祈りの時間が好きじゃない。
とはいえ、教会への挨拶は神様への挨拶なのだからお祈りするのは必須。
パパ、この調子で良く教皇猊下に気に入られてるなぁ…本当、何したんだろう。
「ではこちらへ」
「はーい。パパ、行こ」
「ああ」
パパと手を繋いで、礼拝堂へ行く。
荘厳な雰囲気の中、パパとともに祈りを捧げる。
私の祈ることはそう。
パパといつまでも末永く仲良く過ごすこと。
そして、パパの綺麗なお顔をいつまでも近くで見られること。
「パパ!お祈りできたよ!」
「そうか」
「神様にご挨拶して、領地の平和と領民たちの幸せを願ったよ!あとパパとずっと仲良く出来るように祈った!」
「それは神ではなく俺に祈れ」
たしかに。
「だが、まあ。全部叶えてやる」
「えへへ。パパ大好き!」
「仲がよろしいですね。お二人とも」
にっこり笑って見送ってくれる教皇猊下。
「アニエス様の祈りは美しいですね。必ず叶いますよ」
「俺が全て叶えるからな」
「ふふ。ではこれからまた一月、お二人に祝福がありますように」
教皇猊下は馬車が見えなくなるまで優しく手を振ってくれたので、私も控えめに振り返しておいた。




