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第四章(01) 『戦竜機』工場

 決して大きくはない国だと聞いた。むしろ小さい方だと聞いた。


 しかし「人間の中の支配者」を目指したその国にも『戦竜機せんりゅうき』工場はある。


 雨が降り出しそうな、曇り空。荒れ果てた街は不気味なほど静かだった。百年ほど前は賑わっていただろう街。雨風と兵器による攻撃で、全てが寂れ風化した廃墟となっている。

 だが街の横に位置していた巨大な工場だけは、いまだその形を保っているように見えた。外壁には傷が、屋根には大きな穴が開いている。それでもしっかりと在り続けている様は、執念を感じられた。


 見据えたその工場は、恐ろしく静か。空に伸びた何本もの煙突からは、煙の一つも出てはいないものの、この曇り空が煙突からの煙によって作られたように思える。


「……険しい道のりになるぞ」


 並んで工場を見据えていた黒い竜が口にする。


 覚悟はできていた。銀の少女は頷く。

 あの工場の中には、この曇り空よりもずっと濃い悲しみと憎悪がうごめいている。


「彷徨っているのならば、助けないと。それが私の使命です」


 フェガリヤは迷うことなく歩き出す。メサニフティーヴも工場を睨みながら続く。


「ならばお前を手助けし、守るのが私の使命……しかし、どうか気をつけておくれ」

「はい、兄様……兄様に無茶をさせたくはありません」

「では、お互い無茶をしないように……」


 『戦竜機』工場。

 人間が捕まえた竜を、兵器として変貌させた場所。


 工場への道は広かった。もしかすると捕まえた竜の運搬のためかもしれない。ここを捕獲された竜が通る際、沿道には人々が並び、新たな資材に歓声を上げていたのかもしれない。


 しかし向かう先は、まぎれもなく竜にとっては墓場。

 ここで行われたパレードは、葬列に違いなかった。

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