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プロローグ
自分は、何者かになれると思っていた。
自分は特別な人間だ。人のために何かを為すことができる。と、そう思っていた。
歳を経るたびにそんなことはないと、そんな人間でも、そんな器でも、そんな才能を持った人間ではないと、見せつけられていった。テレビで最年少が塗り替えられるたびに。SNSで活躍している人を見るたびに。自分だって出来る筈だ。時間があれば。場所さえ違えば。環境さえ整っていれば。そう言い訳をしながら、心の片隅で例えそうではあっても自分には出来なかった、と小さく、手の小指の爪の先くらいには分かっていた。
でも認めたくなかった。
認めてしまったら。自分は何のために生きているのか。「人は、愛されるために生まれてきた」とか、「人が生まれたのには理由がある」とか。あんなに世間では言っているのに。自分に生きる意味が無いのであれば。無いのであれば、どうして自分は生まれたのか。
どうして自分は生きなければならないのか。