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戯曲 サクラ・ウメ大戦  作者: 大橋むつお
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1『やさぐれ白梅隊、はみだし八重桜隊』

連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・1『やさぐれ白梅隊、はみだし八重桜隊』


大橋むつお


※ 本作は自由に上演していただいて構いません、詳細は③の最後に記しておきます



時 ある日ある時

所 桜梅公園

人物 


(やさぐれ白梅隊)   (はみだし八重桜隊)


ゆき(園城寺ゆき)    さくら(長船さくら)  (ITVスタッフ)

咲江           百江           リポーター

ルミ           純子           カメラ

春奈           ねね           音声

千恵           やや


その他いっぱいいれば なお良し(^▽^)/ 



 荒野の決闘を思わせるような曲が流れるうちに幕があがる。そろいのセーラー服に、それぞれ寸をつめたり、スカートの丈をかえたり、リボンの結び方が違ったり、それぞれ制服でありながら個性を主張するいでたちの十数名の集団が、スケバンのゆきを中心に、ドスをきかせながら(本物のワルになりきれない可愛さを残すこと)客席奥を睨んでいる。睨んだその先には(客席後方)違う制服の集団が似たような人数、いでたちで、舞台上の集団を睨んでいる。こちらのスケバンはさくらという。双方手に、百均のビニールの刀、ビニールのバット、水鉄砲など、いかにもチープな得物(武器)を構えている。


 前者を白梅学園女子中等部やさぐれ白梅隊と言い、後者を八重桜女学院中等部はみだし八重桜隊と言い、戦前の女学校時代からの宿敵同志である。この年、とある理由から何十年ぶりに、両校の中ほどに位置する桜梅ケ原と昔は言った、桜梅公園の東西にわかれ、果し合いの寸前である。



ゆき: おう、八重桜女学院中等部の諸君! 本日は白梅学園中等部の我々が、高等部のお姉様連になりかわり、宿怨のうらみを果たしにこの桜梅ケ原、現桜梅公園に打ちそろった。すぐる大正三年の創立以来の雌雄をここに決する覚悟、かく言うあたしは白梅学園中等部三年一組、出席番号四番、やさぐれ白梅隊隊長園城寺ゆき! 尋常に勝負しろい! それとも、このゆき姉さんの啖呵に恐れ入ってしっぽを巻いて逃げ出してもいいんだぜ……


さくら: なにぬかしゃあがる。昔の夏休みみてえに長げえ御託並べやがって、こちとら気が短えんだ。おめえたちみてえに高えところに登らなきゃあ、威勢の出ねえ弱虫は一人もいねえ! 負ける前にこれだけは覚えておきな。あたいたちは八重桜女学院中等部、はみ出し八重桜隊! そしてこのあたいが総長の長船さくらだ! 逃げたい奴は、今のうちだ、こちとら気が短え、三つ読む間にそこを降りなきゃ、引き摺り下ろして、三つにたたんでやらあ!……ひとおっつ……ふたあっつ……みっつ……ほう……いい根性だ。女郎ども、百年のカタキだ! たたんじまえ! 


 この掛け声をきっかけに、大昔のチャンバラのBGМ、客席で黄色い声をあげながら、双方二十秒ばかり戦う。数組が舞台で戦っていたが、それも三十秒も立つ間に、ゆきとさくらだけになってしまう。二人つばぜり合いをしながら……


ゆき: ちょ、ちょっと、あたしたちだけになっちまってるよ。


さくら: え、ええ!?


ゆき: どうする?


さくら: だってカメラまわってんだろ、どっかで!?


ゆき: 声が大きい、マイクに入っちゃうよ。


さくら: だって……


ゆき: 一応、決めたとおりに……


さくら: 相打ちってことで……


ゆき: 山形三回(上段の構えで三回打ち合うこと)


さくら: ぐるっとまわって、場所入れ替わって天地(上段と下段の打ち合い)三回、さっと離れて、あたしが胴を。


ゆき: 胴抜きはあたし、さくらは面打ち!


さくら: 声が大きい!


ゆき: あんたに言われたかないわよ。


さくら: じゃ、いくよ!


 チャンバラのBGM、急速にフェードアップ、クライマックスを暗示する。テキスト通り山形と天地を打ち合った後、気合とともに相打ちとなり、二人とも、あらかじめ仕込んでおいた血の紙ふぶきを派手に撒きあげて、見栄をきる。大向こう(客席後方)から「よっ、ゆきっちゃん!」「ゆっきー、かっくいい!」「ゆっきちゃーん!」「さくらや!」「千両桜!」などと掛け声がかかる。上手寄りの客席からカメラとリポーターが上がってくる。



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