第五章 90話 整理とこれから
1554年6月21日
直江津から帰ってきた翌日。
俺は梅の間で領内各地から上がってくる報告書を見ていた。
与一「殿、よろしいでしょうか?備後様、備前様がお見えです。」
信輝「そうか。ここに来てもらって。」
与一「ハッ。」
久々に見た備後はもうかなり血色もよくなっていた。よかった。
備後「お忙しい中申し訳ございません。若、先日は命を救って頂き本当にありがとうございました。医者が申すには、若の応急処置がなかったら確実に命がなかったそうです。不甲斐ない姿を見せてしまい本当に申し訳ございませんでした。また、お礼を申し上げるのに時間が経ってしまって申し訳ございません。」
信輝「私と備後の仲だ。そんな畏まらなくていいぞ。無事でよかった。それにあれから色々あったしな。」
備後「若……。大きくなられましたな。備後は嬉しゅうございます。」
信輝「それよりもう完治したのか?」
備後「いえ、さすがに元のようには戻らないようです。殿には改めて申し上げるのですが、これを機に隠居を考えております。」
信輝「そうか。それは寂しくなるな。隠居してもまだ元気なうちは俺と備前のことを助けてくれよ。」
備後「ハッ。畏まりました。若のためなら何でも致します!」
信輝「頼んだぞ。」
こうして室賀親子は帰って行った。
そういえば、父上も隠居するって言ってたな。
どのようにするんだろう?
まあ、何も言われないうちはいいか。
そうだ。
一応、落ち着いたから、又右衛門の墓にでも行こう。
信輝「又兵衛。」
又兵衛「ハッ。」
信輝「戸隠の里って俺ら行ってもいいのかな?又兵衛の墓参りに。」
又兵衛「はい。ありがとうございます。ですが、父の墓は、広心様がおられる寺に建てて頂いたので、そこにあります。」
信輝「そうなのか。じゃあ、浅川園を出てすぐか。今から行くか。」
又兵衛「はい。ありがとうございます。父も喜びます。」
信輝「父上はもう行ったかな?」
又兵衛「はい、先に帰って来られた方々は皆行って下さいました。」
信輝「じゃあ、備前、肥後、陸奥と行こうかね。呼んできてもらっていい?」
又兵衛「畏まりました。」
やってきた備前、肥後、陸奥と馬に乗って北に向かっている。
肥後「又右衛門は本当に残念だったよな。」
陸奥「うん、なんか大変だったよね。弟に従って来たって。」
信輝「結城秀康とかそんな感じだったのかな?」
肥後「色々と葛藤もあったでしょうよ。」
備前「私たちの大叔父ですもんね。」
陸奥「そうか。複雑な心境だったのかな?」
又兵衛「私も今回のお話は知りませんでしたが、きっと父はそんなことはなかったと思いますよ。幸せそうにしてましたし。広心様や大殿や、大峰家に仕えられたことを誇りに思っていると言っていました。」
信輝「そうか。それならよかったけどな。」
俺たちは又右衛門の墓参りを済ませ、そのまま俺の屋敷に帰ってきた。
梅の間。
信輝「さて、色々整理しよう。」
肥後「おう、まずは商品関連かな?」
陸奥「そうだね。」
信輝「じゃあ備前。」
備前「はい。では、今、大峰が八善屋を通して商品として売っている者ですが、椎茸、朝鮮人参、葛根湯、清酒、ワイン、焼酎、砂糖、ジャガイモ、サツマイモ、生糸、綿、石鹸、チーズ、バター、小麦粉です。清酒、ワイン、焼酎は、樽のものと、ガラス瓶のものとがあります。」
肥後「結構増えたな。パンは売ってないんだっけ?」
備前「パンは領内でだけですね。」
陸奥「石鹸って売ってたんだっけ?」
備前「あまり多くではないですが売っています。」
信輝「他なんかなかったっけ?」
備前「おそらくそれくらいかと」
信輝「そうか。あと、今度は塩も加わるかもね。じゃあ次、俺らが使ってるものでは?」
備前「はい。我らが使用するために作られているものには、ゴム製品、軍靴、外套、ゴム軍手、スコップ、つるはし、荷運び用の一輪車などがあります。軍備では南部馬や、大峰銃、中村式等も該当しますか。あと、先日の電気というものですか?明るくなる。あれはこの殿の屋敷だけですが、設置しています。あとは今作っていますよね?」
陸奥「うん、野尻湖工業地帯で、今改良しながら電気と電池は作ってるよ。あと、野尻湖工業地帯でガラスを作っているのと、望遠鏡は量産はしていないけど作ってるよ。それから、コンクリートはダメだったけど、建設に使うセメントも作ってるよ。」
肥後「甲冑とか、刀とか、木の器とか漆器とか鋳物とか瓦とかも作ってるだろうけど、これは珍しくないか。」
備前「そうですね。それはどこでも作れるので、大峰城下でも作ってますね。」
信輝「あと何かあったかな?それか、これから作った方がいいもの。」
肥後「コンクリートではないけど、道を広くして平坦にして整備したから、馬車作ったら?領内では主要幹線だけじゃなくて、引き続きたくさん道作ってるし。」
陸奥「確かにね。でも誰が使う?」
信輝「まあこれから使う機会あるでしょ。陸奥お願い。」
肥後「あとは、その道に一里塚みたいなのを作ろうと思うんだけどどう?」
信輝「いいよ。それは肥後に任せる。お願い。」
陸奥「宿場とか茶店とかは?」
信輝「まだそこまでは無理じゃない?皆が移動するとかは多くないでしょ。」
陸奥「そうか。」
肥後「この前の馬の改良はまだ時間かかるよな?大砲は?」
信輝「ああ、大砲ね。城攻めとかのときにあったらいいか。」
陸奥「いいね。船にも乗せようよ。」
信輝「じゃあ、陸奥また頼むよ。」
陸奥「わかった。何通りか大きさ作った方がいいよね?」
信輝「任せる。野戦でも使えるものもお願い。」
陸奥「わかった。」
備前「長尾景虎との戦用ですか?」
信輝「うん、だけじゃないけど、まあ軍備は強くしていった方がいいしね。」
肥後「今のところ周りは?」
信輝「今のところは。この前あった斉藤勢も今のところないね。長尾景虎は北に目を向けてるみたいだね。」
陸奥「長尾景虎さ、義輝様の名前で従属迫ったらいけるんじゃない?」
信輝「どうだろ?まあ今はこちらには来てないし、刺激しない方がいいよね。沼田は取ったわけだし。」
肥後「沼田は?その後どうなん?」
信輝「真田弾正が城改築して、安倍主水が土木工事始めてるよ。」
陸奥「上州は結構固まって来たかな?」
信輝「まだ時間はかかるけど、もう軌道には乗ってるね。」
肥後「次はどっちに進んでく?」
信輝「周り次第だけど、とりあえず越後かな?」
陸奥「そのときに水軍と船会ったらいいな。」
備前「南がしっかりしていてよかったですね。」
肥後「木曽は?信用できるの?」
信輝「この前あんま態度よくなかったけど、義昌いるから大丈夫でしょ。松本城が見張ってるし。」
陸奥「じゃあやっぱり内側をしっかりだね。」
肥後「義輝様は?帰ってきて会った?」
信輝「まだ。明日辺り行くか。あれ?どこにいるんだろ?屋敷まだできてないよね。又兵衛わかる?」
又兵衛「はい。大殿の屋敷にいらっしゃいます。広心様もです。」
信輝「そうか。じゃあ明日は義輝様のところに行こう。」
肥後「わかった。」
陸奥「了解。」
備前「わかりました。」




