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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第五章
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第五章 89話 直江津と海

1554年5月12日


昨日は祖父の話に驚いた。

まさか、そんな話だとは。

だが、皆は話を聞いて驚いてはいたのだが、意外とその後はさらっとしていた。

そこまで大きな話ではないのか?

それにまた俺は驚いた。



そして、だからと言って、これからすぐに義輝様を擁して兵を率いて上洛して、将軍は義輝様だ、大峰も足利家の一門だってやろうという考えは祖父にも父上にも、義輝様にも全くないらしい。

俺もそれは考えてないけど。

大峰氏は藤原上杉氏であると同時に河内源氏、源義康の流れを受け継いでいることとなった。



そうして、義輝様はずっと望んでいた大峰での生活を送ることになった。本丸の空いている場所に屋敷を構え、そこに住むことになったのだ。本人は大峰の家臣になりたいと言っているが、さすがにすぐにそれは、と祖父と父上が慌てていた。義輝様はもう将軍ではないと思っているらしい。

浅川園に行って、菜園や薬草園を見たり、酒蔵や産業を見たり、牧場で南部馬や他の家畜を見たりしたいそうだ。そして、義輝様は新陰流も学びたいらしい。

とにかく、京の政争や戦場から離れ、信濃で好きなことをして暮らしたいということだった。


京では義輝様は討ち取られたことになっているため、三春丸殿がそのうち将軍宣下を受けるだろう。それはそれでいいらしい。


我が大峰家は足元をしっかり固め、領土を広げていこう。ということになった。




そこで落ち着いて考えたのは、この越後の新領地と海の活用だ。

ばたばたしていて考える時間がなかったが、今まで海がなかった大峰が海を手に入れたのだ。

そして、運がいいことに水軍衆も家臣となってくれた。

これは非常に大きい。




まず、今回家臣となってくれた奈佐日本助20歳に水軍編成を頼むことにした。春日山城の北東にある谷浜の地を与え、そこに水軍の拠点を作ること、他の水軍の将を引き抜いてくることをお願いした。

水軍の軍備などはこれから一緒に考えるが、まずは人だ。

船を操り、海で戦える者たちが欲しい。

俺は海には出れないし、だから海での戦なんて考えるだけで吐きそうになる。


日本助は一旦、因幡に戻り、再度、一族を全て連れてやってくることになった。



そして、ずっと海が手に入り水軍を編成することになったら建造しようと思っていた、竜骨を持った船の建造を始めることにした。信長が造った鉄甲船もそうだったというが、昨日見た安宅船は和船と言われるもので竜骨はない。それによるメリットもあるが、スピードが出ない。竜骨を持った頑丈な船を作り、ゆくゆくは以前考えた蒸気船を造りたい。



そこで直江津の整備もすることにした。

湊の機能は全て関川の東側に移し、波止場を造り、埠頭のようなものを造ることにした。街並みも造り直し、以前の数倍にして商家や蔵なども増やし、交易のための大きな町となるようにした。大峰家の屋敷も造るようにした。


そして関川の西側に、造船工場を造り、そこで竜骨船の造船をすることにした。


春日山城も築城することにした。山上の建物は必要のないものは破却し、必要なものはそのままにし、山の麓にも屋敷を建て、大峰城ほどではないが城としての形を造り、城下町の整備も行った。


それから、関川の東に造る新しい直江津の、更に距離を少し置いた東側の地を整備して、塩田を作ることにした。

今までは海がなかったので塩は買い続けていたのだが、これで買わなくて済む。大量に作れるようになったら、また八善屋に売ってもらおう。



これらには、また陸奥の『技術開発』が大活躍することとなった。

造船工場、竜骨船、塩田、などなど。



長尾景虎は明智光秀が去った後、動きはない。

義輝様も無事だった。

当面の心配事がなくなった俺たちはこの作業にしばらく没頭した。






1554年6月20日


町づくり、築城、造船工場、塩田の計画を立て、上州から安倍隠岐殿に来てもらい、岡部、甲良の大工集団にも来てもらい、話し合って、話し合って、やっと工事が始まった。結構ここまで時間が掛かった。


安倍家は上州の農業工事が、岡部、甲良は大峰城下の学校建設の仕事が落ち着いたので、こちらに力を入れてもらうことにした。そのため人もこちらにかなり来てもらった。学校はもうほぼ出来ているが、上州の方はこれにより少し完成が遅れてしまうかもしれない。上州にいる主水殿に頑張ってもらうしかない。


この段階になると、隠岐殿、又右衛門、光広がここにいれば、俺はいなくてもよくなったため、大峰に帰ることにした。


父上や、祖父、伊勢叔父は、あの後数日はここにいて俺が考える計画を聞いていたが、後は任せると言って備後、兵庫、主計たちと帰って行った。義輝様と、三淵藤英殿、和田惟政殿、一色藤長殿も一緒に大峰に行った。


連れて来た五千の兵たちはここに残り、工事を手伝うことになっている。大峰兵は戦場の陣などを作るための調練もしているので、こういった工事にもかなり役に立つ。

玄蕃叔父は春日山城の城主であるため、大工集団に混ざって大きな声を出している。大工の棟梁のようだ。


六神隊はここに留まり、周辺の警備と、調練もかねて探索を行っていた。

俺と、肥後、陸奥はここから動けなかったので、青竜の指揮は備前に任せ、他の五隊と探索に行ってもらった。

東西に探索をした結果、鉱山がいくつか見つかっている。


これらにも、与平、与右衛門親子に入ってもらって開発を進めよう。



そうして、俺たち六神隊は大峰に向かって出発した。


急いでいないのでのんびり南下していく。

梅雨時だか、今日は天気がいい。

山の緑が濃い。



肥後「湊も造船工場も塩田もとりあえず上手くいきそうだな。」


陸奥「なんか最近慌ただしかったよね。」


信輝「そうだね。なんか、去年の暮れに色々と計画していたことがあったような気がするけど、この半年本当に忙しくて何があったか忘れたな。」


肥後「帰ったら一度ゆっくり落ち着いて計画し直そうぜ。」


陸奥「確かに。六神隊作ったとこまではよかったけど、急に毛利の話を聞いて明智の旗がとかいう話になって、春日山城に行こうとしたら大殿と備後が撃たれて、犯人は甲賀で、大岩又右衛門が切腹して、今度は斉藤と長尾景虎が攻めてきて、その対応しようと出陣したらすぐ撤退して、足利家が攻められて、六角、細川、三好、松永、本願寺、朝倉、浅井、斉藤、毛利が連合組んでて、義輝様探してたら、船で直江津で、正統の血筋の話だもんな。」


信輝「ああ、この半年のまとめありがとう。色々あったな。」


肥後「それで京はどうなったん?」


信輝「将軍宣下が出て、三春丸殿が、14代将軍義道様になったらしいよ。」


陸奥「それで?」


信輝「いや、それだけ。京は一度焼かれたから、屋敷建て直したりとかしてるらしい。」


肥後「朝廷は?」


信輝「近衛前久様がまだ関白らしいけど、二条か九条がまた関白になるかもね。」


陸奥「そうなるとどうなるの?」


肥後「そりゃ、近衛、足利側は力が弱くなるんだろ?あ、その義道様も足利か。細川晴元が力持つのか?」


陸奥「だから?」


肥後「さあ?」


信輝「まあそれだけだよね。俺ら別に今は京関係なくなったし。義輝様ももうどうでもいいらしいし。」


肥後「それ意外だったよな。」


陸奥「確かに。もっと将軍職に拘ってるのかと思ってた。足利義昭のイメージか。」


信輝「そうだよな。」


肥後「俺らも足利家の血引いてんだろ?」


陸奥「そうだよ。将軍なれるよ。」


そう言って三人で笑った。


結局あの話は理解したが、俺らは俺らってことだ。

義輝様が親戚だったことと、又兵衛も親戚だったことは驚いたくらいで。


あとは特に何も変わらない。もともと周り親戚ばっかりだったしな。


気持ちも落ち着いた。


帰ったら、また色々やらないとな。



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