第四章 61話 屋敷の改築と合宿所
1553年10月9日
翌日、朝一番に真田弾正、左衛門尉、佳だけじゃなく、徳次郎、矢澤、常田、鎌原と真田一族総出でやってきた。
百畳の大広間に通す。
大広間には、俺、詩、見、春、藤孝、小姓衆がいる。
真田弾正「若、我が娘、佳をお召頂けると聞き、我ら真田一族参りました。これで我らは縁戚とならせて頂きます。ありがたき幸せにございます。どうか、不束な娘ですが、佳を宜しくお願い致します。」
信輝「お、おう。こちらこそ頼むな。」
佳「信輝様、お帰りなさいませ。佳はやっとこの時を迎えられて幸せでございます。この時を長くお待ちしておりました。どうぞ末永く宜しくお願い致します。」
今日はそういう意味で呼んだわけではなかったのだが、もう今日は帰れとは言えないな。
信輝「佳、久しぶりだな。これから末永く宜しくな。」
佳はすごくいい笑顔でほほ笑んだ。かわいい。
真田弾正「何でも屋敷を改築なさるとか。我ら一族もお手伝いさせて頂きます。」
信輝「わかった。ありがとう。」
そう言って大きく描き直した図面を広げた。
その時、次の訪問者が来た。
上泉壱岐師匠、伊豆、愛だ。
上泉壱岐「若よ、やっと愛を娶ってくれるそうじゃな。これからも頼みますぞ。」
愛「信輝様、お久しゅうございます。信輝様にお会いできて嬉しゅうございます。愛は信輝様のために生涯お尽くしいたします。宜しくお願い致します。」
こっちもか。ちゃんと屋敷の話だって言ったのか。いや、兵部だ。ちゃんと言ったに決まってる。
それを聞いてこの二人はここだと思って来たんだな。
まあ、さすがだな。
信輝「愛、久しぶりだな。これから宜しく頼むな。」
愛は少し照れて俯いた。綺麗だ。
上泉壱岐「若よ、修行はいかがじゃ?鈍っておらんか?本日は屋敷の話と聞いた故、やめておくが、近くまた始めるぞよ。」
信輝「はい。宜しくお願い致します。」
そういえば、バタバタしてて忘れてたけど、柳生は父上とともに行ったのか?
柳生にも師匠を会わせてやろう。
皆で図面を見て話し出した。
源五郎「殿、大殿が見えられました!」
父上が?直と一緒に来られたのか。
上座を空け、一同頭を下げた。
信秀「おお、ずいぶんたくさん来ているな。本日は私事じゃ。面を上げよ。」
一同「ハッ。」
信秀「武衛よ、直を連れてきたぞ。本日からここに住むということでよいな?本日は屋敷を改築すると聞いた故、隠岐と又右衛門、光広も連れて来た。直、挨拶せい。」
直「信輝様、ごめんなさい。このようなことになってしまいました。直と名前も改めました。この三年間、お義父上様、お義母上に色々と教わって、いい嫁となれるように頑張ってきました。これからどうぞ宜しくお願い致します。」
なんて健気なんだ。これがあの次郎法師とは信じられない。そういえば元から綺麗だったもんな。
信輝「直、これから宜しく頼むな。」
めっちゃ嬉しそうに笑った。可愛いやん。三年前とのギャップが。ヤバい。
信秀「さて、武衛、どのように改築するのじゃ?又右衛門と光広の大工集団なら時間もかからずできると思うぞ。」
この後、俺の考えを話し、皆でああでもない、こうでもないと言いながら話し合った。ちゃんと、詩、見、春、佳、愛、直も自分の意見を言っていた。そりゃ、住むのは俺たちだ。満足いくものにしなきゃな。
その結果、東館は造りはそのまま。俺が当初から考えていたように食堂の一つは囲炉裏を作った板の間、一つは又右衛門に頼んで大きな食卓と椅子を作ってもらうことにした。
そして、中館は、小姓、家臣の東側はあまり手を加えなかった。俺の住む西側は、六畳、八畳、八畳の六列ずつが南北に二つあったものを、南側は、西から、一列分の寝室、二列分の小さい部屋、三列分の大きい部屋の三つにしてもらうことにした。南側に面しているので縁側も作ってもらうことにした。北側は、西から、俺用の少し広めの浴室を二列分で作ってもらい、俺用の台所を一列分で、三列分で広めの畳敷きの食事処兼宴会場を作ってもらうことにした。
最期に西館は、六畳、八畳、八畳の十五列が南北に二つあったものを、南側はそのまま残し、縁側は作ってもらうことにした。北側は、西から、四列分で女性用の大浴場を、二列分で台所を、二列分で侍女も使える食事処を、四列分で侍女たちの部屋を、三列分は女性用の納戸を作ってもらうことにした。
部屋は、東側から、詩、見、春、佳、愛、直の順に入ることになった。詩が一番俺の部屋に近い。
これだけ中を改築するのに五日ほどでできるそうだ、中の改築は又右衛門、光広、浴場は隠岐の、それぞれの土木集団がやってくれるらしい。
かなりの人数が一度に働くことになった。
そこまで決まり、宴会となった。いつのまにか話を聞きつけた、俺の近臣衆が皆集まっており、何か色々な祝いを理由にかなり遅くまで盛り上がった。
改築工事中の五日間は、俺たちは東館で合宿所のように過ごすことになったが、これがよかった。
皆が帰った翌朝、六人に、正室として詩を立てること、俺は皆を平等に扱うこと、皆で助け合って仲良くすることをまず理解、約束してもらった。そして、屋敷は奥と別れているような形になっているが、食堂で皆で食事したりしたいし、北にある武道場も皆使いたいだろうから自由に行き来していいことにした。
これを話した上で、完成までの五日間は、大広間で寝起きし、工事区域でない武道場で汗を流し、女性陣は一緒に大浴場に入り、としていたので自然と打ち解けたようだ。
よかったよかった。
そして五日後、又右衛門、光広、隠岐殿のお陰で無事に俺の屋敷は完成した。
六人も俺も、小姓衆も兵部もそれぞれの部屋に入り、そこを拠点とはしたが、最初の五日間の名残か、俺の南の大部屋に集まって話すことが多くなった。
来たいときは来て話しているし、自分の部屋にいることもある。連れだって武道場に行ったり、男女それぞれの大浴場に行くこともあった。
皆まだ若いので、合宿所のような感じが続いた。
楽しい。
今までの政治や戦が嘘のようだ。
よかったよかった。




