第四章 60話 広大な屋敷と使い方
1553年10月8日 続き
でかい。立派。今までの屋敷が比べ物にならん。
確かにここならたくさんの人が生活できるだろう。
父上の力の入れようが分かる。
馬に乗った俺と、小姓衆と、見、春の輿とそれぞれのお供だけになっている。
ちなみに武士は付けられなかったので、本当に女性の侍女たちだけ。
信輝「よし、源五郎、帰ってきたことを伝えて来てくれ。」
源五郎「ハッ。」
自分の屋敷なのに緊張する。
めっちゃ時間かかってんな。
ちょっと門から中を覗いてみた。
広っ。建物遠っ。
そういえばと思って右を見てみる。端が見える。
左を見てみる。端が見えない。いや、よーく見たら、はるか彼方に見える。気がする。
広い。
山の上でよくこれだけ俺の屋敷に場所とったわ。削ってならしたのかな?
源五郎「殿、伝えて参りました。」
信輝「お疲れ。ありがとう。誰がいた?」
源五郎「この屋敷のために大殿が用意された、殿の身の回りをお世話する者たちや、特別に料理の腕が確かな台所を預かる者たち、掃除や洗濯などをする者たちが来ているようです。それから、屋敷の護衛の者たちです。そして、詩様は侍女と藤孝様と共に既に入っておられました。今は藤孝様が屋敷を取り仕切ってくださっているようでしたので藤孝様に伝えてきました。」
まずはほっとした。
既に、佳、愛、直も来ていたらどうしようかと心配してしまった。
しかし、細川藤孝が側用人みたいになってるってめっちゃ贅沢な使い方じゃない?もったいなくない?大丈夫?
そういえば藤孝ってまだ未婚だな。父上に相談してみよう。
まあ、とりあえず入ろう。
信輝「ありがとう。じゃあ入ろう。」
俺たちは門内に入った。自分の屋敷に入るのになんだこの手間は。
門は敷地の南側、東寄りにある。門を潜るとずっと向こうに建物がある。右には厩、左には素晴らしい日本庭園が広がっている。その中に離れがいくつか見える。
左の南側の塀に沿って、おそらく世話してくれる者たちの住まいであろう建物が並んでいる
日本庭園を見ながら玄関まで歩いた。
玄関も広くて立派だ。
玄関に入ると兵部が出迎えてくれた。
藤孝「お帰りなさいませ。まずは、改めてご挨拶をさせて頂きます。詩様付きの家臣として、足利家から遣わされました、細川兵部大輔藤孝でございます。というのは建前で、この藤孝、武衛様の家臣として、命お預け致す。宜しくお願い致します。」
信輝「おう、ありがとう。兵部、これから宜しくな。兵部は、部屋を用意するからこの屋敷に住んでくれるか?」
藤孝「よろしいのですか?畏まりました。」
信輝「兵部には色々教えてもらうこともあると思うから、それも宜しくな。」
藤孝「ハッ。」
信輝「じゃあ、皆の部屋を決めよう。とりあえず一番広い部屋ってどこだかわかる?」
藤孝「はい、すぐそこに大広間があります。」
信輝「じゃあそこに通してもらおう。詩も今回の件聞いてるかな?」
藤孝「はい。」
信輝「じゃあ詩も呼んできて。詩の部屋ってもう決まった?あとこの屋敷の見取図あるかな?それも持ってきて。」
藤孝「畏まりました。まだ我々も着いたばかりですし、殿がお決めになるでしょうから、とりあえず休ませてもらっているだけでした。」
信輝「わかった。じゃあ宜しく。先に見取図お願い。」
藤孝「ハッ。」
皆が集まるまで、大広間で見取図を見ている。設計図に手が加えられているので、先日まで見ていたものとは全然違った。俺が注文した食堂と、温泉を引いた大浴場は作ってくれているみたいだが。
この敷地は南北にも長いが、東西の方が長い長方形。中庭が二つあり、三つの部分に分かれている。
今いるのが東館。敷地の南東にある門から入り、北に向かって歩いてきて玄関があり、そこから入った。
門から入って東側は厩が玄関まで続く。西側はまず塀沿い一番南側に長屋があり、離れがある日本庭園となっている。めちゃめちゃ広い。
玄関から入り、この東館はそれぞれ百畳くらいの四つに分かれている。南西の今いる大広間、南東には食堂が二つと屋敷の一番端に台所。そのさらに東側の外には食材などの倉庫があるようだ。北東の屋敷の端には俺がお願いしていた大浴場がある。百畳の大浴場。温泉だからいつでも入れる。その隣、東館の北西は納戸になっている。色々な武具なんかが置いてある。
次に西に向かって渡り廊下を渡ると、中館。ここは東西二つに分かれている。東側はおそらく小姓や家臣用ということだろう。部屋がたくさんに分かれている。廊下が縦横に通っていて、八畳の部屋が六×五部屋の三十部屋ある。
そして南北に通っているちょっと幅が広い廊下を挟んで、西側はまた違う造りになっている。真ん中に東西に廊下が通っていて、その南北にそれぞれ部屋がある。南北共に六畳、八畳、八畳と畳の部屋が続いている。それが六列。つまり十二部屋。ここがおれの居住区なんだろう。こんなに要らない。何か使いやすいように改築してもらおう。
そこから廊下を渡ると、一番広く造られている西館。ここがおそらく奥と呼ばれる建物だろう。
俺の居住区と同じように真ん中に東西に廊下が通っていて、その南北に部屋がある。ここも六畳、八畳、八畳と畳の部屋が続いてある。そしてそれが十五列で、南北にあるから×二。三十部屋。
三十人。
いや、どんだけ。
ここも改築してもらおうかな。
この建物の北側には、東から倉庫、武道場、弓道場がある。
これはありがたい。
そこまで考えていると、姫たちが入ってきた。
詩「信輝様、お帰りなさいませ。ご無事で何よりです。」
信輝「おう、そなたも無事で何よりだ。詩、聞いたと思うが、こちら、武田晴信殿の娘、見と、北条氏康殿の娘、春だ。俺の側室となった。仲良くしてやってくれ。」
詩「はい。足利義晴の娘、詩と申します。宜しくお願い致します。」
春「北条氏康が娘、春と申します。宜しくお願い致します。」
見「武田晴信が娘、見と申します。宜しくお願い致します。」
信輝「皆仲良く頼むよ。詩が正室だから、一応、詩を立ててくれ。ただ、俺は皆のことは平等に扱いたい。皆で仲良くできたらいいと思っている。皆宜しく頼む。」
頭を下げた俺に三人と、三人の侍女たち、兵部、小姓たちも驚いたようだ。
詩「信輝様、お顔をお上げください。私たちは仲良く致しますから。」
春「はい、詩様が仰る通り、仲良くしていきます。」
見「仲良く致します。お顔をお上げくださいませ。」
信輝「そうか。ありがとう。頼むよ。じゃあ、早速だけど、一緒にこれを見てくれる?この屋敷の見取図なんだけど、もうちょっと使いやすく改築しようと思うんだ。」
春「信輝様のお考えに従いまする。」
信輝「ありがとう。けど、一緒に考えてくれると嬉しい。」
見「では詩様からお願いします。」
詩「はい、それはいいのですが、信輝様にはまだ側室となられる方々がおられるとか。そのお方たちも一緒にお考え頂いた方がよいのでは?」
信輝「確かにそうだな。じゃあ明日にでも来てもらってそれから考えようか。詩、ありがとう。」
詩「いえ、お役に立ててよかったです。」
信輝「兵部、申し訳ないんだけど、真田弾正家と上泉の師匠の家に、明日、佳と愛に来てもらうように使者を出して。」
藤孝「畏まりました。」
信輝「次郎法師って今どこに住んでるんだ?」
詩「直様ですか?」
信輝「そう、直だ。」
詩「お義父上様のお屋敷にいらっしゃるそうです。」
信輝「そうなんだ。よく知ってるね。源五郎、父上に明日、直を寄越すように言ってきて。」
源五郎「ハッ。」
信輝「じゃあちょっとだけ話しておこうか。俺の考え聞いてくれる?」
その後、三人と兵部といろんな意見を出し合って話してみたが、結局、佳、愛、直の意見も聞いてからということになって、その日は皆、順番に大浴場を使い、それぞれ別の部屋に布団を用意してもらって寝た。




