第三章 46話 裏切りと最期
1550年9月2日続き
又兵衛が戻ってきた。珍しく慌てている。
松若丸「どうした!」
又兵衛「晴元殿が三好勢に内通したようです!どこから湧いたかわかりませんが松永隊と義輝様の隊を襲っています!六角隊は距離をおいて動きません!」
松若丸「何だと!行くぞ!」
一同「おう!」
俺たちは本陣に向かって走り出した。
それを見た安宅隊、実休隊、岩成隊が動いた。
俺たちと本陣の間に入ろうとしてくる。
俺たちは距離を取ろうと一度淀川沿いに北東に進んだ。
それでもついてくる。
これ以上進むと本陣から遠ざかってしまうため、仕方なく三好勢に突っ込んだ。
松若丸「くそっ!まとまって抜けよう!采女!何人か連れて先に行って!義輝様をお守りして!」
采女「ハッ!」
くそっ!
晴元め。
松永隊はどこから来たんだ。俺らが来る前に既に北に抜けていたとしか考えられない。
もうだいぶ前から晴元と打ち合わせていたに違いない。いつからだ。
六角隊もか。六角隊に感じた違和感はそれか。
蒲生隊はそんな風には見えなかった。
でも六角隊は退くのがやけに早かった。
くそっ!
考えがまとまらない。
安宅隊、実休隊、岩成隊の壁が厚い。
人が後から後から湧いてくるように感じる。
焦りもありなかなか抜け出せない。
さっきは本気じゃなかったのか。
全ては義輝様を襲うためか。
謀られた。
このままじゃ義輝様が危ない。
俺らもどうなるかわからない。
その時、信じられないことが起きた。
「蒲生定秀殿討ち取ったりーー!!」
マジかよ。
さっき酒を酌み交わそうって言ったばっかりなのに。
賢秀殿は大丈夫か?
松若丸「又兵衛、こんな中悪いけど、賢秀殿に何人か援軍を送ってあげて!」
全く史実と違うことになっている。
六角定頼の娘が晴元の継室なのは知っている。
でも、晴元と六角定頼、義賢は義輝様と一緒に何度も三好方と戦っているはずだ。
三好と結ぶなんて。
俺か、俺がいたからそうなったのか。
くそっ!
どけっ!
邪魔だっ!
秀胤、満親を先頭に俺らはまとまって戦っている。
なかなか人が減らない。
三好実休殿、安宅冬康殿にとっては、俺は弟の仇だからな。
力も入るか。
もう少し!
もう少しだ!
抜けた!!
やっと安宅隊、実休隊、岩成隊の壁を抜けた。
そんなに距離はない。
本陣に向かって走る。
本陣近くは乱戦になっている。
俺らを追って安宅隊、実休隊、岩成隊も向かっている。
向こうからは松永隊、三好長慶隊も来ているようだ。
義輝様!いたっ!見えた!まだ無事だ!
松若丸「皆!三つに分かれる!一つ目は騎馬の秀胤、満親、源太郎、源四郎、信房、源左衛門が左から回って乱戦に入って!三淵殿の隊も一緒に連れて来て!二つ目は槍の正左衛門、作左衛門、三左衛門、市兵衛、彦右衛門と蜂須賀党が右から!賢秀殿と蒲生隊を任せた!残りは俺とこのまま突っ込む!義輝様のもとに行くぞ!」
一同「ハッ!」
三つに分かれた俺たちはそれぞれの方向から同時に敵に突っ込んだ。
同時に三方向から入ることによって、敵の注意が上手いことばらけた。
その隙に勢いに乗って義輝様のところまで辿り着いた。
秀胤の先導で三淵隊も、正左衛門の先導で定秀殿が討ち取られてしまった賢秀殿が率いている蒲生隊も、一緒になって義輝様の本隊と合流した。三淵隊は兵が逃げたためかなり数が減っている。
松若丸「義輝様!」
義輝「松若丸か!無事だったか!」
松若丸「はい!義輝様もご無事で何よりです!」
義輝「晴元めにやられたわ!まさか裏切られるとはな!」
松若丸「私も油断しました!申し訳ございません!何とかここを抜けて京に戻りましょう!」
義輝「よし!戻ろう!」
と言っても、三好勢に周りを囲まれ、目の前の敵を倒すことで精一杯だ。
ここにいる兵はもう百もいない。
それに三好勢は三好長慶勢までが進んできて、辺りは三好勢で埋め尽くされようとしている。
十重二十重に囲まれていく。
四面楚歌。
松若丸(これはちょっとしんどいかな。)
竹千代(これはマジでしんどいな。倒しても倒しても敵が来る。)
辰千代(ちょっと諦めるしかないかな?少し疲れてきた。)
松若丸(なんとかならないかな。何か手は。)
竹千代(討ち死にしたらゲームオーバーだっけ?)
辰千代(確かそう。七年頑張ったけどな。)
松若丸(頑張ったのに。)
くそっ!
その時、北の方から土煙が見えた。
まだ増えるのかよ。さすがに無理だ。
あの旗は!




