第三章 25話 新たな家臣と動き出した連合軍
1550年1月25日
旧高梨領を完全に平定して戻ったあと、政頼殿が回復してきたため話したいとのことで、政頼殿が寝ている部屋に来た。
父上、伊勢叔父、備後、頼親殿、高梨内記、俺が来ている。
政頼「民部様、松若丸様、大峰家の皆様方、この度はご迷惑をお掛けして申し訳ございません。助けて頂きありがとうございました。この御恩は終生忘れませぬ。」
頼親「ありがとうございました。」
信秀「政頼殿、元気になられてよかったですな。」
松若丸「お役に立てて何よりです。」
政頼「このような仕儀になりましたからには、旧高梨領の全ては大峰家のものとして頂きたい。高梨家にはもう支配する力はありませぬ。そしてわしはもう隠居しますが、我が子頼親を家臣として頂けませんでしょうか。お願い致します。」
信秀「それは。当初の話と変わってしまいますが。」
政頼「いえ、いいのです。高梨家の家名さえ残して頂ければ。お願いします。」
信秀「そうですか。」
父上が俺の方を見た。
その時、
頼親「父上、お待ち下さい。私にはもう高梨家を継ぐことはできません。私の武勇が足りないばかりにこのようなことになってしまい、父上も傷付けることになってしまったのです。私は出家します。高梨家はどなたかを立て、家名を継いで頂きたい。」
政頼「何を言う。今回はそなたの責任ではない。わしの力量が足りなかったからだ。」
頼親「いえ、私には武士としての器量が足りないのです。高梨家は大峰家のご一族のどなたかに姉と婚姻して継いで頂くことはできませんでしょうか。」
政頼「頼親。そこまで…そうか、わかった。民部様、また勝手を申しますが、よければこの我が儘かなえては頂けませんでしょうか。」
信秀「よろしいのですか。そこまで仰るのであれば、わしの弟、喜六郎に継がせますが。」
政頼「ありがとうございます。宜しくお願い致します。」
頼親「ありがとうございます。申し訳ございません。宜しくお願い致します。」
松若丸「よろしいでしょうか。頼親殿は政治政策に優れていると伺いましたが。」
頼親「はい、戦や武術は自信ありませんが、政治や経理、事務などに関してはある程度自信があります。」
松若丸「それでしたら、その分野で我らの力になって頂けませんでしょうか。」
頼親「なんと。それでしたらお役立てるかもしれません。」
政頼「おお、そのような待遇をして頂けるのですか。ありがとうございます。」
松若丸「是非お願い致します。」
頼親「ありがとうございます。松若丸様のお役に立てるようにお仕え致します。しかし、高梨家は先程のお話のように喜六郎様に継いで頂きたいと思います。私は地名を取り、中野と姓を改め、松若丸様に忠誠を誓い、忠頼と名も改めたいと思います。」
政頼「それはいい覚悟じゃ。松若丸様、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
松若丸「そうか。こちらこそお願い致します。」
こうして高梨家は父の弟、喜六郎が、高梨勘解由次官信頼として継ぐことになり、頼親殿は、中野忠頼として俺の家臣となった。忠頼には政治面や経理関係、色々な事務手続きで活躍してもらおう。
同時に信濃島津氏も取り込むことになり、父の弟、弥七郎が、島津大隈守信忠と名乗って後を継いだ。
旧高梨領には、また安倍家の土木工事が入る予定。土木工事専門の家臣も仕事が増え、それに合わせた募集を繰り返し、かなりの人数になっている。
そして、領地が大きくなってきたため、北の抑えとして、飯山城を増改築して、話し合った結果、湯塚玄蕃叔父に城代として入ってもらうことに決まった。湯塚玄蕃叔父は兵二千と共に飯山城で越後との国境を見張る形になった。
大峰家の領地は水内郡、高井郡を完全に支配し、土木工事の効果もあり二十万石を超えて来た。
これで次は井上、村上と対峙することになる。
1550年2月15日
采女「若、よろしいですか。」
松若丸「入って。」
采女「失礼します。武田と村上に動きがあります。武田が村上領に攻め入ろうとしているため、村上がそれの迎撃準備をしているようです。」
松若丸「そうか。動くか。ありがとう。周りの動きも注意してくれ。」
采女「ハッ。」
千凛丸「若、殿がお呼びです。」
松若丸「わかった。行こう。」
何かあったかなと思いながら、父上の部屋に行く。
松若丸「失礼します、松若丸参りました。」
信秀「入れ。」
松若丸「はい。」
信秀「関東管領上杉憲政殿から手紙がきた。読んでみろ。」
中身は以前の挨拶時のお礼を改めて言っており、須田領、高梨領を平定したことの祝いを述べてあった。最後に頼りにしているとあった。かなり上から。まあうちの宗家ってことだし関東管領だからそうなるか。にしても、だいぶ北条に攻められてるんだな。
松若丸「ありがとうございます。いかがしますか?」
信秀「返事はしよう。宗家で関東管領である上杉様だからな。覚えが目出度いのはいいことだ。」
松若丸「北条との戦に援軍を出せと言われないか不安ですが、また贈り物でもしておきますか。今回は売り物の中から清酒とワインと砂糖でも、また八善屋にお願いしましょう。」
信秀「援軍を出せと言われたらどうする?」
松若丸「さすがに無理でしょう。大事な兵を負ける戦に送れません。」
信秀「そうだな。その分贈り物を高価にしておくか。」
松若丸「まあほどほどにしましょう。備後には私から話しておきます。」
信秀「おう、そうしてくれ。」
1550年2月25日
采女「若、大変なことが起きました!」
松若丸「どうした?入って。」
采女・又兵衛「失礼します。」
松若丸「又兵衛も一緒か。武田と村上だな。どうした?」
采女「まず、村上を攻めた武田を、村上が迎え撃ち武田に勝利し、武田の宿老である板垣信方と甘利虎泰が討死しました。武田晴信も傷を負ったようです。」
松若丸「そうか。上田原の戦いか。それが大変なこと?」
又兵衛「その続きがあります。負けた武田は小県郡を一度諦め、諏訪郡の反乱を鎮定することと、伊那郡へ侵攻することを優先させようと、村上と和睦しました。村上は井上氏に懇願され我が家と戦う気です。そこに武田も援軍を出すことまで決まったようです。武田も将来的に敵となる我らをどうにかしたいのでしょう。利害が一致したということですな。」
松若丸「ほう。井上、村上とはいずれ戦うと思っていたけど武田もか。まあ可能性はあるかもと思っていたが。すぐに攻めてくるかな?」
采女「割と早いと思います。田植えがありますので。その分、武田の援軍は少ないでしょうが。」
松若丸「わかった。ありがとう。引き続き探ってくれ。」
又兵衛・采女「ハッ。」
松若丸「千凛丸、父上のところへ。」
千凛丸「はい。」
その後、父上や評定衆と話し合い、いつでも出陣できる準備と、周りの情報を集めること、上杉家、伊那郡の小笠原家、佐久郡の笠原家とも連携できるように使者を出すことになった。
内乱続きの越後にも、晴景、景虎の両陣営に戸隠衆によりあらゆる噂を流し、混乱させ、一つにまとまらないようにした。
1550年3月10日
村上、武田、井上連合軍が大峰領に向かって軍を起こした。
大広間での軍議。
信秀「この度、先日から予期していたように、井上、村上、武田連合が攻めて来ようとしている。では、松若丸。」
松若丸「はい、この度、井上、村上、武田連合軍を犀川の南側、川中島で迎え撃ちます。おそらく兵数は、井上勢が千、村上勢か五千、武田勢が二千の八千というところでしょう。対して我が軍勢は七千です。数は少なくなりますが、今回大峰銃を二千五百丁使います。」
一同「おー!」
ついに鉄砲を使うということに皆驚き興奮している。
松若丸「大峰銃を使うと間違いなく勝てます。今回、重要なのはその次の手です。一つ目、この戦いの後すぐに井上領、村上領にそのまま攻め込み、我が領地とします。埴科郡、更級郡、小県郡の一部までを支配下にする予定です。そのため川中島では、騎馬隊、槍隊はほとんど戦わないで温存して下さい。二つ目、大峰銃を使いますが将は殺さず捕らえて下さい。なるべく登用する方針です。よろしいでしょうか。」
大久保伊勢「一つよろしいでしょうか。若殿の仰せに従いますが、将を狙わずに手柄はどうするのでしょうか。」
松若丸「手柄は戸隠衆に記録させていますので、ご安心ください。そして兜首を上げることより、将を捕らえた者に厚い恩賞を出します。」
大久保伊勢「なるほど。わかりました。」
黒田掃部「小県郡の一部とはどの辺までですか?」
松若丸「臨機応変に指示を出しますが、上田原辺りまでは欲しいですね。」
真田弾正「その辺りの案内はお任せください。」
松若丸「頼みます。それでは陣立を発表します。鉄砲隊五百ずつを、室賀備後殿、山下兵庫殿、中村主計殿、安倍主水殿、安倍隠岐殿に。槍隊五百ずつを大久保伊勢殿、黒田掃部殿、鎌田内膳殿に。騎馬隊五百ずつを、高梨勘解由殿、島津大隈殿、真田弾正殿、上泉壱岐殿、矢沢頼綱殿に。本陣に五百。以上です。では、井上、村上、武田を迎え撃つぞ!」
一同「おー!」
当初起きないようにと思っていた川中島の戦いが結局起きる。史実とは全く違った形で。そして、史実で言う長篠の戦いのような形で。
この戦いの狙いは三つ。
一つ目、大峰銃の強さを内外に見せつける。
二つ目、一気に上田原まで手に入れる。
三つ目、武田の武将を捕らえて、『勧誘』で配下にする。
上手くいけば、かなりの収穫になる。楽しみだ。




