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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第二章
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第二章 20.5話 番外編 又兵衛と室賀備後守秀賢

“又兵衛の誓い”


私は、戸隠忍者衆の第二家大岩一族の次期棟梁、大岩又兵衛。


主家である大峰家の嫡男、松若丸様の忠実な家臣だ。


4年前、その松若丸様が山で狩りをするというときに、全戸隠衆棟梁家の戸田隼人様と大峰民部大輔様、そして私の父又右衛門が話し合い、私が松若丸様の家臣と決まった。


初めてお会いした時から、本当に4歳なんだろうかと思った。

指示は的確にする、家臣たちのこともしっかりと見ている。知識があり、山でも色々な物を見つけていた。狩りも松若丸様の指示で、考えられない程の収穫があったことを忘れることができない。それくらい衝撃だった。

そして最初に頂いた仕事も驚いた。

山での警護だけだと思っていたら、なんとあの浅川園を思い付かれたのだ。

今では大峰家では知らない者はいない浅川園だが、実はあの場所を見つけたのは私なのだ。松若丸様の指示に従っただけなのだが。




そして、それから4年。毎日、松若丸様の側に付き従っている。

千凛丸殿を除けば私が一番の腹心だと自負している。


竹千代殿、辰千代殿は特別だ。未だにあのお二人と松若丸様の関係は謎である。

小姓衆の中で、あの二人だけが松若丸様に敬語を使わない。だけでなく、長年一緒にいるような信頼感がある。まだ数え8歳なのにだ。


千凛丸殿も不思議に思われているようだが、それについては何も言わない。

それに小姓衆では毎日それを見ているため、もはや誰も何も思わなくなっているようだ。

暗黙の了解となっているので今更私も聞くことはない。



先日の小瀬橋の戦いの指揮は見事だった。戦さに関しても水際立っていたが、その後の須田家の状況を把握し、策を仕掛け、須田満親殿を家臣とし、須田家を攻める大義名分まで得たのだ。

とても8歳の子供ができることではない。


そして、我が配下への恩情。

私には家紋入りの短刀を下さった。

感激してしまった。

改めてこの素晴らしいお方に命を懸けてお仕えしようと誓った。


松若丸様なら天下統一も夢ではない。

戸田隼人様、大峰民部様、戸隠の神々に感謝だ。


おっと、若が呼んでいる。行かなくては。







“備後の誇り”


室賀備後守秀賢。代々大峰家に仕える譜代の臣、室賀家の現当主である。

妻は大峰大和入道広心様の息女で、現大峰家当主、大峰民部大輔信秀様の姉。

子供も、千凛丸と仙千代丸、娘たちにも恵まれた。

一族の八善屋室賀甚右衛門は大峰家の御用商人となって栄えている。


そして、何より幸せなことは、今では信濃の神童とまで言われている、大峰家嫡男、松若丸様の傅役であることだ。

亡くなった我が父も民部大輔様の傅役であったと聞いている。


松若丸様が生まれ、傅役を仰せ付かったときは不安もあったが、無事に果たせているようでよかった。昔は、爺よ、爺よと可愛かったものだ。


毎日多くのことをお教えしてきたが、幼いころから物覚えがよく、武術や馬術も筋がよかった。

4歳になられた頃から急速に大人びて、あの浅川園や、農業技術を思い付かれたのには驚いた。これも私の教えがよかったからだろう。と思いたい。

いや、あのようなことは教えていないので、若の元からの素質であることはわかっている。

ただ、傅役の私としてはそう思いたいのだ。それくらい全てをかけてきた。


先日の小瀬橋の戦いの指揮ぶりには驚いた。素晴らしかったとしか言いようがない。今までお教えしてきたことを、あのように即座に判断し応用し実践することは、なかなかできることではない。

加えて、鍛冶師、山師を家臣としたあの手際にも、一人の家臣として感服してしまった。


まだ若は8歳だが、私にはもう教えられることはほとんどないと思っている。

これからできるのは若のために、有事の時にはこの身体を張って若をお守りすることだ。



千凛丸も小姓として若の信頼を得、しっかりとやっている。

側に竹千代、辰千代という若程ではないが、天才がいるため、千凛丸はたまに親から見ても影が薄くなる時があるが、誠心誠意仕えているようで親としては満足している。千凛丸も優秀な方だとは思うのだが。



これからも若の傅役としての矜持を持って、若をお支えしていこう。

大峰家のために室賀家があるのだ。

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