第二章 17話 鍛冶集団と新式銃
1547年11月17日
昨日、父上に話を通した上で、今日は朝から馬に乗り、備後と主計を連れて俺たちは山を登っている。
又兵衛なら四半刻で着くらしいが、馬術に優れている我々が駿馬の南部馬に乗っても二刻はかかる。
戸隠衆すごい。
道中、何かないかと『鑑定』を使って来たが特に目新しい物はなかった。
まだ欲しいもの結構あるんだよな。八善屋にまた頼むか。
又兵衛の先導により二刻程経った頃、目的地へ近付いてきたことがわかった。
松若丸「又兵衛が言っていた赤い土ってこれか。これが鉄が近くにあるってことか。」
竹千代「初めて見たね。」
辰千代「俺見たことあるよ。確か実験か何かで。」
竹千代「そっか。理系だもんな。」
松若丸「あぁそっか。この土から鉄取れるの?」
辰千代「そこまでは分からん。」
竹千代「山師の藤井与平だっけ?に聞いてみよう。」
又兵衛「若、見えました。あれが鍛冶師の村です。」
松若丸「え、思ったよりずっと大きいんだけど。」
千凛丸「二百人以上は住んでいそうですね。」
又兵衛「こちらで、馬を預かってもらいます。」
俺たちは馬を降りた。
又兵衛「あの奥にある大きな家が頭の家です。先に行って声掛けて来ますので、お越し下さい。」
そう言って又兵衛が駆けて行った。
松若丸「今は特に何も能力使わなくていいかな。昨日『神託』既にやってもらってるし。もし雲行き怪しくなったら『勧誘』使ってね。」
竹千代「了解。」
松若丸「では、皆行こうか。」
又兵衛が教えてくれた家の前まで来た。
松若丸「じゃあ備後よろしく。」
備後が頷いて中に声を掛けた。
室賀備後「頼もう!」
中から下男が出てきて中へ案内された。通された部屋に入る。広い部屋だ。
治平「お待たせ致しました。この村を仕切っている治平と申します。わざわざお越し頂きありがとうございます。」
全然頑固な感じじゃないじゃん。めっちゃがたいよくて強そうだけど、勝手なイメージだった。
松若丸「大峰松若丸と申します。お忙しい中突然お伺いして申し訳ない。」
俺の態度に驚いた治平が答える。
治平「そんな!何を仰いますか!こちらこそお会い出来て光栄でございます。こちらからお伺いすべきところを申し訳ございません。」
松若丸「いや、お願いがあるのはこちら故、こちらから伺うのは当然ですよ。まあ挨拶はこの辺にして、単刀直入に申し上げます。我が家の家臣になって頂けないでしょうか。大岩又兵衛より腕の確かな鍛冶だと伺っていましたが、こうしてお会いして是非我が家に仕えて頂きたいと思いました。こちらの村の皆さんをそのまま治平殿が仕切って頂き、全員にそれなりの待遇の給金をお支払いします。また、こちらから依頼した物を作って頂いたらその都度その分の支払いもしますので。何卒宜しくお願いします。」
治平「そのような好条件よろしいのでしょうか。」
松若丸「ええ、もちろんです。」
治平「忠兵衛、いるか?」
忠兵衛「はい、失礼します。」
若い男が入ってきた。これもがたいがいい。そして賢そうだ。
忠兵衛「治平の子、忠兵衛と申します。父上、村の衆集まっております。そして皆、松若丸様のためにお役に立ちたいと申しております。」
治平「そうか。松若丸様、実は昨日、私と忠兵衛に神から大峰家に仕えるようにとのお告げがあり、既に心を決め、村の者たちにも言い聞かせております。」
松若丸「そうでしたか。ありがとうございます。よろしければ皆さんこちらにお入り頂いたら?」
治平「そんな!よろしいのでしょうか?松若丸様がよろしいと仰るなら。」
松若丸「せっかく皆集まってくれたのです。今後の相談もさせて頂きたいですし。忠兵衛殿、皆を中へご案内してくだされ。」
忠兵衛「ハハッ!」
がたいのいいおっさんたちが入ってくる。いっぱい。密度がめっちゃ高くなった気がする。空気も薄くなった気がするし。威圧感がすごい。
松若丸「既に聞かれたかもしれませんが、皆さんには我が家の家臣になって頂きたいのです。」
一同「ハハーッ」
松若丸「よろしくお願いしますね。では、先程お話ししたように、皆さんには大峰家家臣として給金をお支払いします。こちらから依頼した物を作って頂いた場合、その分はまたお支払いします。材料費がいる場合は先に払いますし、なるべくこちらで材料も用意します。あと、こちらからの依頼がない時は、他からの依頼を受けて頂いて構いません。ただしばらくは忙しくなると思いますけど。」
治平「なんと!本当にそのような条件でよろしいのですか!ありがとうございます!宜しくお願い致します!」
鍛冶一同「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
松若丸「こちらこそよろしくお願い致します。皆さんはここにいる中村主計の預かりとなって頂きます。そこで治平殿、忠兵衛殿には、中村の姓を名乗って頂きましょう。それから、備後。」
室賀備後「ハッ。こちらを。」
松若丸「これは今後のためにお使いください。」
持ってきたかなりの金額の資金を準備金として渡した。
治平「そんなことまで!ありがとうございます!松若丸様のために全力で働かせて頂きます!」
治平、忠兵衛はじめ、鍛冶のおじさんたちもびっくり、感激したようだ。
治平「主計助様、よろしくお願い致します。」
中村主計「おう、こちらこそ宜しく頼みます。」
松若丸「では早速ですが、お願いがあります。」
設計図を広げる。
松若丸「こちらを作って頂きたいのです。」
鍛冶一同、前のめりで覗き込む。
忠兵衛「すごい!これは鉄砲ですか!でも噂の火縄銃ではありませんね!」
治平「これはすごい。こんなのは考えつかないな。でもここまで詳細な設計図があればできそうか。こちらの設計図はどちらで?」
松若丸「中村主計の嫡男、辰千代が描きました。」
鍛冶一同「おー!」
治平「なんと!これだけのものを!素晴らしい!さすが信濃の三神童ですな!」
忠兵衛「すごいです!」
松若丸「作って頂けそうでしょうか?」
治平「はい!謹んでお受け致します。」
鍛冶一同「お受け致します!」
松若丸「では、もし何かあれば、主計か、辰千代に申し出て下さい。あと、大峰館の町に皆さんが使える大きめの家もご用意しましょう。よろしくお願いします。とりあえずは鉄砲ですが、刀や槍、他の道具もお願いすると思います。皆さんの腕には期待してますから頼みますね。」
鍛冶一同「ハハーッ」
そうして俺たちは鍛冶村を後にした。
よかった!!鉄砲が手に入る!それもあの強力な大峰銃が!




