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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第六章
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第六章 144話 上野と武蔵

1555年2月1日


鉢形城を落とした掃部叔父が大峰に帰って来た。

鉢形城は落とすのに二十日ほどかかった。かなり堅固な城で、力攻めではなく城を包囲し、相手の士気を下げるために何度も攻めかけるということを繰り返したが、なかなか落ちなかった。戦局は膠着し、落ちる気配はなかったのだが、それでも小田原が全く動かないので、城主は諦めて開城を決め、小田原に落ちて行った。小田原では昨年末の敗戦からまだ立ち直っていないようだ。


鉢形城にはとりあえず兵を残し、掃部叔父、馬場美濃、内藤修理、それに先日本庄城、深谷城に行ってもらった笠原弥九郎叔父、大井勘十郎叔父にも来てもらった。さらに、先日上州で反乱を起こした倉賀野氏、安中氏の後を継いでもらった倉賀野与一郎叔父、安中与次郎叔父にも来てもらった。

与一郎、与次郎は年が近いからか叔父と言う感じはしないが。

上州組でも、真田弾正は越後への備えのため沼田にいてもらった。


ここは政庁の大広間。

昨夜、大峰に帰って来た上州から呼んだ将たちが朝からここに集まった。


備前、肥後、陸奥、近江、下総、武蔵、播磨、越前、采女、主殿を呼んだ。とりあえず今後の方針を決めるにあたって、この面子を中心にしようと考えている。

父上、伊勢叔父、三家老の隠居三人も呼んだ。


大広間の上段の真ん中に俺が座り、右に父上が座った。

左側に備前、肥後、陸奥、近江、下総、武蔵、播磨、越前、采女、主殿が座る。

右側に伊勢叔父、備後、兵庫、主計、与一郎、与次郎が座る。

その間に、こちらを向く形で掃部叔父が一番先頭、二列目に美濃、修理、三列目に弥九郎叔父、勘十郎叔父が座った。




信輝「掃部叔父上、ご苦労様でした。」


掃部「なんの。北条が動かなかったからそれほど大きな戦はしておらんからな。昨年、笛吹で北条を散々に痛めつけた武衛の戦があってこそよ。」


信輝「それでも短期間に三城を落としたのです。大きな手柄ですよ。」


掃部「そうか。それなら褒美ははずんでもらおうか。」


そう言って掃部叔父が笑い、つられて皆が笑った。

戦勝の報告も兼ねているので、雰囲気は明るい。


信輝「領地と給金を増やすことを考えましょう。」


掃部「そうだな。わしはいらんが、配下の者たちには与えてやってくれ。」


信輝「わかりました。美濃、修理も久しいな。ご苦労であった。」


美濃「ハッ。お言葉ありがとうございます。本年は年賀の式にも参加できず申し訳ございませんでした。」


修理「ありがとうございます。殿におかれましてはご壮健そうで何より。お風邪を召されたと聞き及びましたが。」


信輝「うん、もう治ったから大丈夫。ありがとう。では、本題に入ろう。今回、皆の活躍により、本庄城、深谷城、鉢形城が手に入った。また、主殿に使者に立ってもらい、由良氏、桐生氏、佐野氏、足利長尾氏、赤井氏が臣従してくれることになった。これで、上野全てと、武蔵の一部、下野の一部が領地となった。」


越前「おお!兄上!それはすごいですな!知りませんでした!小田原に攻め込みますか!」


越前が膝を乗り出して叫ぶ。


播磨「静かにしておけ。それにここでは武衛兄上のことだけは殿と呼べ。」


播磨に叱られ席に座る。


信輝「うん、それでな、その五氏が明日大峰にやってくる。案内は龍岡の大隅叔父上と主殿の手の者にお願いしている。桐生の柄杓山城、由良の太田新田金山城、赤井の舘林城、下野の方の、足利長尾の岩井山城、佐野の唐沢山城はそのまま領地を安堵しようと思う。」


武蔵「殿、よろしいので?」


信輝「うん、まだ正直言って下野まで手が回らないしな。ただ、上州と、今回武蔵で手に入れた鉢形、本庄、深谷はしっかり確保しておきたい。本庄城には勘十郎叔父上、深谷城には弥九郎叔父上に兵千ずつと入ってもらったけど、まず兵が足りない。それから鉢形には誰に入ってもらうのがいいか。おそらく北条も鉢形はすぐにでも取り返そうと兵を向けてくるだろう。それを踏まえて、鉢形城主と、上州、本庄、深谷の配置も考えて欲しい。では、備前。」


備前「ハッ。采女殿、主殿殿に調べて頂いた地図をこちらに。」


皆に真ん中を空けてもらい、大きい地図を広げる。

棒を使いながら備前が説明する。


備前「上州は掃部殿がおられる前橋城、その南東にある美濃殿の伊勢崎城、前橋城の南にある修理殿の藤岡城、前橋から北へ越後に向かう途中にある今回来ておられませんが弾正殿の沼田城。この四城が中心でした。それに今回加わった、前橋城の伊勢崎を超えた東にあるここが柄杓山城、その柄杓山城から南のここが太田新田金山城、新田金山城から少し離れた南東のここが舘林城です。舘林だけが東に突出していますが、新田金山城の東にあるこの下野国足利の岩井山城、岩井山城から東に行ったこの下野国佐野の唐沢山城をご覧いただくと、利根川の北側のこの線までが大峰領となったことになります。」


一同地図を見ながら頷く。


備前「そして、利根川の南側の、ここ藤岡城から東にあるここが本庄城、本庄城の南東にあるここが深谷城、最後に本庄城から南に行ったここが鉢形城です。さらに、目を上野と信濃の国境に戻していただいて、ここ松井田にも上野とここ大峰の道をより確実に確保するために、この度、築城をしようと殿はお考えです。」


掃部「それはいい。賛成だ。」


信輝「備前、ありがとう。と、いうことで皆の意見を聞きたい。」


越前「兄上!私を鉢形城に入れてください!」


また。


播磨「そんなことあるはずないだろ。それに殿と呼べと言っただろ。」


また。


武蔵「殿のお考えはお決まりですか?」


武蔵が今のがなかったことのように続ける。


信輝「まだ迷っているんだよね。」


掃部「武衛、わしが鉢形に入るか?」


信輝「いやー、掃部叔父上には前橋城にいて欲しいです。」


笠原弥九郎「わしがそちらに行くか?そして深谷に勘十郎を入れればよいのではないか?」


大井勘十郎「本庄はどうします?」


美濃「私が鉢形に行きましょうか?」


修理「美濃殿の伊勢崎は、今回の五氏の監視のために重要な城。美濃殿は伊勢崎にいた方がいいのでは?」


倉賀野与一郎「私が入るのはいかがでしょうか?」


安中与次郎「武衛、私も早く前線に出してくれ!」


弥九郎「武衛、与次郎でもいいかもしれんな。」


与次郎「おお!そうしてくだされ!北条が攻め寄せても見事追い落としてくれましょう!」


伊勢「これ、与次郎。そなたはまだ戦の指揮を執ったことがないであろう。」


与次郎「伊勢兄上、私ならやれます!」


勘十郎「意気込みはいいが、いきなり最前線はな。やはりここは弥九郎兄上ではないだろうか。」


掃部「弥九郎につとまるか?」


弥九郎「わしももう25ですぞ。お任せ下され。」


伊勢「武衛、わしが行くという手もあるぞ。」


信輝「うーん、それも考えたんですが、伊勢叔父にはもう少し大峰にいて欲しいので。」


掃部「ではやはり弥九郎か?大隅に龍岡から鉢形に行ってもらうか?」


与次郎「武衛、私もやれるぞ!」


与一郎「与次郎、武衛殿の判断に任せよう。」


与次郎「うーむ。」


信輝「大隅叔父上にはまだ龍岡にいてもらいましょう。今川対策も必要なので。」


伊勢「では、鉢形に弥九郎、深谷に勘十郎、本庄に与次郎にしたらどうか?」


掃部「そうですな。松井田には与一郎か。」


信輝「それが現時点ではいいですかね。皆はどう思う?」


備前「異論ありません。」


肥後「同じく。」


陸奥「いいと思います。」


近江・下総・武蔵・播磨「賛成です。」


信輝「越前もよいか?」


越前「残念ですが、それでいいです。」


信輝「弥九郎叔父上、勘十郎叔父上、与一郎、与次郎もそれでいいかな?」


弥九郎「おお、任せてくれ。」


勘十郎「なんとかなろう。」


与一郎「畏まりました。」


与次郎「残念だが仕方がない。次は頼むぞ!」


信輝「わかったよ。でも鉢形城、深谷城が攻められたら、一番最初に援軍に行くのは与次郎の本庄城だからな。」


与次郎「そうか!任せてくれ!」


信輝「鉢形には兵五千、深谷には三千、本庄には千とする。今まで上野に置いていた兵を動かしてください。」


掃部「承った。」


信輝「前橋には五千、伊勢崎には三千、藤岡、沼田には二千ずつはいて欲しい。大峰からも少し出します。」


掃部「兵も順調に増えておる。問題ない。」


信輝「父上、これでよろしいでしょうか?」


信秀「ああ、皆頼む。」



とりあえず新領地も含め、城主の配置が決まった。




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