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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第六章
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第六章 136話 貨幣と槍

1555年1月6日


今日から定期的に政庁で甚右衛門による貨幣制度の講義を行ってもらう。

参加者は、俺、備前、肥後、陸奥、そしておそらくこの責任者になるだろう大蔵、甚兵衛が出席することになっている。


朝から政庁の、ある部屋に集まった。


信輝「おはよう。甚右衛門はまだかな?」


備前「おはようございます。」


甚兵衛「おはようございます。父は今少しで参ります。申し訳ございません。」


信輝「いや、大丈夫。ありがとう。」


肥後「貨幣制度ってどうなん?」


陸奥「もう造幣と配布始めたんでしょ?」


信輝「うん、今月から給金は新貨幣にしたし、領内では今までの貨幣を交換するようにって触れも出したよ。」


肥後「まあやってみないとわかんないよな。」


陸奥「今日は何の話をしてくれるんだろう?」


信輝「多分、供給量の話って言ってたから、インフレ、デフレの話じゃないかな?中央銀行の役割を教えてくれるんじゃない?」


肥後「なるほど。」


陸奥「それ誰がやるの?」


信輝「大蔵に頼むことになると思うよ。大丈夫だよね?」


大蔵「はい。精進します。」


信輝「あと、甚右衛門が引退したら、うちの顧問みたいになってもらえたら助かるよね。」


肥後「なってくれんの?」


信輝「甚兵衛次第じゃん?」


甚兵衛「頑張ります。今後、八善屋もますます殿のために働きますよ。」


信輝「今までも十分働いてくれてるけど、これからもそうしてくれると助かるよ。」


甚兵衛「こちらこそ、これからもお願い致します。こちらも最近ではほとんどが大峰の商品で儲かってますからね。」


信輝「そうか。また新商品も開発できるように考えてみるよ。」


甚兵衛「宜しくお願い致します。」


その時、襖が開き甚右衛門が入ってきた。


甚右衛門「私からもお願い致します。」


信輝「甚右衛門、忙しい所悪いね。」


甚右衛門「いえ、遅れてしまい申し訳ございませんでした。宜しくお願いします。」


信輝「こちらこそよろしくお願いします。」


甚右衛門「では始めましょう。」


こうして始まった講義だったが、やはり予想通りの内容だった。

昔学校でやった経済の授業って感じ。社会人になっても学んできたが、甚兵衛の話は実体験が伴っているため、身になる話だった。今後も月に一度くらいの頻度でやってもらうことにした。

市場調査や、調整も初めは甚右衛門に見てもらうことにした。


終了後、甚右衛門、甚兵衛は店に戻るというのでそこで別れた。



午後からは槍を注文するために西ノ丸に行く予定だ。

この前の槍は武道場に置いていたのだが、年末忙しくて一度返してしまった。

義信殿は大見槍を、四郎は十文字槍を選び、先に作ってもらい、それは年末に届けてくれたらしい。その時に四郎も送って行ってもらった。ちょうど俺らと入れ違いになった。

俺や、十神隊の将たちはまだ注文していない。

形だけじゃなくて、長さ、重さなどの微調整もオーダーするため、今日行くことにしたのだ。

十神隊の将たちと、井伊直親や堀秀重、奥田直純、三左衛門、蒲生賢秀も呼んでいる。虎高は怪我で安静にしているため来れない。越前と播磨は大峰にいる長尾衆、尼子衆も連れて行くと言っていた。俺も小姓たちも連れて行く予定だ。


大蔵は一度自分の屋敷に戻るというので、備前、肥後、陸奥だけを連れて、俺の屋敷で昼食にすることにした。


洋風食堂で備前、肥後、陸奥と小姓たちも一緒に昼食にした。

賄い方が出してくれたのは豚の生姜焼き定食だ。


食べながら話す。


信輝「結局もう三人は槍決めたの?」


肥後「決めたよ。もうお願いしてる。」


信輝「何にしたの?」


肥後「俺は片鎌槍にしたよ。清正みたいな。」


信輝「引っ掛けたり絡めとったりできるんだっけ?」


肥後「うん。使ってみてもよかったから。」


信輝「なるほど。実用的だね。俺も試してみようかな。」


陸奥「俺は三叉槍にしたよ。トライデント。ネプチューンが持ってるみたいな。」


信輝「三叉槍って何がいいの?他の槍と何が違うの?」


陸奥「かっこいいじゃん。刃が三本並んでるのが。うちの旗とも合うし。」


信輝「なるほどね。備前は?」


備前「以前少しお話した大身槍にしました。刀に棒を付けたくらいの。」


信輝「おお。それは何がいいの?」


備前「突く、薙ぎ払う、普通の刀みたいに斬ることも出来るのです。」


信輝「なるほどね。皆も見せてもらってから何か考えてる?」


小姓衆にも聞いてみる。


半兵衛「私は少し大きいくらいの普通の槍にしようと思います。」


久作「私は、肥後殿が仰った片鎌槍をもう一度見てみたいです。」


源五郎「私は上鎌の十文字を使ってみたいです。」


三右衛門「私は笹穂の槍が見てみたいです。」


鍋之助「私は備前殿のような大身槍がいいです!」


信輝「結構もう考えてんだね。亀丸、与一、巳六、乙千代丸は?」


亀丸「もう一度見せて頂いてから決めたいと思います。」


乙千代丸「私もそう思っています。」


信輝「まあそうだよな。この前ちょっとしか見れなかったし。与一と巳六は?」


巳六「重くて大きい槍がいいです。鍛錬にもなります。」


与一「私は殿が決められてから決めます。」


信輝「何で?」


与一「殿が武器を何らかの理由で失ったときに私のを差し上げることができるからです。」


信輝「なるほど。でも、まあ、自分の好きに選んでいいからね。」


与一「はい、わかりました。ありがとうございます。」


こんなことを言ったら周りの小姓たちに嫌われそうだけど、与一は本気でそう思ってるから嫌われない。与一のいいとろだな。真面目で努力家。秀才。


信輝「よし、じゃあそろそろ行くか。」



食べ終わって、賄い方にお礼を言い、皆で食堂を出て玄関から出てぞろぞろと厩に向かう。


馬に乗って西に向かい出した。

馬もどんな子が生まれているか、浅川園の牧場に一度見に行かないとな。


話しながら進み、西ノ丸に入り、昨日来ることを伝えていた中村親子の家に着いた。


作った鉄砲や武器を試すための大きな広場に通される。


既に何人も来ていた。広い広場に何ヵ所か布が敷かれ、そこにサンプルがたくさん置いてある。わざわざ大きさ、長さ、重さや形が違うものを何通りも作ってくれたらしい。これは助かる。種類ごとに場所が分かれているようだ。何人かずつそれぞれの場所に集まっている。少し離れた場所で振ってみている者もいる。


広場に入ったところで小姓衆に好きに見ていいと解散させた。備前、肥後、陸奥もそれぞれ見に行った。

俺はどうしようかなと思っていると大きな声で話しかけられた。


越前「兄上!」


信輝「おう、越前。もう決めたか?」


越前「どれもよくて迷っています。兄上は?」


信輝「まだこれからだよ。それよりもう怪我はいいのか?」


越前「もうすっかりです!ありがとうございます!」


武蔵「兄上、私はこれにしましたよ。上鎌十文字槍です。」


信輝「へー、何で?」


武蔵「師匠がいらっしゃっていて、この形の槍で槍術を考えると仰っているのです。」


信輝「そうなんだ。師匠来てるの?あ、本当だ。」


武蔵「はい。伊豆殿に聞かれたそうです。これを選ぶ人が増えてますね。」


信輝「そうなんだ。確かにあそこだけ人が特に多いな。あ、播磨。播磨はどうした?」


播磨「私はこの片鎌槍にしました。」


信輝「それが気に入ったんだ?」


播磨「はい。」


そう言って尼子衆の方に歩いて行った。


信輝「上鎌十文字槍を選んでるのが多いのかな。」


与一「殿、どうされます?」


信輝「皆と一緒は面白くないからなぁ。」


そう言って、そのまま越前と与一を連れて見て回った。


信輝「あ、これかっこいいな。」


持ってみる。移動して振ってみる。いい感じだ。

越前と与一は黙ってついてきたので、まずは越前に渡してみる。


越前「これはいいですね。私はもう少し長い方がいいな。」


越前がそう言って与一に渡し、この種類の槍が置いてある場所の方に戻って行った。


与一「おお、これはいいですね。殿はこちらにするのですか?」


信輝「そうしようかな。」


与一「では、私もそうします。」


信輝「本当に?いいの?もう少し見てみなよ。」


与一「そうですね。では、ここの部分が片方だけのものにします。」


信輝「そう。じゃあ、あの中からそういうのないか探して見なよ。選んだら忠兵衛に頼みに行こう。俺も重さと長さをちょっと変えてもらおうかな。」


与一「はい。ではあちらの中から探しましょう。」


越前が選んでいるところに俺らも行き、三人でサンプルの中から気に入るものを探す。


そうして選んだ後、皆の注文を受け付けている忠兵衛のところに行った。

だいたい皆も決まってきているようだ。

忠兵衛に聞いたら、やはり上鎌十文字槍が多いらしい。でもそれぞれ大きさや、長さや、太さや、重さ、飾りなどが違い、これから大変らしい。

俺もサンプルの槍を使いながら説明し、大きさ、長さ、太さ、重さ、飾り、色も注文した。


あとは出来るのを楽しみに待とう。

越前も結局俺と同じ種類の槍にしたらしい。大きさを俺のより大きくして、先頭で突っ込んで敵を一撃で何人も倒すのだと笑っていた。この前怪我したとは思えない。まあ、トラウマになったりしていなくてよかった。


師匠に挨拶した後、来ていた皆とどんな槍にしたのか話したり、そこで軽く試合したりして過ごして暗くなった頃に帰った。


俺の槍や、皆がどんな槍にしたのかは出来てからのお楽しみだ。



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