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戦国野望  作者: 丸に九枚笹
第五章
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第五章 121話 武田家と招いた客

1554年12月5日


昨日戻ってきて、さすがに疲れて笹の間ですぐ寝てしまったため、今朝は笹の間で起きた。

食堂で皆と食事をし、今日は朝から政庁へ。


政庁の中に入り、政務室へ入るともう父上が来ていた。今日は祖父もいる。

この政務室も、今は畳敷きの部屋に背の低い机を置いているが、いずれは洋式の机と椅子を置こうと考えている。

時間よりはまだ早いはずだがと思いながらも、父上と祖父を待たせてしまったためお詫びをする。


信輝「おはようございます。お待たせしてしまい申し訳ございません。」


信秀「いや、今日はわしたちが早かったのだ。これまで当主としての引継ぎを行ってきたが、本日を最後とする。ただ、以前申した通り、来年から当主はお主に譲る。が、しばらくはわしと広心様も政務は行っていくので、そこまで忙しくなることはないだろう。お主は今まで通り、大峰のために新しいことを続けるがよい。」


信輝「はい。ありがとうございます。」


広心「また色々と面白いことをやっとるようじゃの。直江津に風魔に水軍に船と。武田晴信殿親子を招くそうじゃな。佐竹と浅井のことも聞いたぞ。よくやっておる。」


信秀「そうだ。来賓館の完成ももう間近じゃ。武田殿に書状を送ってよいぞ。」


信輝「来賓館と名付けられたのですね。ありがとうございます。では書状を送ります。」


信秀「武田家とは今後も仲良くしていくつもりなら、浅川園や、農地、須坂練兵場なども見せてもいいのではないか?」


信輝「よろしいのですか?」


信秀「そのつもりなのだろう?」


信輝「そこまでは考えておりませんでしたが、姉上、見、梅と縁を重ねておりますので、私としてはこのまま仲良くしていこうと考えています。」


広心「お主の思うようにすればよい。京や小田原のこともある。これからは味方も大事じゃ。内政はわしと右京がまだしばらくは踏ん張るからの。好きにやればよい。」


信秀「そうだ。これからは判断はお主がするのだ。相談には乗るが、判断はお主がするのだぞ。」


信輝「ありがとうございます。」


俺は二人に頭を下げすにはいられなかった。


信秀「では、最後の引継ぎを始めるか。」



こうして、俺は大峰の政務を一通り引継ぎ、来年初から当主となる準備が整った。


武田家に書状を送った所、すぐに返事の使者が来て、使者が出るときにはもう出発するところだったらしい。




1554年12月7日



武田家の軍列が見える。

今俺は珍しく天守に登っている。この天守は飾りで、普段ほとんど使わない。

周りから見えるように派手に建ててはいるが、特に何に使うでもない。

展望台のような感じだ。

今日は、武田の軍列を見るために久しぶりに登った。

ここから見ると川中島の辺りから、ぎりぎり屋代の辺りまで見える。

武田の軍列と言っても、速さを重視したのだろう、五百くらいか。


それにしても早かったな。速かったし。

もうこちらに来る気満々で待機していたようだ。書状を送らなくてももう出発するくらいだったのだろう。

そして、すごい速さで来ている。

ここから見ていてもわかる。

そろそろ迎えに行くか。


信輝「又兵衛、犀川辺りまで行こうか。」


又兵衛「早く行かないと迎えになりませんぞ。」


信輝「そうだね。急ごう。」


又兵衛は早くも浅井家への使者の役目を果たして戻って来ている。結果、婚姻とまではいかなかったが、同盟には至った。これからどうなるかだ。


俺は天守の階段を駆け下り、繋いでいた馬に乗り、又兵衛、采女、小太郎と馬を駆けさせた。


犀川までは間に合わなかったが、城下まで迎えに行くことができた。


先頭集団に義信殿がいた。


信輝「義信殿!」


義信殿「信輝殿、わざわざありがとう。」


信輝「いえ、お迎えが遅くなって申し訳ないです。」


義信「いや仕方ないだろう。父上が、まだかまだかとずっと言っていてな。出発も早かったが、出発してからも後ろから早く行け早く行けと言ってくるのだ。余程早く娘たちや信輝殿に会いたいらしい。」


信輝「お招きするのが遅くなって申し訳ございません。」


義信「いいのだ、わざわざ我らのために屋敷を建ててくれたそうだな。感謝するよ。」


信輝「いえ、とんでもないです。」


義信「真ん中あたりに輿に乗っているから一度父上に挨拶してくるといい。」


信輝「ありがとうございます。行ってきます。」




信輝「信輝です!通されたい!」


護衛の者たちに叫びながら近づき、輿の側まで来た。


晴信「信輝殿、来てくれたか。」


晴信殿が輿から顔を出した。顔色が悪い。


信輝「遅くなってしまい申し訳ございません。お体の具合が悪いのですか?」


晴信「少しな。問題はない。」


信輝「そうですか。このまま、大峰に入って頂き、来賓館にお入りください。」


晴信「わざわざ新築してくれたそうだな。忝い。お言葉に甘えさせて頂こう。」


そう言って輿の中に戻った。

俺は義信殿のところに戻り、義信殿と並んで、大峰城下を北上し、三ノ丸、二ノ丸。本丸と通り、来賓館へ案内した。

中を一通り説明した後、父上に挨拶したいというので、晴信殿、義信殿と数人を連れ、父上の館へ。

挨拶を終わり、梅と見、四郎に会いたいというので、今度は、先に来賓館に戻ってもらい、三人を連れて行った。


来賓館の中の謁見の間に通される。


晴信殿、義信殿が部屋に入っていた。

やはり晴信殿の顔色が悪い。長く労咳だったという説もあるため、医療班を呼んでおいた。もし労咳だったとしたらなかなか難しいが、この来賓館にも引いてある温泉と医療班の手によりしばらく療養して頂くのがいいだろう。


梅「父上、もうしばらくお会いしていないような気が致します。お体が悪いのですか?」


晴信「大事ない。梅、信輝殿のところへまいって幸せか?」


梅「はい、幸せでございます。」


見「私もです!」


晴信「そうか。よかったな。四郎はこの一ヵ月いかがじゃった?」


四郎「色々と学ぶことができました。」


晴信「それはよかったの。もうしばらくこちらにいさせてもらいなさい。」


四郎「はい!」


晴信「信輝殿、子たちがお世話になっておるの。特に、梅、見は本当に忝いな。」


信輝「いえ、そのようなことはございません。晴信様、この館には温泉を引いております。それに勝手ながら大峰きっての医療班も用意させて頂きました。しばらくこちらでごゆっくりして頂いてはいかがでしょうか?」


義信「それは忝いな。いかがですか父上。」


晴信「そうじゃな、武衛殿の心遣いに甘えようかの。梅、見もおるしな。」


信輝「はい。何日でもいてください。元気になられましたら、農地や浅川園もご案内いたしましょう。」


義信「それはありがたい!色々と教えてくれ。」


晴信「そうじゃな。ありがたいな。この前の芋も助かったぞ。」


信輝「はい。快復されてからでもゆっくりご案内いたしましょう。」


晴信「忝い。」


義信「信輝殿、父上には悪いが先に私だけでも案内してくれないか?」


晴信「武衛殿、悪いがそうしてもらってよいか?義信を先に案内してやってくれ。」


信輝「わかりました。では明日からでも義信殿はご案内いたしましょう。晴信殿はまずは養生に専念してください。」


晴信「忝い、そうさせてもらおう。申し訳ないがこの辺で寝所に入らせてもらう。」


義信「お手を。」


信輝「私もお手伝いさせて頂きます。」


こうして晴信殿は寝所に入り寝込んでしまった。


その間に義信殿と浅川園や、農地の水車、水路、堤防、そして練兵場などを見て回った。

義信殿は行くところ行くところでうんうん唸っていた。

よっぽど参考になったのだろう。

まあ、それならそれでよかった。


こうして数日が過ぎて行った。




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