第五章 109話 大工集団と水軍衆
1554年10月1日続き
采女(殿、よろしいでしょうか?)
信輝(おう、采女、どうした?)
采女(その後の動きです。)
信輝(ちょっと待って。今皆いるから皆で聞くわ。)
信輝(ごめん。これでいいよ。)
采女(聞こえますか?)
肥後(お疲れ。聞こえるよ。)
陸奥(こちらも。)
備前(聞こえます。)
又兵衛(はい。)
采女(では、美濃と尾張の動きについてご報告します。まず美濃ですが、斉藤道三殿が尾張に出陣しました。その数一万八千。今、岩倉城に向かっています。その手前の犬山には抑えの人数だけを置いていきました。留守の稲葉山城は千です。あと義龍殿は病を理由に軍には参加しておりません。)
信輝(そうか。今川軍って結局数どれくらいになってるの?)
采女(はい、人数を道中集めながら、抑えた各城に兵を配置しながらここまで来ていますが、義元殿の主力は三万七千です。)
信輝(倍以上だね。)
采女(はい、今川勢は、五千ずつを信長殿の所有の西の勝幡城、那古屋城の手前の古渡城に向け、主力は那古野城に向かいました。斉藤勢を警戒しながら動いています。)
信輝(尾張に一気にそんな兵入ったらごちゃごちゃじゃない?)
采女(はい、治安がかなり悪化しています。夜盗なんかも横行しているようです。)
信輝(気を付けてね。)
采女(はい、ありがとうございます。)
信輝(今川軍って進軍速度遅いよね。今思ったんだけど、義龍殿と示し合わせて動いているから遅いとかない?義龍殿と今川義元殿が繋がっている可能性は?)
采女(おそらくないですね。今川勢は単独で動いています。遅いのは軍律が厳しくないからだと思います。一つ一つの準備に時間がかかっているようです。義龍殿は今川勢の侵攻をこれ幸いと動き出す可能性はありますが、これも単独でしょう。浅井勢が援軍に来るかどうかも現時点ではわかりません。)
信輝(そうか。信長殿は?)
采女(まだ動きがありません。)
信輝(わかった。ありがとう。動きがあったらまた教えて。気を付けてね。)
采女(畏まりました。ありがとうございます。)
肥後「桶狭間ではなかったわけだ?」
陸奥「斉藤義龍の反乱ってこれくらいの時期じゃなかった?長良川の戦いか?」
信輝「そう、とりあえずもう桶狭間ではなくなったね。まだ信長が動かせる兵ってめちゃ少ないからね。義龍の反乱はそろそろなんだけど、道三が一万八千も軍を掌握してるからどうなるだろうね。」
肥後「まあ、引き続き采女待ちだな。ぶっちゃけ美濃と尾張と今川がどうなろうと関係ないもんな。」
陸奥「美濃は関係あるんじゃん?また木曽に来るかもよ?」
肥後「まあそん時はそん時だろ。北条は?」
信輝「まだ何も。」
陸奥「氏政は攻めてきそうだよね。」
信輝「うん、そう思って風魔に情報集めてもらってる。」
肥後「風魔って信用できるん?」
信輝「大丈夫だと思うよ。一族皆で来たわけだし。」
陸奥「そうだね。そこまでしてたら大丈夫でしょ。」
肥後「そうか。」
陸奥「信長って今いくつだ?」
信輝「二十歳かな?」
陸奥「見てみたいよね。興味本位で。」
肥後「確かにそれはある。結構有名な人たちに会ってるけど、信長、家康は会いたいな。」
信輝「まあそのうちね。じゃあ造船所行くか。又兵衛、申し訳ないんだけど、大岩衆は妻たちの警護にまわしてもらっていい?しばらく八善屋に案内頼んで直江津見ててもらうから。」
又兵衛「畏まりました。」
俺は備前、肥後、陸奥と造船所に向かった。
他の皆は直江津探索。
陸奥「これはすごいの造ったね。遠くから見えたのこれか。春日山城の一部かと思った。」
肥後「巨大ガレオン船とか造れそうだな。よく知らないけど。」
備前「船ってすごいのですね。」
信輝「これの何を微調整するんだろう?」
岡部「殿、よくお越しくださいました。いかがでしょうか?」
信輝「いや、これで十分じゃない?ここまで頑張ってくれてありがとう。」
甲良「はい、実際使ってみて頂かないとわからない部分もあるので。」
信輝「そうだね。けど、よくここまでやってくれたよ。直江津の湊も見て来たけど、完璧です。想定以上のものをありがとう。」
岡部「はい。では直江津はこれでよろしいでしょうか?船大工は?」
信輝「ああ、この前教えてくれたから今船大工手配してるよ。皆に船まで造ってとはならないと思うから安心して。」
岡部「畏まりました。」
甲良「では我らは須坂に向かいます。また何かあればご命令ください。」
信輝「ありがとう。でも少し休んでからでもいいからね。働きすぎで倒れないように。」
岡部「ご配慮ありがとうございます。では失礼致します。」
いやー助かるわ。よかった。大工集団作って。腕もどんどん上がってる。
しかしストイックだな。
そういえば前橋城ってもう完成したのかな?そこにも大工集団の一部が残って仕事してるわけだよな。今度見に行こ。
四人で造船所の周りを見て回っていたら日本助が来た。
日本助「殿、ご無沙汰しております。」
信輝「おう、日本助。谷浜は落ち着いた?」
日本助「はい、お陰様で。この造船所はすごいですな。いったいどんな船を?」
信輝「そうだね。一度日本助にも造り始める前に設計図見てもらった方がいいな。今度また呼ぶよ。ちなみにさ、日本助の船って誰が造ってるの?」
日本助「はい、楽しみにしております。我らの船は、小さいものは我らでも作りますが、大きいものは船大工に頼んでいました。」
信輝「その船大工ってどこの?」
日本助「因幡のです。奈佐の者で船大工もおりましたので数人ですが連れてきております。」
信輝「そうなんだ。じゃあさ、伊豆の下田衆を船大工として招く予定だから、因幡の船大工たちも協力してもらっていい?そういうのって嫌がるかな?」
日本助「海の者たちはあまり気にしないから大丈夫だと思います。いかに良い船を造れるかの方が大事ですので。」
信輝「それならよかった。奈佐衆は戦に出れる人数どれくらいで、船って何艘くらいあるの?」
日本助「はい、二百人くらいは。船は安宅船が十艘で関船が三十艘です。」
信輝「あれ?もっといなかった?」
日本助「因幡の地に残った者もいますので。義輝様をお送りしてきたときは、奈佐衆以外も援軍として来てくれていたのです。」
信輝「そうだったのか。そういえば、奈佐衆に給金って渡ってる?」
日本助「給金ですか?」
信輝「あ、ごめんね。忘れてた。働ける人たちの人数教えてくれたらその人たちの分給金渡すからね。」
日本助「そんなのよろしいのですか?」
信輝「ああ、だから頑張ってね。とりあえず水軍増やすのをお願い。」
日本助「畏まりました。新しく増えた者たちにも給金を頂けると?」
信輝「そうだよ。後、将になれそうな者がいたら俺が会うからまた教えて。」
日本助「ありがとうございます!畏まりました!」
信輝「じゃあ、船大工が来たらまた呼ぶよ。」
日本助「ハッ。」
造船所を後にし、直江津の方に向かった。




