第五章 97話 三家老家と軍編成
1554年7月15日続き
今川が?西へ?
西?上洛?
今川も連合で、斉藤がこちらを引き付けているうちにってことか?
いや、それ意味ないだろ。同時に甲斐に攻め込んでくるならわかるけど。
いや、意味あるか?今川が西へ行くために大峰と武田を斉藤が引き付ける。
今川が何をしに西へ?
連合軍に参加?それならそんな兵いるか?
いや、わからん。
信輝「采女、どういうことだ?」
采女「はい、おそらく武田様がこちらにお越し下さったからかと。」
信輝「駿河を攻められる心配がなくなったからってことか?斉藤勢が晴信殿を誘き出したってことか?」
采女「いえ、それはないと思われます。斉藤勢が攻めて来たのは木曽義康殿が内通したからの他に理由はないでしょう。今回は本気で信濃を攻めに来ていました。結果として、我ら大峰と武田様の目がこちらに引き付けられたので、それを見た今川義元殿が動いたのかと。」
信輝「じゃあ、今川と斉藤は?」
采女「関係ないでしょう。斉藤勢が退いたのも、大将の長井殿が撃たれたことや、武田軍が援軍に来て下さったのもありますが、斉藤道三殿から撤退の命を伝令が伝えに来たことも理由としてあるようです。」
信輝「なぜ撤退を?」
采女「今川勢が西に動き出したからでしょう。」
信輝「じゃあ、今川義元殿は西へ行く目的はなんと?」
采女「逆賊を討つ、です。」
信輝「ということは単独か。斉藤家との使者の往復は何だったんだ?」
采女「はい、ようやくわかったのは、どうやら斉藤家を通して細川晴元殿から味方に付くようにとの使者だったようですが、何度も断ったみたいです。」
信輝「じゃあ、斉藤家と今川家の戦になるな。その二家の間の尾張は?」
采女「まだわかりません。」
信輝「そうか。やはり義元殿は自分が将軍になりたいのか?」
采女「周りの家臣にはそう言っているようです。」
晴信「先を越されたか!義信、我らも戻って駿河に攻め込むぞ。真の源氏の嫡流は我ら新羅三郎義光様の甲斐源氏武田家だ!今川などは傍流の傍流よ。」
あーやっぱりそうなっちゃいます?
義輝様のことはまだばれていないみたいだね。
そして、俺ら大峰のことも。
足利家も傍流だと思ってそうな言い方だよね。
足利家もややこしかったけど、源氏ももっとややこしいい。
よーし、黙っておこう。
信輝「晴信殿、本当にありがとうございました。我らも援軍に。」
晴信「よいよい。主力が西へ向かったのじゃ。どうやら武田だけで充分そうじゃ。また会おうぞ。武衛殿、見を頼むぞ。早く孫を見せてくれい。ではな。行くぞ!」
義信「信輝殿、またゆっくり会えたらいいな。それと、潤は息災じゃ。暮れには子が生まれるぞ。また会おう!」
そう言って二人に連れられて武田軍は東に去って行った。
助かりました。ありがとうございました。
晴信殿、見はまだ9歳です。
義信殿、やること早いな。あれからまだ一年も経ってないのに。
見はまだだとしても、春とは考えないとな。北条との関係もあるし。
そして残った俺たち。
播磨「義昌殿、危ないところを助けて頂き忝い。ありがとうございました。」
義昌「いえ、こちらこそ父が最後までご迷惑をおかけして申し訳ございません。武衛様、この度は申し訳ございませんでした。」
信輝「いや、義昌殿、弟を助けて頂き本当にありがとうございました。木曽領はそのまま義昌殿が継いでください。」
義昌「その件なのですが、こうなってしまった以上、何もなかったことにはできません。木曽は大峰家に差し上げます。代わりと言ってはなんなのですが、私も六神隊に入れて頂くことはできませんでしょうか。」
信輝「そんな代々の地をいいのですか?」
義昌「はい、いいのです。大峰家のために働かせて下され。」
信輝「そうですか。わかりました。では、そうさせて頂きましょう。」
義昌「六神隊の方は…。」
信輝「六神隊は一通り訓練を受けて頂いた後でしたらいいですよ。どこに入ってもらうか。」
播磨「是非、白虎に!」
信輝「お、おう。そうだな。じゃあ白虎に。播磨が大きな声出すの珍しいな。」
播磨「命の恩人ですから。義昌殿宜しくお願い致します。」
義昌「こちらこそ宜しくお願い致します。ありがとうございます。」
信輝「じゃあ播磨、色々教えてあげてくれ。義昌殿の屋敷も本丸に建てよう。」
播磨「ハッ。宜しくお願い致します。」
信輝「では帰るか。」
とりあえず、木曽福島城には小笠原佐八郎叔父に入ってもらって、俺たちは帰途についた。
松本城で一泊し、内膳叔父と別れ、大峰に帰ることにした。
武田の援軍にはとりあえず行かないことになった。
伊勢叔父と笠原弥九郎叔父、大井勘十郎叔父には、一応そのまま龍岡城で待機してもらうことにした。
松本城から大峰城への帰り道。
信輝「論功行賞は帰ってからしようか。」
肥後「そうだな。今回俺らは特に何もしてないけど。」
陸奥「六神隊結構うまく機能してよかったんじゃない?」
信輝「そうだね。まあよかったでしょう。」
備前「他の隊が活躍できれば、我ら三家老家は後でいいですからね。」
肥後「そうだな。」
陸奥「まあ今回全員参加させてないしな。肥後の家臣も俺の家臣も連れてってないし。播磨の尼子家臣も、越前の長尾家臣も連れてってないじゃん。この辺も次の出陣までにはどうするか考えないとな。」
肥後「そうだな。できればもっと広いところで戦いたいよな。川中島の時みたいに。」
信輝「そうだね。六神隊の編成考えてもっと大きくしないとな。」
備前「兵たちも多くしないとですね。斉藤家の一万や、今川家も三万五千くらい動かしているわけですし。」
信輝「うん、でも数だけ増やしてもと思っちゃうんだよね。」
肥後「そうだよな。大峰兵の基準で数を増やすことができたら一番だよな。」
陸奥「けど、やっぱり数も必要だよ。」
信輝「そうだよな。募兵と練兵に力入れるか。財政はかなり余裕あるし。」
備前「そうですね。数を増やしましょう。」
肥後「俺らの家の兵も増やすかね。うちだけでも一つの軍になれるように。佐々、福島、大久保いるから将はいるし。」
陸奥「じゃあうちもそうしようかな。うちも村上、藤吉郎、彦右衛門いるからな。次からは連れていくことにしよう。俺らも何か名前つけるか。」
備前「いいですね。室賀家もそうします。殿のお役に立てるように。名前も考えましょう。」
肥後「そうだな。別に家の名前でいいと思ってたけど、六神隊見てたら名前あった方がわかりやすいもんな。だから、名前とあとは旗の色といるな。」
信輝「じゃあ任せるよ。他と被らないようにわかりやすくしてくれれば。」
陸奥「了解。」
信輝「とりあえず帰って軍の編成だな。六神隊って言いなれて来たけど、九隊になるのか。」
大峰に帰り、論功行賞を行った。六神隊はそれぞれ武功を認め、俺から感状を出した。領地とかはいずれの話だ。
皆は、感状よりも、戦に勝ったことと、また皆でそろって俺の屋敷の松の間で宴会をやったことの方に満足したようだ。
ありがたい。これからも頼りになる。
明日からは、また軍の編成に力を入れよう。
父上からの当主の引継ぎもしなくてはならないため、かなり忙しくなりそうだ。
今川軍と、武田軍がどうなるかも追わないと。
京と連合の情報も集めないと。




