呼び方
翌日、予定通り和希君と大木先輩が迎えに来てくれて、私は実家に帰った。
実家に帰ってから一息ついて、初めて和希君に電話をした。
「もしもし、吾妻です」
何となく照れ臭い。
改めて、電話で話すのが初めてだと気が付いた。
「無事に着いたんだね、良かった」
そこからの話の流れはスムーズだった。
いつ帰ってくるのか、実家で何をするのか聞かれてアルバイトしながら
1週間後に帰る事。実家での友達とご飯を食べに行く事など他愛もない話しだ。
「実家に帰っても楽しそうだね。俺は寂しいのに」
和希君がそんなことを言ってくれた。
「大木先輩だっているじゃないですか」
ちょっとドキッとしながら言うと
「やっぱり、吾妻いないと寂しいよ。っていうか、吾妻っていうのもあれだね、
なんて呼ばれたい?」
「え・・・?」
呼び方なんて考えた事もなかった。
「吾妻って下の名前なんていうの?大木も吾妻しか言わないし」
「あ、そうでしたね。改めて自己紹介しますね。私は吾妻 歩です。そんな
三浦さんの名前は?」
「俺は和希、そっか、歩ていうんだ。じゃ『あゆみちゃん』で」
「いいですよ、私は何て呼べばいいですか?周りからなんて呼ばれてるんですか?」
「あー・・・、『かず』とか?」
「うーん、『かずきさん』でどうですか?」
「えー、さんよりは君の方がいいな」
「じゃぁ、かずき君で」
「いいね!」
この日から、私たち二人の呼び方が変わった。




