挨拶
美味しいものを食べた翌日、和希君の車で実家に送ってもらうことになっていた。
実家に近づくについれて、少し緊張気味なのか、言葉数が少ない。
「大丈夫?」
何となく、一緒にいるこっちまで緊張してくる。
というのも、本当にとりあえずうちの両親に挨拶をしたいと言っているのだ。
一応、昨日実家に連絡をした時にそれとなく両親には伝えた。
両親曰く
「なら、お酒でも買って待ってるわ」
との返事。急きょ、1泊うちに和希君が泊まる事になった。
私の親はどちらも放任主義。
大学に行くことに関しては『4年で卒業する事。あとは遊ぶこと。今しか遊ぶことが
出来ないから学生時代にたくさん遊べ』と私に言ったくらい。
なので、彼氏を連れていく事に関しても別に何とも思っていない様子。
まぁ、結婚を前提にってところで何ていうかな?とは思うけれど。
「・・・緊張する」
ちょっと声が上ずっている。
「大丈夫よ、うちの両親、変な人たちだけど和希君は内の親に好かれると思う」
「好かれなきゃ困るけど・・・、緊張はするさ」
まぁ、こればかりは仕方がないと思う。その緊張が少しうれしいのと、ちゃんと私との将来を考えてくれていると思えることもうれしくて、ちょっとニヤけてしまう。
「俺が緊張しているの面白がってる?」
ちょっと拗ねた感じで言う和希君が無性に愛おしく感じた。
「面白がってはいないけど、可愛いな、とは思った」
和希君の左手をギュッと握る。
「大丈夫」
もう一度、和希君に言った。
「三浦和希です」
家に着き、自己紹介から始まった挨拶。
緊張が私にも伝わってきていたが、うちの親たちは彼氏が来たことに対して大喜び。
挨拶もそこそこに宴会が始まってしまった。
「和希君、本当にうちの娘と付き合ってるの?こんなんで大丈夫?」
「ちょっとお父さん、こんなんって何よ!」
ビールを飲み、少し饒舌になったお父さんが和希君に絡んでる。
「十分に素敵な女性ですよ。ずっと一緒にいて楽しいですし」
笑って和希君が返事をしてくれる。
「本当に?結構世間知らずだからさ。困ったこと言ったりやったりしたら怒ってね」
「大丈夫だって、ねぇ」
和希くんに同意を求める。
「まあ、天然なところもありますけどね」
和希くんがやっぱり笑いながら言う。
でしょ?とお父さんも笑いながら返事をするもんだから、からかわれてる私は少し拗ねてみた。
そんな私の顔を見て、二人はやっぱり笑ってる。まぁ、和希くんの緊張が抜けたようで良かった。
ちょっと安心した気持ちになったとき、和希くんが急に座り直してお父さんとお母さんに言ったのだ。
「結婚を前提にお付き合いをさせていただいています。お許しください」




