嫉妬とサプライズ
千佳さんの形相をみると、食事が一気に食べれなくなった。
「たべないのか?」
和希君は私が食べようとしないので聞いてきた。
「うん・・・、お腹いっぱいになった」
愛想笑いをしてみる。変な顔をしていたのだろう。
「どうした?」
少し首をかしげながら聞かれる。
「千佳さんが睨まれた・・・」
小声で言う。和希君が振り返ろうとするのを止めた。
「そんなあからさまに振り返らないでよ」
また、何か告げ口したように見られて睨まれるのは嫌だ。
「あ、ごめん」
まして、今はまた周りの友人たちと話をしているのでこちらを見ていない。
「榊が抱き着いたのも良くなかったんだろうな」
そう言いながら、さり気なく私の隣に座った。
和希君も言うが、多分それが一番かとも思う。
千佳さんからすれば、千佳さんの好きな人2人が私の周りにいたわけで。
そして、その人たちが私をオモチャにして楽しそうにしていたもんだから、面白くないんだと思う。
気持ちはわかるんだけどさ・・・。きれいな人ににらまれると本当に怖いわけですよ。
背筋がゾクゾクっとするような。
「大丈夫か?」
ヘラッと笑ってみたけど、大丈夫ではない。
けど、榊さんのサプライズも見たいし、ここは我慢。
「頑張る」
「多分、もうそろそろだろうから。それ見たら帰ろう」
私の手を握ってくれて励ましてくれる。
頷いた時、誕生日ケーキが登場した。
周りからはすごい歓声があがる。
「これからだな」
和希君が耳元でささやいた。
頷いて、ケーキのほうに注目する。
千佳さんと榊さんが出て来て、榊さんがマイクを持ち話し出した。
「今日は、千佳の為にあつまってくれてありがとうございます。
大学最後の誕生日である今日に、こうやってみんなが集まってくれたこと、
千佳はとても幸せな人間だと思っています。
そして、そんな千佳の側にいれる俺も幸せな人間だと思います。」
そういうと囃し立てる声があちこちからする。
千佳さんも照れたような顔をしながらも、まっすぐ榊さんの方を見ている。
「で、こんなに幸せならこれからもずっと幸せでありたいと思い・・・」
榊さんがズボンのポケットから指輪を取り出して片膝をついた。
「千佳、俺と結婚して下さい」
一気に静かになり、千佳さんをみんなが見ている。
千佳さんは、目を大きく見開き状況が呑み込めない顔をしているが、
「・・・いや、かな?・・・」
榊さんが千佳さんを見上げる感じで尋ねると、大粒の涙を流しながら首を振った。
そして、床に座り榊さんに抱きついた。
大歓声があがる。
榊さんがゆっくり千佳さんの腕をほどき、左薬指に指輪をはめた。
「キッス、キッス」
どこからともなく、歓声に合わせてコールが上がる。
榊さんは、まだ泣いている千佳さんのほっぺにキスをした。
「・・・よかったね」
見ている私も幸せな気持ちになりちょっと泣きそうになる。
そして、これで和希君に対する気持ちも変わるだろうと安心する。
「あゆみ・・・、俺らも結婚する?」
和希君がささやいた。
「へ?」
ビックリして和希君の顔を見た。
「せめて、婚約。だって、俺は来年ここに居ない。どう頑張ってもここで就職することはない。
ってことは、これから遠距離になるんだよね、俺らは。だったら、せめて婚約しておきたい。
もし、本当にもしだけど俺、あゆみと結婚できなかったら一生婚約しなかった事後悔すると
思うから。俺は、一生あゆみと一緒に居たいと思っているから。今答えなくてもいいよ。
けど、俺がそう思っている事だけは覚えておいて」
周囲が榊さんと千佳さんに歓声を上げているときに、和希君は手のつないでいる私の左手の薬指に
キスをした。




