嫉妬5
千佳さんの誕生会当日。
場所はカラオケボックスのパーティールーム。
料理も並んでおり、ビュッフェスタイルになっている。
けれど、周りは先輩だらけ。圧倒されるやら、居心地が悪いやらという感じ。
やっぱり来なければよかった、とひそかに思ってしまう。
「あゆみ、何食べる?」
私の気持ちが分かっているのか、ずっと和希君は私の側にいてくれる。
誰かに呼ばれても、私を一人にしないようにしてくれている。
「なんでもいいけど、先にプレゼント渡しちゃおうよ」
何を買っていいのかわからなかったので、ペアーのスープカップにした。
マグカップとも思ったが、可愛いスープカップを見つけてしまったのだ。
気に入ってしまい、私と和希君の分も買ってしまった。
「千佳なら、あそこにいるから渡しちゃおうっか」
榊さんと一緒にいる千佳さんを和希君は素早く見つけた。
「おめでとうございます」
千佳さんにそう言ってプレゼントを渡す。
「来てくれただけでいいのに。ありがとう」
そう言ってくれるが、目は和希君を見ている。
「あゆみちゃん、ありがとう。料理いっぱいあるから食べてね」
榊さんが私に声を掛けてくれる。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、和希君も
「じゃ、食べてくるか」
とさり気なく私の肩に手を置いて歩きだした。
「?よかったの?千佳さんと話してなくない?」
「うん、いいわ。・・・あゆみの言っていた事わかった。
自惚れではにけど、確かに俺に対する目は友達とはちょっと違う感じがした」
料理を取りながら、和希君が言い出した。
「わかってくれた?」
「うん。あゆみを不安にさせたくもないし、榊に対しても変に申し訳ない気持ちになる」
和希君のせいではないにしても、なんとなくその気持ちはわかる気がする。
「まぁ、取り合えず今は食べよ。美味しそうだし」
空いている席を探して食事をし始める。
ピザやチャーハン等和洋折衷のオードブルはどれもおいしい。
「美味しい?」
榊さんが隣に座りに来た。
「千佳は?」
和希君が聞くと、千佳さんの周りには女性が数人いるのが見えた。
「さすがに、あの中にいれない」
苦笑しながら千佳さんの姿を優しい目で見ている。
「榊さんって、本当に千佳さんの事好きなんですね?」
思わず言ってしまった。
「え?なんで?」
ちょっと照れた顔になっている。
「千佳さんを見る目がとてもやさしいな、と思って。それだけ想われている千佳さんって
幸せだし羨ましいなと思って」
「そう?そんな風に見える?それは嬉しいね。千佳はため込んじゃうタイプだから
何とかして守りたい、ため込まないようにしたいって思うんだけど、裏目に出ることも多いんだよね」
そして、少し苦笑いをしながら榊さんは続けた。
「けどさ、あゆみちゃん。俺から見ると三浦だって、あゆみちゃんに対する目は
十分に優しいと思うよ。和希の場合、顔つきまで違ってるもの」
「え、いや・・・」
思わず否定的な言葉を出してしまう。
「本当だよ。三浦がこんなに柔らかい顔するの、俺初めて見たし、あゆみちゃんと一緒の時以外で
みたことない。だから、この前はじめてあゆみちゃんと三浦見た時に紹介されなくても
あゆみちゃんの存在が三浦にとってどれだけ大きいかわかったんだよ」
優しい笑顔で榊さんに語られてしまった。
恥ずかしくなり、顔が赤くなるのが分かる。
「きっと、周りの人はあゆみちゃんが羨ましいと思うよ。三浦がこんな顔するんだもん」
続けて言われる。
「千佳の事、羨ましい?俺の愛情じゃ足りない?」
和希君も聞いてきた。
「十分、足りてます。ごめんなさい」
和希君から愛されているのは十分分かっているけど、他人から言われると本当に照れるし
けど、物凄くうれしい。
頭をポンポンされながら
「あゆみちゃんはかわいいね、素直だね」
と榊さんがすると
「気安く俺のあゆみを触るな」
と向かいで和希君が怒り出す。
それを見た榊さんが面白がって、横から私に抱き着いた。
「キャッ」
ビックリして小さく悲鳴を上げてしまった。
「さかきー!!」
和希君も慌てて榊さんの反対横に来て私を引っ張る。
「ほらね、あゆみちゃんは愛されてるよ」
榊さんは笑って私から離れた。
「シッシッ。あっちいけ。千佳のところに行け」
犬を追い払うようにして和希君は榊さんに言い、榊さんも笑いながら席を離れた。
「あゆみ、隙を作っちゃいかん」
軽くお説教のような言い方をされる。
「え、私が悪いの?」
「そもそも俺の愛情を疑ったのが悪い。だから、こうなったんだ」
と和希君に言われると、言い返す言葉が見つからない。
「ごめんなさい」
「わかればよろしい。ま、食べよ」
和希君が笑って向かいの席に戻る。
何気なく顔をあげると、遠くで物凄い形相の千佳さんの顔があった。




