嫉妬4
榊さんと千佳さん、大木先輩も帰って二人になったのは
もう夕食時刻になるときだった。
「どっか、食べに行こうか?免許のお祝いもかねて」
和希君に言われて、今日、免許取った事をすっかり忘れていた。
部屋でご飯を食べることが多いので外食は珍しい。
「行きたい」
素直に言った。
その時にどうやって榊さんと千佳さんが元通りになったのかも聞こう。
「お好きなのどーぞ」
連れてきてもらったのは小さい町ながらも夜景が見える小さなレストラン。
田舎のレストランなので、和食から洋食まで幅広くメニューはあるが、
味の評判はいいお店だ。
私はクリームパスタを、和希君はオムライスを注文した。
「改めて、今日はごめん」
テーブルに付くほど、和希君が頭を下げた。
「ほんとだよ。私、今日は何も悪くない」
ちょっと怒って言ってみる。
「そうです。俺が今日は全部悪い。ほんとごめん」
もう一度謝ってくれる。
「わかってくれるならいい。で、今日は何があったか最初から説明してくれる?」
今日の事は、何が何だかわからないことだらけだ。
「あゆみを試験場に送って戻ってきたら、部屋の前で千佳が座って待ってたんだ。
で、どうしたのか聞くといきなり泣き出して。
試験もいつ終わるかわからないし、取り敢えず部屋で話聞くことにしたんだ。
30分以上は泣き続けてて、どうしていいかわからなくて」
「大木先輩とか呼びに行こうと思わなかったの?」
そしたら二人きりなんてならないのに。
「思ったさ、で大木呼びに行こうとしたら千佳に拒否られたんだよ」
あー、大木先輩が邪魔だもんね、千佳さんにとっては・・・。
「で、話を聞くと何度か同じ女と一緒にいた榊を見たと言うんだ。
今日も車の助手席に乗っているのを見たって言って、榊に何も聞かずに家を飛び出してきた
っているのが事の発端」
「助手席に乗っていたのは嫌だね。その気持ちはわかるな」
「まぁな、で、あゆみが飲物買いに行っている間に真相がわかったんだけど。
助手席にいたのは千佳の親友だったんだ。
で、もうすぐ千佳の誕生日だからサプライズパーティーをしようと企画していたらしいんだけど
その話をしていたのを千佳が勘違いしたらしい。
してだ、ここからは千佳は知らないんだけれど、そのパーティーで榊はプロポーズをしようと思って
いるらしい。まぁ、もうサプライズパーティーではないんだけどさ」
すごい、羨ましい。
なんだろう、物凄く榊さんに愛されているのに和希君に色目を使うって、
千佳さんどういうつもりなの?
「けど、榊さんにとっても千佳さんにとっても残念だったね、サプライズにならなくて」
「まぁな、けど千佳には最後のサプライズがあるからいいんじゃね?」
和希君がそういった時に、料理が運ばれてきた。
「いただきます。そりゃぁ、そのサプライズは嬉しいだろうけどさ・・・」
「いただきます。・・・けど?」
榊さんのプロポーズを千佳さんは受けるのだろうか?
「・・・今日の千佳さん見てたら・・・」
「言いたい事あるならちゃんと言って」
和希君が私の顔を見ながら言う。
「うん・・・。千佳さん受けるのかなって、プロポーズを」
「そりゃぁ、受けるだろう。・・・っていうか受けないと思ってる?」
「・・・わかんない。ただ・・・。
今日の千佳さんの和希君への目が、私に対する目が榊さんだけを見ている目には見えなくて・・・」
「俺への目?」
「うん。多分だけど千佳さんは少なからず和希君の事好きだよ。その好きがどんなものかはわからない。
けど、私に対する視線は物凄い嫉妬している感じがした。だから、正直怖かった。
ほら、和希君私が買い物から戻った後ずっと、私の後ろにいてギュってしてくれてたでしょ?
あの時の目が凄かった」
「・・・あー、確かにあまり笑ってる目ではなかったもんな。
けど、だからって俺の事をどうこうとは思ってないと思うぞ?」
和希君はオムライスを食べながら言う。
「いいや、あれは違う。何も思っていないなら大木先輩にも聞いてもらいたいもの。
女って自分の不幸話をするの嫌いじゃないから。けど、拒否ったのは和希君と二人でいたいから
って理由しかないし、あの目つきは絶対に和希君になんらかの気持ちはある」
ハッキリと言うと、ちょっとびっくりしながら
「そうか?・・・」
と和希君は言った。
「そうなの!だから、できればあまり今後二人きりでは居てほしくない。
勿論、これから卒論だったり色々集まる事もある事はちゃんと理解しているよ。
だからその言う場面もあるかもしれないのも理解している。けど、出来るなら避けてくれると
嬉しいな・・・」
「わかった。まぁ、俺もあゆみが他の男と二人でいるのは面白くない」
話をするとちゃんと私の気持ちをわかってくれる。考えてくれる。
そうしてくれるから思う。和希君に心配かけるようなことはしないようにしよう、と。
「そうだ、その千佳さんのパーティーには和希君も行くの?」
「今回の事もあったし、あゆみも一緒にって呼ばれたよ」
「え?私も・・・?いや、私は遠慮したい・・・」
またあの視線に晒されるのはいやだ・・・。
「プロポーズ、見たくない?」
和希君がニヤッとしながら言った。
確かに人のサプライズプロポーズは見てみたい。けど・・・。
さすがに即答できないでいると
「俺とずっと一緒にいよ。大木もくるから3人でいれば視線も気にならないんじゃない?」
再度、言われると、確かにとも思う。
「・・・わかった」
パーティーに参加することにした。




