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甘い時間  作者: 古賀荒 にきよ
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プロローグ

忘れられない。

私が、彼と出会ったのは大学の部活の先輩たちの紹介。


先輩たちと一緒に遊ぶ時に彼がいた記憶はない。

私の大学は、田舎にあったため90%は親元を離れて生活をしている学生ばかり。

そんな中、女子が少なかったもあり、男性先輩が女子後輩をかわいがるのは普通の事。

私も先輩たちから可愛がられ、一緒にドライブに行ったり遊びに連れて行ってもらっていた。


ただ、私たちはそのあと、何故か二人とも忘れられない出会い方をもう一度する。


それは、私が大学2年の時。

1年間は下宿で生活したいた私は2年になるときに一人暮らしを始めた。

もともと、下宿の契約も1年間だったため親も休みの日に引っ越しの手伝いに来てくれていた。


昼食を外で食べようという話になり、父の車に乗り込んだ。

いつも通る道。

部活の先輩の大木さんのアパートの前を通りかかった時に、

部活の大木先輩と彼、三浦和希がアパートの前にいた。


ただ、通り過ぎただけ。

けど、目があった、そんな気がした。

そのあとの引っ越しは、ずっと彼の事が気になって仕方がなかった。


夕方、先輩から携帯に電話があった。

「吾妻、お前もうこっちに戻ってきてるの?一緒に遊ばないか?」

親も引っ越しが終わったら一度ホテルに戻り明日、帰ると言う。

「夕食は親と食べるので、そのあとなら大丈夫」

そう、返事をして先輩のところに7時頃に行く約束をした。



7時に先輩の部屋に行くと、和希くんは大木先輩の部屋で普通にくつろいでいた。

「よく、大木先輩私が戻ってきたこと知ってましたね?」

「いや、三浦が『あの車に吾妻が絶対に乗っていた。遊ぶのに声掛けよう』って言って。

俺はわからなかったけど」

目が合ったように思ったのは間違いじゃなかった。


「よく気が付きましたね」

先輩から紹介されたことがあるとはいえ、実は話したことはない和希君と初めて話したのはこの時だった。

「うん、見えたんだよね、絶対、吾妻さんだってわかったんだよね」

思い返しても、本当に不思議な事だった。

和希君は、大木先輩の隣のアパートに引っ越してきて毎日遊んでいたらしい。


たぶん、以前に会ったのは1回だけ。

彼の中では私の同期の部活の子たちもいたから、大勢の中の1人だったはずの私。

後から、大木先輩と同期の飯岡先輩がかわいがっている後輩、の記憶はあったそうだが、

やはり大きな印象はなかったそうだ。

だから、名前を憶えていたのも不思議だったと言っていた。



その日から、毎日和希君と大木先輩と遊んだ。

ドライブに行ったり、ご飯食べたり、テレビゲームしたり。


遊ぶのは何でもよかった。

ただ、お互い一緒にいたかっただけ。

お互いの気持ちが直ぐになんとなく分かっていた。

けど、大木先輩が邪魔だとも思わなかったし、一緒にいれればよかった。


ただ、本当にその瞬間は普通に訪れていた。

ある日、大木先輩がシャワーを浴びているから、その間和希君の部屋で

二人で待つことになった。

「男の部屋に簡単に入っちゃだめだよ」

笑いながら和希君が言いだした。

男性が多い学校。男の部屋に女が一人で入る事も、

男ばかりの中に女が一人でいることも、普通で。

なので、付き合い始める人も多く、同棲率も高かったが、

レイプ事件等のようなこと起きたことは私が知っている限りではない。


「三浦先輩が私を襲うわけないじゃないですか。信用していますもん」

笑いながら答えた。

「信用されちゃうの?あまり、信用しなくていいよ」

「何かあったら、大声出せますし。隣には大木先輩いるし」

「大声上げちゃうの?あげなくていいよ。・・・、そんな玄関前だと寒いしょ?こっちおいで」

部屋と言っても8畳ほどの部屋。

そんなに部屋の温度は変わらないが、玄関近くにいた私はもう少し部屋の中に入った。


「キスする?」

突然、和希君が聞いてきた。

「え?は・・・?」

「いや?」

「嫌じゃない・・・です」

和生君と私は、初めてキスをした。



大木先輩が来たのはその10分後。

いつも通り、3人で遊んだけれど和希君と目が合うと、照れ臭かった。








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