特別編:君が見えた。あいつがいた。
路地の中にある電灯がついている公園。
虫が鳴く声、風の音、車などの人工的な音が夕方まで聞こえてくる。
そして夜になると公園にいつもの静寂が訪れる...。はず。
だが今日は掛け声が聞こえる。
海影の声だ。
顧問が入院してから、ここの公園にきて
ボールのトス練習に励んでいる。
「1,2,3.....4...」
海影が、率先的にしている練習がある。
手で連続してボールをトスする。
決して落ちないようにするには
バランスや、ポジション取りをすることが大切だ。
意味がある練習をみっちりとしているようだ。
人通りが少ない公園の前の道から、自転車の音がした。
自転車を漕ぎながら、思う。
(おっ。 なんだ? バレーの掛け声が聞こえるぞ)
(しかも、どこかで聞いたような声....)
公園を覗いてみる山崎。
そこには、あいつがいた。
「あ、あれ?? 海影じゃん。 今日も部活あったのに今も自主で練習してるのか」
いきなり喋りかけられて、戸惑う彼女...。
どうやら、久しぶりに話すから少し緊張したらしい。
「あっ!! 山崎君...! なんでこんな所にいるの?」
「俺はこの近くに住んでいるんだ」
「それよりも、練習手伝ってやろうか? 経験長いから、アドバイスできる所はしてやるぞ」
まさかまさか、彼も部活で忙しいのに
私のために手伝ってくれるのかと、とても大切にしてくれてる気がしたし
とっても嬉しかった.......。
「ありがとう...!」
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「ここは、もっと力強く.....」
「今、キッチリとスパイクを決めるんだ。」
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少し休憩をすることにした。
久しぶりということもあり、会話が弾む。
「海影は、ここの近くのどこに住んでいるんだ?」
「うーん、とね。私はあの向こうに見える25号棟の所だよ。ところで山崎君はどこなの??」
「えっとな、俺はその逆の20号棟だね」
「え!!。じゃあ向かいじゃん!」
「ベランダから見えるよ!もしかしたら!!」
「それは、すごいな....笑」
久しぶりに会えて嬉しいのか、海影は、とっても幸せそうに笑っていた。
夜の公園が、賑やかになった。
「よしっ!海影!!」
「練習はじめるか!」
「わかった。もう一息頑張る!」
2人は、練習に打ち込んだ。
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真夜中になり練習が終わった。
お互い集中しすぎた為か、もう10時を回っていた。
好きな人といると時間が短く感じるのだろうな。
確実に彼の言葉は海影にとって安心に変わったはずだ。
教えてもらったから、あとは実践するだけだ。これでもっと上を目指せる、と。
「じゃあな!海影!」
「山崎君、今日はありがとう!!本当に助かったよ!」
「また、練習を覗いてみるよ!過酷なこともあると思うけど、頑張って!!」
「ありがとう。じゃあね」
赤面しながら2人が逆の方向に進む。
これぞ、お互いの恋の芽生えともいうのか。
「何もわからなくても助けてくれて、本当に君は優しいね。」
海影が、小さな声で言った。
公園が、いつもの静寂に戻った。




