うつしみ。
ふと、とても悲しそうな顔に見えた。
一昔前に流行ったゲームに出てくるネコを模したぬいぐるみのそいつは、私が数年前にゲームセンターでお札を一枚ほど使って獲得したものだった。
仕事に疲れて帰宅して、スーツを脱ぎ捨て一息つくと、部屋の隅っこに放置されたそのぬいぐるみが目に入った。
子供の落書きのような目や口、眉毛なんかが縫い付けられているその頭でっかちなぬいぐるみが私を見ていた。
ふと、私はそのぬいぐるみを手に取る。顔をよく、みた。私の顔と同じくらいの大きさの顔。それが何故か急に愛しくなり、そのぬいぐるみを強く抱きしめる。少し、埃のようなにおいがした。
大きなため息をつき、私はぬいぐるみを持ったままソファへと座った。適当にテレビをつけ、ボーっと画面を眺めていた。その間も私はずっとぬいぐるみを抱き続けていた。なんだか子供の頃に戻った気がした。すると急に体の力が抜けて涙がでてきた。何に対する思いがあるわけでもなく、急に悲しくなり涙を流した。
涙は止まることなく私の目からどんどん流れてくる。
涙が止まると私は洗面台に行って顔を洗った。明日も仕事だ。同じような毎日の繰り返し。床について、洗面器から顔を上げた時の自分の顔を思い出した。
悲しそうな顔をしているのは自分じゃないか。