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生きるということ
―みんなが、生きているって実感するときってどんな時だろう……。学校に行ってる時?ご飯を食べているとき?カラオケとか行って大声出した時?恋してるとき?好きな事して充実してるときかな―
少女はふと、浴槽の中でそう思った。
―私はね、今だよ。ほら、生きてる―
少女は剃刀を自分の手首に押し当てた。少しずつ力を入れていくと、鋭利な刃先が少女の手首に食い込み、薄い皮膚を破り細い腕に傷を一つ増やした。
―あー、綺麗な赤だなぁ―
ぼんやりとした目で少女はそう呟いた。
少女の手首から流れだす液体で、浴槽の湯はだんだんと侵されていく。
その色の濃さに比例して少女の意識は遠くなっていった。
蛇口からとめどなく流れ出す水の音、それだけが少女の耳に残る。