表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/22

一本の街灯

 ちょっと家の外に出てみた。

 夜中の12時を回った時の事。

 眠れない夜があると、わたしはこうして外に出て周辺の地域を歩いてみる。なんだっけ、ナイトハイク。ってやつ?

 上は半袖のTシャツ。下はジャージを履いて、この季節にはちょっと厳しい格好で外に出てみた。それで、徐々に下がってゆく体温や、肺に入る冷たく冷えきった空気に何故か喜びを感じるのよ。

 わたしの住んでいる所はなかなかの田舎で、車通りは微かにあるけれど、ひとたび住宅街の路地に入ればこの時間は人っ気がなくなっちゃう。

 特に何も考えずにトボトボ歩いていると、いつも通学に自転車で通っている道も少し違って見えるの。

 真っ暗な中でも電気を光らせ、中からは何か音のする自動販売機。私はよくオレンジジュースを買う。普段、何気なく使っている使っている機械でも、こんな時間に見るとなんだか違って見えるから不思議ね。

 更に歩いて小さな川に架かる橋の上に来てみた。いつも沢山の車が通過し、タイヤやエンジンの音がうるさいけれど、さすがにこんな時間。誰も通らず、川の流れる水がチョロチョロ音をさせるだけ。私は近くに落ちていた小石を拾って川に投げてみた。

 トプン。とか、ポチャン。とか、そんな音が一回だけして川はまた同じ音で流れ続けた。なんだかその音が心に染みる。

 何故だか急にそれが可笑しくなって、私はふふっと声を出して軽く笑ってしまった。

 川を後にしたとき、大きな欠伸が出たの。もう眠くなってきたのかな?歩きながら自然と呼吸が浅くなってきた証拠ね。

 欠伸をすると、たくさんの空気を吸い込んだ。

 冷たい空気が私の肺を満たし、少しばかり眠気が覚めた気がした。


 ……そろそろ帰ろっか。


 そう思った私は、来た道を戻るのじゃなくて、新しい何かが発見できることを期待して、別の道を通って帰ることにした。ふと、横目で何気なく細い路地を見ると、真っ暗な中、一人、寂しそうに消えかけそうな街頭を見つけて数秒ほど目を奪われる、そして心のどこかで普段の私と重ねてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ