1/22
涙
僕は二、三日前に涙を流した。しかし、なぜ涙を流したかを覚えていない。
涙を流した理由を僕は覚えていないのだ。
悲しかった覚えもないし、涙を流すほど笑った覚えもない。かといえばゴミがたくさん入って目を擦ったわけでもない。
何故だろう。僕が涙を流したのは。
目から涙を流すという行為は異物や感情からくる生理現象のはずなのに、それを見て感情が伝播するのは人間だけだろう。
誰かが泣いているのを見て可哀想にと思う。その誰かに優しくする誰かがいる。みんなみんな誰かと支え合って生きているのだ。
涙を流すにしても、笑えばその笑いを共有し合い、泣けば慰めてくれる。
そうか、僕には誰もいないんだった。一人ぼっちだ。だからあの時僕は泣いていたのか。
そう思うと、自然とまた涙が出てきた