竹取物語 (もうひとつの昔話19)
かぐや姫が月に帰ってから、またたくまに三年の月日が流れました。
そんなある日。
おじいさんはかわらず竹取りをしていました。
「おっ!」
一本の竹の根元が光り輝いています。
おじいさんはさっそく光る竹を切りました。
すると、かぐや姫のときと同じ、竹の中には背丈が三寸ほどの赤ん坊がいたのであります。
三年前。
五人の高貴な方たち、それに帝までもが、かぐや姫に熱を入れあげ、ありあまる金銀財宝を準備して求婚してくれました。
ところがです。
かぐや姫がつれなく袖に振ったので、おじいさんは金品をもらいそこねてしまいました。
――今度こそ……。
そう、今度こそは金品を手に入れようと、おじいさんは赤ん坊を屋敷に連れ帰りました。
「まあ、なんてあいらしいんでしょう」
月の者に知れたら、かぐや姫のように連れて行かれてしまいます。
おばあさんは家の中にかくまい、その子を大事に大事に育てたのでした。
その子はすくすくと育ち、かぐや姫に負けないほどに美しくなりました。
「いよいよじゃな」
「ええ、いよいよですね」
おばあさんはその子を美しい着物で着飾り、おじいさんは都の大通りを連れ歩きました。
「おう、なんという美しさ!」
みながその子に目をうばわれます。
やがて……。
その子の評判は都じゅうに知れ渡ることとなり、帝をはじめ、あまたの者からさっそく結婚の申し込みがありました。
おじいさんは求婚者に伝えました。
「貢ぎ物の一番多い者の嫁になりたい。娘は、こう申しておりますのじゃ」
さらには手付け金を要求したものですから、屋敷の倉は金銀財宝であふれました。
そうしたある日。
その子が庭で行水をしていましたところ、たまたま屋敷を訪れた者にのぞき見られてしまい、その子が男であったことが、またたくまに都じゅうに知れ渡ってしまいました。
いまさらご容赦願えることではありません。
おじいさんはたいそうこまってしまいました。
「ワシら、帝からひどいおとがめを受けるぞ。この子だけは、なんとか助けてやらねばな」
三人は山の奥深くへと逃げこみました。
それからは月の者や帝に見つからぬよう、山奥でひっそり忍び暮らしたのでした。
十年の月日が流れます。
老夫婦はこの世を去り、成長した男は山奥で竹取りをしながら暮らしていました。
この日。
男は竹取りをしていました。
「おっ!」
一本の竹の根元が光り輝いています。
竹の中にいるのは、はたして男の子なのか、それとも女の子なのか……。