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やさしき龍よ焔を吐け  作者: 有賀グランデ
3/3

闘いの後

第3章

ウォーサントが美伽鳥を静かに睨みつける

美伽鳥は背が高い180㎝はある。

だが猪人は身長が250㎝以上有りそうだ...

体重に至っては3倍近い

ウォーサントの口から白い呼気が溢れる

獰猛な目には殺意が爛々と光る

禍々しい光景だ。

つまりは美伽鳥は餌なのだ

ウォーサントが低く唸り声を上げた。

襲い掛かるタイミングを計っているようだ

豊かな胸がブルンブルンと揺れる


牝だ。



佗丹流が切り株に胡座をかき猪人と美伽鳥の対峙を見つめている。


美伽鳥も負けじと歌を唄う

「夏になったら森へ行きましょう

森に行って甘くて酸っぱい果物を

探しましょう♪

森に行ってサニーの実を探しましょう♪

口が寂しい時に慰めてくれる紅いサニーの実を探しましょう♪

精霊の森で会いました

精霊の森で会いました♪

寂しい時に会いました♪

泣き虫サニーに会いました♪

紅い実は森で独りで待ってるサニーでした♪

紅い実は森で独りで待ってるサニーでした♪

私はサニーと踊りました♪

思い出してサニー♪

森の黄昏紅いサニー♪

紅い実を食べて私は一人ぼっちになりました♪」



美伽鳥はジリジリと間合いを詰めていく。

ウォーサントの間合いと美伽鳥の間合いが見えない空間で接触した!

ウォーサントが右掌をゴゥオオオと打ち下ろす!

掌底がデカイ、グローブぐらいは有る。爪も人間の指くらいはある

美伽鳥がヒョイと避ける!

...呟く「颯よ我と共に在れ!」

美伽鳥の動きが軽く速くなる

速くなって目にも見えない程のスピードで腹部、胸部、顎と正拳突きを打ち込む!


佗丹流が独りつぶやく「動きが速くなったはいいがなあ さてこの体重差はいかんとするか?」


ウォーサントが三発、美伽鳥から打ち込まれたが意にも介さず左腕をグゥアアアと降り美伽鳥の身体掴もうとする

一瞬捕まった!っと見えたがウォーサントが掴んだのは美伽鳥の残像だった。

美伽鳥はウォーサントの左腕にしがみ付きその引き手の反動を利用してウォーサントの首筋、延髄に蹴りを入れる!

入った!入ったはいいが!いかにしても軽い。

それに体の流れが悪かった

ウォーサントに抱きかかえられる形に成り思い切り大木に投げ付けられた。

もんどり打って美伽鳥の身体が大木にバウンドして地面に転がって行く。

ウォーサントがこちらに向かって

ズシリ ズシリと歩いてくる

「あっ痛~ スピードじゃ負けないんだけど体重差が有りすぎよね

さあ 怪物め どうしてくれよう」

その瞳には闘争の炎が赤々と燃えている。

「斃す!」

美伽鳥が腕をついてサッと立ち上がる。

「流れ出る水よ美伽鳥の名の元に集え! 奔流よ在れ!」大きな水の流れがウォーサントに巻き付いて行く。水龍が体を震わせながらウォーサントを締め上げる!

ぎゅうううと締めかかるが太い腕で、その水龍の体を捻り切る!

ザッばーんと猪人は全身水に濡れてびしょびしょになった!

その刹那に「私の体に纏う静電気よ私に力を貸しておくれ!」

美伽鳥は両腕の手の平をウォーサントの腹に押し当て唱える!

ずぶ濡れの全身に電撃が奔りウォーサントがぶっ飛んで行った!


佗丹流が煙管を切り株の角でポンと打ち付けて灰を落とす...

新しい葉煙草を煙管に詰め込んで火を着ける。

すううと吸い込むと火口がボゥと

赤く点く。

煙りをふうううと細く吐き出す...


ウォーサントが飛ばされて行った所に美伽鳥が留目を刺しに行った...

猪人が倒れていて腹が黒々と焦げている。

意識はあるようだ...

必死に手足をバタつかせて、立ち上がろうとするが身体に力が入らないみたいだ。

更に近づくと何かが草むらから駆け出して来て猪人に覆い被さり庇う!

ウォーサントの子供だ。

それも二人。

一人はウォーサントの母にしがみつき、もう一人は美伽鳥に向かって威嚇をする...

二人とも茶色と黒色の斑模様が愛くるしい。


佗丹流が此方に歩いてきて美伽鳥に話かける

「子連れのウォーサントがなぁ

こんな所に現れるとは珍しいのう?

猪人のテリトリーはもっと森の深部じゃろうて...」

森の浅い所は人間も活動している

いわゆる里山だ。

森の深部で何が起きているのだろうか?


美伽鳥は後ろを振り返り佗丹流を一瞥し二人の猪人の兄弟に視線を移した。

精一杯、毛を逆立て小さい牙を剥き出して威嚇している。

猪人の子供と瞳が合った

彼の瞳は恐怖の為か涙が潤んでいた...

もう一人の猪人の子を見たらウォーサントの母のアタマを抱き

ながら泣いていた。

美伽鳥が自分の頭をガシガシかきむしり「あぁ もう仕方ないねぇ! さあ お袋さんと一緒にどこえなりと消えな! 命までは取らないよ」

言葉は通じないと思うがそう怒鳴ると佗丹流と共に森を出て行く。


疾風が舞った。


走りながら佗丹流が美伽鳥に尋ねる

「あの猪人の親子に情けをかけたな?」


美伽鳥は黙っている。

「.....。」


「あの猪人が人を襲ったらどうするつもりじゃ?」

「そしたらアタシが殺すさ」

美伽鳥が決然と言い放つ。

佗丹流が「フハハハハハ」と笑い声を上げる。

美伽鳥は更にスピードを上げて疾風に乗った。









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