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ニブンノイチX乗の半生

作者: おかよ
掲載日:2017/03/14

床に這いつくばりながら涙をこらえる私に、君が手を伸ばす。

だいじょうぶ?と君は笑う。

だいじょうぶ。そう答えて私は泣く。


またあいつにぶたれた。私は何度も立ち上がり、両手であいつを突き飛ばす。

あいつの頭に血が上る。走ってくるあいつを、君が足で引っかける。

あいつの上に乗り、今までのお返しをする。そこへ先生がやってきた。

二人掛かりなんてダメでしょう、と先生が怒る。ごめんなさい、と言う。

私と君だけが部屋に残る。

やっちゃったね、と君は笑う。

やってやったね、と私も笑う。


赤と黒を並べ、君と手を繋ぐ。私も君もスキップしてる。

教室に入るとあいつがからかってくる。私があいつを突き飛ばすと、あいつも私を突き飛ばす。

君が先生を呼んできて、私とあいつが怒られる。

勝てそうだったのに、と私は怒る。

ケンカはよくないよ、と君が笑う。


先生から紙をもらう。私のと比べて、君の紙にはたくさんの丸がある。

私はその紙をくしゃくしゃに丸める。先生は怒って、私は泣く。

先生に解放され、私は自分の席に戻る。隣には君がいる。

教えてあげるよ、と君が笑う。

遊ぶ方が楽しい、と私は怒る。


狭い体育館にみんなが集まる。泣いてる人もいる。

退屈さを感じる。名前を呼ばれても、みんなのように大きな声は出せない。

教室の隅で空を見上げる。君が人ゴミから抜けるのを待つ。

教室から人がいなくなる。君はようやく私の方に来る。

帰ろうか、と君は笑う。

遅すぎる、と私は怒る。


君が走ってボールを追う。私は遠巻きに君を見る。

君が一人になるのを待つ。しかし多くの人が、君といたがる。

待ちくたびれて私は先に帰る。帰り際、君と目が合う。

校門を出る。足音が聞こえて、振り返ると君がいる。

また明日、と君は笑う。

また明日、と私は言う。


先生から紙をもらう。自分の机でうなだれる。

隣の君が私の手元を覗き込む。私も君を覗き込み、君の紙と見比べる。一層うなだれる。

君は明るく将来を見据える。私には無理だと諦める。

教えてあげるよ、と君が強く言う。

しょうがないな、と私は不貞腐れる。

えらそうだなあ、と君は笑う。


動きやすい格好の君が校庭に向かう。それを私は笑って見送る。

重い足取りで図書室に入る。鈍い手つきで教科書を開く。

君の部屋で、ノートと私を繰り返し見る君を思い出す。自然と笑みがこぼれる。

外が暗くなり始めたことに気付く。時計を見て、集中していたことに気付く。

道具をしまって外へ出る。大きな水筒を飲む君がいる。

お疲れさま、と私は笑う。

そちらこそ、と君も笑う。


今日の君はいつもと違う。曖昧な返事ばかりする。

休み時間になると、君はすぐに教室を出て行く。それが何度か続く。

帰りの号令が鳴る。私は一足先に廊下で待つ。私の顔を見ると、君は観念する。

珍しく、会話が弾まない。君は何かを考えている。

私は強引に追求する。君は重い口を開く。彼女が出来た、と君は言う。

もう家には呼べない、と君は言う。

謝る必要ないでしょ、と私は笑う。


私は空き教室に入る。担任が座っている。

怒号が響く。私はうつむく。

次第に静かな口調になってゆく。私は謝罪を口にする。

しばらく補習に参加すれば、試験をサボったことは不問にしてくれるらしい。

頭を下げて教室を出る。遠巻きの君と目が合う。

私は背を向け走り出す。

足音は聞こえてこない。


帰りの号令が鳴る。教室は閑散としている。緩慢な動作で私も外に出る。

なんとなく、いつもとは逆の門から帰ることにする。

歩みを進める。少し遠くから、怒号が聴こえる。私が担任に受けたものとは種類が違う。

何の気なしにそこへ向かう。座り込んでいた一人の女子生徒がこちらを見る。つられて、その一人を囲む三人の女子生徒がこちらを見る。

三人が汚い言葉を発した直後、考えるより先に私の身体は動き出す。

私に突き飛ばされた三人のうち一人が金切り声で叫ぶ。他の二人が私の両腕を封じる。腹に鈍い痛みが生じる。

力任せに振り払い、その二人も突き飛ばす。どちらもうずくまって立てそうもない。

罵詈雑言を放つ一人に、私は迫る。ひとつお返しをしてやると、無様に涙を流す。

囲まれていた一人が、悲鳴を上げて走り去る。騒ぎを聞きつけたらしい担任が現れる。担任が大きな声を出す。

急に殴りかかってきた、と一人が言う。他の二人も同調する。

私は必死に弁明する。次第に人が集まってくる。

相手の一人が、君の名前を呼ぶ。

振り返ると、そこには君がいる。私が言葉に詰まっていると、その女が君の胸に飛び込む。

君は女の背中をさする。私に一瞥をくれる。そして、その女を慰めながら去る。




私は半生を振り返る。そして、君のそれと見比べる。

人生は選択肢の連続である。マルかバツかを選び、正解か不正解か、結果は二分の一に分かれる。

君の半生と私の半生。試験の答案と一緒だ。

充実していた君と、不足していた私。

君はいつも正解で、私はいつも不正解。

そんな君のこと__私はずっと、嫌いだった。




だから最後の選択肢ぐらいは。




私の勝ちで、いいよね。




私は前に倒れ込む。私は宙に身を委ねる。



私は想像する。そこにはたくさんの人がいる。

でも顔を判別できるのは、君ぐらい。

赤の他人が流す嘘っぱちの涙は、気持ちが悪い。私は君だけを見る。

君の姿を見て、私は正しい選択をしたのだと実感するだろう。




君は、私のために泣く。


私は、君の泣き顔を見て笑う。


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