捕まりました
何かに追いかけられてるかのごとく、全力で逃げた。
無我夢中すぎて、いつの間にか建物の外に出るほどに。
こんな美少女が全力疾走して息切れしてるなんて、シュールすぎると思いながら息を整えていると、後ろから誰かの手が肩に置かれた。
ギギギギギ、と擬音が出るくらい機械的に後ろを振り向く。
「走るのはやいねー。危うく見失うところだったよー」
なんて言いながらも息一つ乱してないこれまた可愛い美少年が微笑み・・いやこれっぽっちも目が笑ってない。
サラサラな黒髪を指で流す姿がなんと麗しいだろうが、後ろにドス黒いものを背負っていれば騙される事も出来ない。
やっぱりさっきのスラマイム(スライムでパントマイム)壊したのヤバかったのかな、逃げ切れたと思ったのに!すごく怒ってるし、きっとタダじゃ済まない!
「ごめんなさい!知らなかったんです!ちょっと興味本意でつい!」
必殺!先手必勝とばかりに懸命に謝る。逃げて今更だとも思うけど、バレたんなら潔く認めよう。
「んー?何か壊したの?余罪あるの?」
「え?」
さも不思議そうに首を傾げる麗しい美少年に、こちらも首がコテン。
「え?じゃあ、何で追っかけてきて怒ってるの?」
「だって無視したから?」
「はい?」
先ほど声をかけたのに逃げるのに夢中すぎた私が、気づかずに無視した事が許せなくて追いかけてきた。らしい。
「そんなことで!?」
思わず叫んでしまった内容に、麗しの美少年はさらに絶対零度の微笑みを持って死刑宣告をした。
「この僕の声を無視しといて、そんなこととほざくその口をつぐませてあげるねー?」
間延びした声でなんとも物騒な事をいうこの麗しの小悪魔は、優しく私の腕をとってズンズン歩き出す。
発言と行動と表情が合ってません!と心の中で叫びながらもドナドナされていく。