3話 夜空と贈り物
夜になり少年は少しでも夢の世界を近くに感じられるように今まで書いた日記の束を枕元に置き、すぐにベッドに入った。
少年が目を開けるとそこには、きらきらと光る満天の星空が広がっていた。
(また、空が変わってる…)
空が変わっていることに焦りを感じつつ、少年はあたりを見渡し妖精を探した。
妖精はすぐに見つかり、湖へ行く時に通る森の入り口近くで少年に向かって手を振っていた。
その頭には、少年が昨晩渡した小さな花が飾られている。
少年は、そのことに安心しながら彼女のもとへ走った。
「こんばんは。今日も君に会えてよかった。
もしかしたら、もう会えないんじゃないかって不安だったんだ。」
妖精は一瞬寂しそうな表情を浮かべたが、すぐにいつもの笑顔に戻り少年と一緒に湖へと向かった。
湖に着くと妖精は少年を湖の近くまで案内し、湖の真ん中にある島を指さす。
そして、少年の服をつかみ島まで連れて行こうした。
このまま妖精についていくと湖に入ってしまうと、少年は焦って湖に入ってしまう前に立ち止まった。
「僕は君のように飛べないから、あの島に行くのは難しいよ…。」
少年は困りながら連れて行こうとする妖精を止めたが、妖精も折れる気がないようで手を放そうとはしない。
それに、少年の方から手を放そうとすると凄い勢いでチリン、チリン、チリン、と音を鳴らし、怒っているような表情になる。
妖精は何としてでも島に連れていきたいようで、折れる気配がなかった。
少年はしばらく悩んだが、妖精を信じて湖に足を踏み入れた。
驚くことに湖は少年の足を吸い込むことなく、パシャパシャと水面を歩くことができた。
水面は星空を映し出し、まるで夜空の中を歩いているような不思議な心地にさせた。
そうしているうちに、あっという間に島に着いた。
小さく見えていた島は思ったよりも大きく、島の中心にある雑木林は、湖に着くまでに通った森のように木々がたくさん生えていた。
妖精に案内されるまま森の中を進むと、小さな家があった。
「この家に入るのかい?」
少年が聞くと妖精は頷き、ドアの前に近づいた。
キィ…
少年が古びたドアを開くと小屋の中から暖かい光があふれだした。
中には色とりどりの石や植物、何に使うのかわからない道具や本が棚や机の上にぎっしりと敷き詰められていた。
珍しいものがいっぱいで少年はあたりを観察していたが、チリン、チリン、と妖精に呼ばれ、棚の間を抜けて奥に進んだ。
妖精に案内された扉を開けると、そこは小さな部屋だった。
部屋の真ん中には椅子と机があり、その机の上には布で覆われている箱状のものが置いてある。
部屋の中に明かりはなく、窓から差し込む月明かりだけが部屋の中を照らす。
その部屋を見て少年は、ひどく寂しく感じた。
妖精が机の上にある布を取ると、布で隠れていたガラスケースが姿を現す。
そのガラスケースの中には、透き通った花束が飾られていた。
それが月明かりに照らされていることで、その花束はきらきらと光り輝いているようにも見えた。
「……すごい綺麗な花束だね。これを見せたかったのかい?」
チリン、妖精は頷く。
「本当に綺麗だ…。ガラスのように透明な花束なんて見たことない。」
少年が目を輝かせて花束を眺めているのを見て、妖精は嬉しそうに微笑んだ。
そして、妖精はケースを開け1本の花を取り出し少年に渡した。
「これをもらっていいのかい?」
チリン、と妖精が頷いた。少し緊張しているような硬い表情をしている。
少年は、できる限り優しくその花を受け取った。
「こんなに素敵な贈りものをありがとう。大切にするね。」
受け取りながら少年は、花冠をもらった時のことを思い出した。
(起きた時にはもう無くなっているかもれないけれど、今この時だけでも目に焼き付けて大切にしたい。)
そう思いつつ少年は、もらった花をつぶさないよう優しく抱きしめる。
思いが伝わったのか、妖精は笑顔になりそのまま少年の肩に乗った。
そして、月明かりに照らされてきらきらと輝く花束を一緒に眺め、この綺麗で穏やかな時間がいつまでも続いて欲しい、と少年は願った。
その時、窓が開いていないのに風が吹き始める。
少年は夢から覚める予感に焦る。
妖精は、少年の目の前に来てまっすぐにその少年の目を見た後、少年に優しくキスをした。
その時の妖精の悲しそうな表情を見て少年は、目から涙がこぼれてしまう。
「…また、会える?」
チリン、チリン、妖精は首を振る。
「そんな…、まだ僕は君にもらったもののお返しが全然できていないのに、君とはもうお別れなの?」
チリン、妖精は頷く。
「いやだよ、まだ僕は…君と、一緒にいたいのに…」
ビュービュー、とだんだん風が強くなっていく。
少年の目からは涙があふれる。
妖精は悲しそうに少年の涙を小さな手でぬぐった。
少年は、妖精に悲しい顔をさせたままにしたくないと思い、もらった花を胸の前で持って妖精に誓った。
「~~……! 僕!君にもらったこの花を大事にするよ!
それと、これからもずっと君との思い出は絶対に忘れないよ!
そしていつかまた会えたら、一緒に花を眺めよう!」
妖精はその言葉を聞くとにっこりと微笑み離れていった。
少年の周りには目を開けていられないほどの強い風が吹き、チリン、という妖精の音が聞こえる中、目を閉じた。
少年は、涙を流しながら目を開け起き上がった。
涙をぬぐおうとした時、ポトッと布団の上に何かが落ちる。
布団の上には、妖精にもらった透明な花があった。
少年は、それを見てまた涙があふれたが袖でぬぐって、枕元に置いていた日記をつかみ机に向かった。
妖精との思い出を書き終えた後、少年は日記の上に花をそえた。
花は朝日に照らされてきらきらと光っていた。
結末いかがだったでしょうか?
よろしければブックマーク、感想やアドバイスをお願いいたします。




