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すると、末永はまるで先を知っているかのように不思議なことをポツリと呟いたんだ。
「未来に日本はない」
また始まったよ。
末永の嘘八百、そんなこと誰も信じなかった。
信じるはずもなかった。
だけれど、この十五年の月日を経て、日本という国は終わりを告げた。
俺はこの帝国の囲いの中で密かに暮らしている。
そうするしかできなかった。
本当にどうしようもなかった。
兵として日本軍に雇われ、傭兵とも呼ばれた。
今から五年前の話だ。
その時、佐藤も一緒だったな。
佐藤は、現在義手をつけている。
高性能な義手は変えない。
そして、末永は俺にこう言ったんだ。
「日本を取り返す」
どうやら、俺から聞いた話によれば、末永は未来で総理大臣だったそうだ。
末永は来。
戸籍はない。
住民票もない。
だが、確かにここに存在している。
その末永に力を貸してやりたくなった。
「どうしたらいい?」
末永はこれから起こることを淡々と話した。
信じられないことやあっと驚くことが告げられた。
「誰にも言ってはいけない。
工藤。君にしか頼めないんだ」
「わかった」
俺は末永を信じていた。
だが、事態は暗転する。
未来人は、一人ではないそうだ。
現時点では、末永がどうやって未来からやってきたかも不明のまま。
「本当に未来人だったんだな」
俺の言葉が風に揺られ、どこかへ飛んでいくようだった。
俺は、確かに普通なやつだったが、俺にしかできないことがある。
俺はそう信じて、末永のあとを追う。
「待ってくれ、末永」
「なんだ」
「本当にやるんだよな?」
「当然だ」
俺は、歯を食いしめる。
末永はそれを取り出した。
スイッチらしきものだった。
末永が推した瞬間。
両の耳から、爆音が轟いた。
耐えられなかった。
振り向こうとした。
「よせ。振り向くな」
その姿は、とても中学生とは思えなかった。
「工藤、死にたいのか?」
俺は死にたくない。
振り向けば死ぬのか。
そんなことがあってはたまらないだろう。
悲鳴が聞こえる。
女性の悲鳴だ。
赤子の泣く声。
轟く銃声。
誰も争おうとはしなかった。
そして、戦争は始まりを告げた。
「なあ、末永。俺らテロリストだな」
「ああ、そうだな。致し方ないことだ」
そうなのか。
負傷者は千人に上る。
誰も止められない。
二人と帝国との対決が始まりを迎えていた。




