表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンズリバーサイド  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

さよなら ユキコ 

大牟田の風は、どこか煤けていて懐かしい匂いがした。

炭鉱の町だったからだろうか。あるいは、それはサキの記憶が勝手に作り出したものかもしれない。

駅を出て、タクシーで数分。サキは旧友たちの墓がある丘に登った。

草が茂っていて、石の隙間には小さな白い花が咲いていた。線香の煙が風にたなびく。

その匂いに混じって、ふとタバコの香りが脳裏をよぎった。

「ユッコ……」

彼女の顔が、はっきりと浮かんだ。いつも矢沢永吉の話をしていた。

「やっぱ、YAZAWAはね、魂ばい」と、どこかで拾ってきたような言い回しで笑っていた。

ビブレでは、いつも一番声が大きくて、一番早く酔っ払っていた。

それでも、誰かが落ち込んでいると、誰よりも早く気づいて、誰よりも優しく接した。

「この煙草がね、うちの命綱たい」

サキが健康を気にして禁煙を勧めたとき、ユッコはそう言って笑った。

「タバコ止めてまで長生きしたかないし。吸いながら笑って死ぬ方がうちに似合っとるやろ」

墓前に立ち、サキは胸ポケットから細いメモ用紙を取り出した。

それは、最後にユッコが送ってきたメッセージの写しだった。

《ローズの話、続き気になるね。またビブレで語ろうや》

それきり、返事はなかった。

風が強くなり、サキの髪が舞った。ふと、どこかからYAZAWAの歌が聴こえてくるような錯覚がした。

丘の下、町の雑踏の中に、今もユッコの声が残っている気がした。

「サキ、うちはね、あんたの話、好きやったよ。ローズの話も、

SAKIMORIの話も、みんなに、伝えていかんね」

幻聴のように聞こえたその声に、サキは小さく頷いた。

手にしていた線香に火をつける。そしてもう一本、そっとタバコに火をつけて、墓前に置いた。

「吸わんけど……今日は特別」

火は、静かに揺れながら、やがて風に消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ