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ホスト太子 〜歌舞伎町の救世主〜  作者: 櫻木サヱ
夜の新世界✮*。゜
6/16

夜の追跡者

ネオンの灯りが滲む夜の街。

 その喧騒の奥、冷たい雨がアスファルトを叩いていた。

 聖徳太子――Prince TAIは、息を潜めながら裏路地を駆け抜ける。


「来たか……“J”」


 背後から、黒ずくめの男たちが静かに追い詰めてくる。

 夜のホスト街に巣食う裏組織。その中心にいる男――“J”。

 彼はPrince TAIの「覚醒の力」を狙っていた。


 息が白く揺れる。

 鼓動が、PrinceTAIの胸を強く打ち鳴らす。


 その頃、クラブ「NEO」のVIPルームでは、咲が一人、彼を待っていた。

 しかしドアの外――

「……やめてくださいっ!」

 咲の声が震える。

 Jの部下たちが、静かに彼女へと歩み寄っていた。


「太子の女は……“おびき寄せる”のにちょうどいい」



「――咲!!!」

 裏路地を抜けたPrinceTAI、クラブへ飛び込む。

 その瞬間、バーカウンターの奥から、麗が姿を現した。


 月光色の髪をなびかせ、麗は冷静な瞳で言う。

「間に合ったみたいね。あんた、狙われてるのよ」


「心得ている」


 ふたりは目を合わせた瞬間、呼吸を合わせた。

 麗はバーカウンターのボトルを蹴り上げ、敵の視界を奪う。

 PrinceTAIは、迷いのない動きで一歩踏み出した。


 ――それは、まるで剣舞。


 彼の指先から、一瞬、金色の光がほとばしる。

 Jの部下が踏み込んだ瞬間、空気が揺れた。

 周囲の照明が一斉に明滅し、太子の背後に古代の紋様が一瞬だけ浮かび上がる。


「……これが、俺の……力?」


 麗が一瞬、驚きの表情を浮かべる。

 PrinceTAIの瞳の奥に、千年の記憶がよぎった――。



「退け!!!」

 PrinceTAIと麗は、息ぴったりの連携で敵を倒していく。

 麗が放つ華麗な蹴りと、PrinceTAIの一閃のような動き。

 まるで夜の闇を切り裂く、光と影の舞。


 咲は床に座り込んだまま、震える手で太子を見上げた。

「PrinceTAI……これ、いったい……」


 PrinceTAIは振り返り、静かに微笑んだ。

「守るべきものがあるとき、人は強くなる。咲……そなたも無事で何よりだ」


 その言葉とともに、背後でJの冷たい声が響く。

「――やはり、覚醒しかけているな。PrinceTAI」


 暗がりから姿を現した“J”。

 夜の支配者が、ついに動き出した――。


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