光と影の狭間
朝と夜のあいだ。
街は目を覚ましはじめ、看板の明かりが一つ、また一つと消えていく。
けれどその片隅、クラブ「NEO」のバックルームだけは、まだ薄暗い静寂の中にあった。
Prince TAIは鏡の前に座り、ネクタイを緩める。
鏡越しに映る自分の目の奥――そこには、今も金色の光が微かに残っていた。
「……抑えきれねぇな。」
呟いたその声は、どこか痛みを含んでいた。
封印が完全に解けたわけではない。
しかし、“闇の継承者”との戦いで引き出された力が、彼の中で確実に動き始めている。
そこへ、麗がコーヒーを持って入ってきた。
「まだ眠ってないのね。」
「眠れるほど……平和じゃないだろ?」
軽口を叩くPrince TAIに、麗は小さくため息をつく。
「あなたのそういうところ、昔から変わらないわね。
……優しすぎるのよ。」
Prince TAIは一瞬、視線を上げた。
その言葉が胸の奥で、何かを刺激する。
“昔から”――その響きが、千年前の記憶を呼び覚ます。
⸻
――遠い昔。
戦火の中、燃える寺院の前で、彼はひとりの女を抱きしめていた。
「この命が尽きようとも、必ずまた会おう」
その声と共に、光が弾け、時が止まる。
そして現代――
目の前に立つ麗の瞳が、重なる。
もしかして、彼女は……
「麗、お前……もしかして――」
言いかけたその瞬間、ドアが乱暴に開いた。
咲が駆け込んでくる。
「Prince TAIっ!! “NEO”が狙われてる!!」
麗とPrince TAIが同時に立ち上がる。
「闇の継承者たちが、動き出したのか……!」
咲の顔は蒼白だった。
「外に、黒い車が何台も……まるで包囲みたいに!」
Prince TAIはジャケットを羽織り、ネクタイを締め直す。
鏡に映る自分へと静かに言葉を落とす。
「……光と影、どちらも俺の一部だ。なら――両方まとめて制してみせよう。」
その瞳に、夜明けの光が再び宿る。
麗と咲が並び立ち、三人は「NEO」のドアを開けた。
外の世界には、まだ闇が残っていた。
けれどPrince TAIの歩みは、迷いなくまっすぐだった。




