闇に潜む影
翌晩の「NEO」。
フロアにはいつもの華やかな笑顔と、甘い音楽が満ちている。
Prince TAI――太子は、王子のような振る舞いで客を魅了しつつ、心の片隅では昨夜の黒い影を警戒していた。
その影とは――昨日店に現れた、黒スーツの男。
フロアに入ると、空気が一瞬凍りつき、客たちの視線が彼に集まる。
Prince TAIは微笑みながらも、その瞳は鋭く相手を見据える。
「……昨夜も出歩いていたのか、Prince TAI」
男は低く言い放つ。
声のトーンだけで、何か尋常ではない力を感じさせる。
その存在に、クラブの空気が微妙に重くなる。
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咲がそっと彼の手を握る。
「Prince TAI、大丈夫?」
「大丈夫だ。そなたの心配は無用」
彼は優しく微笑むが、内心は戦闘態勢。
千年前の因縁は、決して消えていない。
一方、麗は目を細め、フロアの隅々を警戒する。
「……また何か仕掛けてきそうね」
その直感は正しかった。
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黒スーツの男はPrince TAIの前に進み、低く一礼した。
「私は“闇の執行者”――千年前、お前と因縁のあった者の末裔だ」
その言葉に、フロアの空気はさらに緊張に包まれる。
「なるほど……ならば、歓迎しよう。ここは戦場ではない。楽しむ場だ」
Prince TAIは微笑みながら、剣の力を意識的に押さえた。
だが、内心では戦いの準備を整えている。
力を隠し、客を守りつつ、敵の動きを探る――これが転生者として生きる彼の二重生活だった。
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男の目が鋭く光る。
「楽しむ場……だと?」
その声には怒りと計算が混ざり、Prince TAIの胸に警鐘が鳴る。
「そうだ。だが、そなたもまた、この夜を楽しむことができるかもしれぬ」
Prince TAIは軽く片手を掲げ、微笑む。
その仕草だけで、店内の客たちは安心し、誰も不安に気づかない。
咲と麗も、彼の冷静さに少し安堵する。
だが、二人の心臓も高鳴る――
彼らの目に映るのは、ただのホストではなく、千年前の転生者としての強者の影だった。
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そして、フロアの外。
雨に濡れた路地では、新たな影が動く。
昨夜の戦いを見届けた者、そして次の策を練る者。
Prince TAIを待ち構える闇は、まだ街の中に潜んでいる――。




