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第六話

——白い天井。

目を開けると、そこは自室の天蓋付きベッドだった。


「……ここは……」


体を起こそうとした瞬間、ズキリと鈍い痛みが走る。

そして——視界の端に映った二つの影。


「カイル! 大丈夫か!?」

「……よかった……よかった……」


レオンとリクト。

どちらも腕や肩に包帯を巻き、袖口には乾いた血の跡が滲んでいる。


「……っ、俺……」

記憶が断片的に蘇る。暴走、光、爆発。

——そして、二人が俺へ向かって駆けてくる姿。


サーッと全身から血の気が引く。


「俺……お前らを……」


「気にするな」

レオンは穏やかに笑み、ベッド脇に腰を下ろした。

「お前を守れたのなら、それでいい。私の怪我など、大したことはない」


「そうだよ。君を守れるなら、多少の傷は……むしろ嬉しいくらいだ」

リクトは低く笑い、俺の髪を指先で優しく梳く。


(……大したことない? 嬉しい?)


そんなはずはない。

ボロボロになった二人の姿を見て、胸の奥がえぐられるように痛む。


理解できない言葉に戸惑う俺をよそに、二人はゆっくりと視線を交わした。


身分の高い二人が、こんな大きな怪我を負うことなど今まで無かったはずだ。

その二人が——俺のせいで。

痛いはずなのに、弱音ひとつ吐かず、むしろ俺を気遣って。


二人はまだ十歳。

俺は人生二度目だというのに……なんて失態だ。


それに——この世界の仕組みをもう学んでしまったからわかる。

王家や公爵家の跡取りに傷を負わせれば、その代償は計り知れない。

爵位が剥奪されるだけならまだいい。最悪——斬首刑だってあり得る。


込み上げる後悔に、我慢できない涙がポロポロとこぼれ落ちた。

楽しみにしていたはずの十回目の誕生日は、忘れられない——最悪の日になった。


「ごめん……ごめん……大切な二人に……おれは」


泣きじゃくる俺は、二人が今どんな顔をしているのか怖くて、視線を上げられなかった。


だが——そこにあったのは、奇妙な共犯めいた光。


——だってこれで……君は私(僕)たちから離れられない。

——できれば、自分ひとりが怪我を負うのが理想だった。

——だが、二人同時に傷を負った今、カイルはきっと負い目を感じる。

——その鎖は、決して外れない。


声なき思惑が、甘い囁きの奥に潜みながら——部屋の空気を重く、濃く染めていった。

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