スキルは個性と学ぶべし
次の朝、アタシは部屋の窓から外を見る。
もしかしたら異世界に来た事、夢じゃないかなって思ったけど…。
杏珠「夢じゃないんだ、異世界…」
周りが明るくなった分、色とりどりで形様々な花畑がとても良く見える。
赤に青に紫に黄色にオレンジに…、花の名前は全くわからないけどとにかく沢山ある。
杏珠「まさか天国じゃないよね、はは、まさかね顔洗ってこよ」
洗面台には洗顔フォームや化粧水など美肌の必需品も置いてある、実はさ5年前からじいちゃんの店に住んでいるんだよね、ここから前の仕事場に通ってたから。
必要な備品はほぼ揃えてある、おかげで今に至るのだからやっぱり【備えあれば憂いなし】は本当だね。
杏珠「よし、完了っと」
鏡にニコッとして、じいちゃんが居る下の階に向かった。
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【一階・店舗】
《〜居酒屋のんべえ〜》
杏珠「おはようじいちゃん!」
人徳「おはよう杏珠、まだ寝てても良かったのに」
杏珠「現実世界ならともかく異世界だから興奮して眠れないよ」
人徳「ははは、そうかそうか」
杏珠「そういえば、備爺は?」
人徳「ん?もう起きてるんじゃないかな、私は挨拶したからお前もしてきなさい」
杏珠「はーい」
店の外に出て改めて花畑を眺めた。
見渡すがぎりの広大な花畑は窓から眺めるよりも圧倒される、風が吹けば心地よくいい香りがする。
ちなみに宝石の山は備爺が【収納ボックス】って言うスキルで片付けたから粒も残ってない。
杏珠「スキルって万能ねぇ」
備長炭「む、その声は孫主か?」
杏珠「あ、おはよう備爺!」
備長炭「ああ、おはよう」
くわ〜と備爺は大あくびする。
杏珠「夜だと分からなかったけど、備爺って本当に黒龍なんだね」
備長炭「黒龍は黒龍でも深淵龍だがの、色は進化するたびに深みを増すのがドラゴン族の特徴じゃ」
杏珠「なるほど〜、ねぇねぇ触ってもいい?」
備長炭「構わんぞ孫主」
杏珠「備爺、孫主じゃなくて私の事は杏珠って呼んでよ」
備長炭「人徳も同じ事言っとったの、主はくすぐったいから名前で呼んでくれと、主と呼び方は嫌なのか?」
杏珠「嫌と言うより、ただ単に慣れないからだと思う、それにほら!アタシ達は家族になったんだよ、じいちゃんも備爺とは家族でいたいんだよ、勿論アタシもね」
そう言うと備爺は驚いたように目を見開いた。
備長炭「家族、とな?…ふむ、こそばゆいが悪くない心地よい響だ」
備爺は頬を赤らめてニッコリ笑う。
杏珠「そう言う事!」
備長炭「あいわかった、そう言う事ならば名前で呼ぶことにしよう」
杏珠「よろしくね、では改めて!」
備爺に近づいてその体をなでなでする。
人生初のドラゴンタッチ!
杏珠「感激〜!艶々して綺麗な鱗、がっちりしっかりしてる体、素敵だなぁ」
人徳「ほほぉ、確かにドラゴンは立派な体つきだな」
杏珠「だよね~、って!じいちゃん何時の間に?!」
何時の間にか隣にいて一緒に備爺をなでていたじいちゃん。
人徳「ん、ご飯が出来たから呼びに来たんだ」
杏珠「あ、そっか!備爺、朝ご飯出来たってさ」
それにしても、じいちゃんご飯作るの何時もより早い気が……、まぁ良いか。
備長炭「待ちわびたぞ、と…言いたいが」
備爺は立ち上がり前を見据える。
杏珠「ど、どうしたの備爺」
人徳「?、何だあれは?」
杏珠「へ?」
備爺とじいちゃんが見ている方向を見るとこちらに何か向かって歩いてくる。
あ、あれは…!?
杏珠「ひゃぁぁ!モンスターエンカウントォォ!?」
3メートルはあろう鎧を着た二足歩行の豚さんがこちらに向かってヨロヨロしながら走ってくる。
着てる鎧は金属とかカチカチしたもんじゃなく、皮で出来た感じかな、ほらゲームの主人公が最初に装備するやつ的な。
ってかアタシは何を冷静に観察してるんだ!?
人徳「ほう、皮の鎧を着た豚とは珍しいな」
備長炭「あれはオークじゃな、色が違う所を見ると特殊個体と言った所だろう」
杏珠「どの漫画や小説でも必ず出て来て獰猛凶悪であまりいい設定にされない基本モンスター!それがオーク!ちなみに普段の色は薄いピンクだよ!」
備長炭「おお、詳しいの杏珠」
人徳「杏珠は冒険物語が好きだからな」
杏珠「その通り!じゃなくて、今はそうじゃない!備爺!戦い方教えて、それと援護よろしく!」
テレビで見真似のファイティングポーズをして戦闘準備をするアタシを備爺は『まてまて』と止める。
備長炭「慌てるな杏珠よ、大丈夫じゃ」
杏珠「え?どうして?」
備長炭「ここはワシが作った特別な森、清き心の持ち主しか入れんようになっているからじゃ」
杏珠「え、この花畑の森は備爺が作ったの?」
人徳「凄いな備長炭」
備長炭「ワシぐらいになれば当然じゃ、ふぉーふぉっふぉっふぉ!」
褒められて備爺は上機嫌、それよりさっきの話が本当なら。
杏珠「あの子は悪い子じゃないって事よね、なら助けてあげなきゃ!」
実は白色オークは話してる途中で座り込んじゃってたから気になってたんだ。
よく見れば怪我もしているし、悪い子じゃないとわかった今、やることは一つだよね。
杏珠「手当してあげないと!確か店の中に救急箱があったはず」
備長炭「そんなものより人徳が飯を作って食わせてやれば早いぞ」
杏珠「あのね備爺、確かに体力大事だけど怪我している相手にご飯を食べさせるのは酷な気がするよ?まぁそう言うアタシもじいちゃんのご飯で元気になってるけどさぁ…」
備長炭「相手は魔物だから問題ない、それに人徳のスキルは飯を食べさせる事で回復させると説明書きがあるからここでやってみて学ぶのも悪くないぞ」
備爺の言葉にアタシは更に驚く。
え、うそ、じいちゃん回復スキル持ってんの!?
カッコイイ!
杏珠「凄いじゃんそれ!じいちゃんにピッタリ!」
人徳「うーん、言われても実感はないな?」
杏珠「でもそれが一番みたいだし、やってみようじいちゃん、アタシも手伝うよ」
人徳「よし、それじゃおにぎりを作ろう、朝ごはんに用意した焼き鮭と梅干しを具にすれば何とかなるだろ」
杏珠「オッケー!それじゃあレジャーシートも準備しないとね」
このオーク、結構大きいんだよね。
これじゃ店は狭すぎるから、外で食べたほうがいいよね。
アタシはオークに近づいた。
杏珠「君、大丈夫?今、ご飯持ってきてあげるから、後ちょっとだけ頑張ってね」
疲れてるだろうけど、気絶しちゃったらご飯どころじゃないからね、もうちょっとだけ頑張ってもらおう。
その時だった。
耳をピクと動かして俯いていたオークは顔を上げると、何かを持っているであろう両手を差し出してくる。
そういえば、この子ずっと何かを大事そうに抱えていたんだよね、なんだろ?
オークはそっと片手を退ける、するともう片方の手の平の真ん中にふわふわの桃?が一つあった。
杏珠「ん?桃??」
桃?はプルプルと震えると耳、尻尾、おヒゲ、が現れお目々がくりくりの子猫になった。
杏珠「ーーーッッッッッ!!?」
アタシは余りの可愛さに思考回路が停止した。
人徳「どうしたんだ杏珠、おや?子猫か可愛いな」
備長炭「ほお、こりゃ珍しい《ケットシー》の子猫ではないか」
杏珠「(はっ!)ケ、ケットシーって人語を話す聖獣の事?」
思考回路が回復したアタシが備爺に聞けば『そうじゃ』と答えてくれた。
備長炭「それもポーションケットシーじゃな」
人徳「へぇケットシーにも種類があるんだな」
杏珠「また気になるワードだけど、それはご飯食べながらでも聞けるよね、行こうじいちゃん!」
人徳「おっとそうだった、行こう行こう」
じいちゃんと一緒に朝ごはんの再準備だ。
何故か子猫ちゃんが後ろからついてくるけど、可愛いから許す!
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花畑にレジャーシートを広げて朝ごはん並べる。
大皿に山盛りに乗ったおにぎりを備爺とオークは嬉しそうにがっついている。
アタシは味噌汁、じいちゃんはお茶を啜っていたよ。
ケットシーの子猫ちゃんはアタシとじいちゃんの間でミルクを嬉々として飲んでいる。
牛乳、ホットケーキ用に買っておいて良かったぁ。
猫に牛乳はあまり良くないって聞いてたんだけどケットシーは状態異常にはならないから大丈夫だって備爺言ってたから大丈夫、だよね?
備爺「うむ!昨夜食べた味噌焼きおにぎりも美味だったが、こちらも実に美味じゃ!」
オーク「ピギィィ♪♪」
オークはニコニコしながら嬉しそうに鳴く。
それを見ながらじいちゃんも備爺も『そうかそうか美味いか白兵衛』とか『慌てると喉に詰まらすぞい』と普通に喋っている。
て言うかじいちゃん、オークに名前をつけたんだね。
備爺はともかく、じいちゃんも話せると言うことはこれもスキルなのかな?
そんな心の考えが顔に出ていたのか備爺がスキルについて教えてくれた。
えーと、なんでも?
自分のステータスを見るには『ステータス』って心で念じるんだって。
それで、じいちゃんにどうだった?って聞いたら【固有スキル】と【通常スキル】と言うのがあると教えてくれた。
その通常スキル側に《翻訳》と言うのがあって、言葉を話せない種族と会話が出来るのだそう。
ちなみにじいちゃんのスキルは。
通常スキル。
《翻訳》
《食事回復・極》
《体力消費軽減》
《精神力強固》
《気力低下無効》
固有スキル
【居酒屋】
だってさ。
固有スキルが【居酒屋】って事は、あの店はじいちゃんのスキルになったんだ!
だから電気と水道が使えたんだね、流石魔法。
解説によれば、じいちゃんのレベルが上がれば冷蔵庫の中の品物も増えたり店が綺麗になったり、店中にある備品もグレードが上がるんだって。
ちなみに固有スキルは自分しか使えない特別スキルって事らしいけど、憧れるよねぇ。
話を聞いていたアタシはそんなふうに考えていた。
ここまで話を聞いたら自分ももしかして!って、期待しちゃうじゃん?
でもさ、その期待も儚く散ったよ。
いや、固有スキルも通常スキルもあるよ?
だだアタシのスキルは…。
通常スキル。
《渡世術》
固有スキル。
【匠の酒蔵】
・・・以上。
なんじゃそれぇぇぇぇ!!?
杏珠「備爺、ほ、本当に、ほんとぉぉに!アタシのスキルってコレだけなの!?」
ショボすぎるあまり、備爺に詰めよってしまう。
備爺は平然としている。
備長炭「何を言う杏珠、スキル持ちってだけでも凄いんじゃぞ?それにお主の持つスキル《渡世術》は古時代にあらゆる種族と心を通わせていた伝説の勇者が持っていたスキルなんじゃ」
杏珠「いやいや、古時代じゃありがたみとか分からないし、そもそもこの世界は初めて来るし、勇者とか聞き慣れない単語だし」
てか、居るんだ勇者。
でも一番気になるのそれじゃない!
アタシの固有スキルだよ!
固有スキル
【匠の酒蔵】。
説明によると。
あらゆるお酒を出すことが出来る、幻の酒も思うがまま、……だそうだ。
これでどうやって戦えと!?
せめて、せめて戦闘スキルならじいちゃんを守れるのに、、、異世界のケチィィ(泣)!
人徳「ふむ、お酒のスキルか、杏珠はうちの店を継ぐために頑張ってたからそれが形になったのかも知れないな、じいちゃんなんだか嬉しいよ」
杏珠「うぅ、ありがとう、じいちゃん」
自分の席に戻って項垂れるアタシをじいちゃんは慰めてくれた。
うん、そうだね!この固有スキルはアタシの努力の結晶が形になったに違いない!そう自分を言い聞かせ、本日のメソメソタイムは終了。
それでもやっぱり。
杏珠「アタシも翻訳スキルがあればなぁ、モンスターは勿論色々な種族と話せるじいちゃんが羨ましいよ」
この先がどうなるか分からないけど、せめてアタシも翻訳スキルがあればちょっとは異世界を楽しめるかなとか思う。
そんな時だった。
オーク改め白兵衛がポケット辺りをガサゴソしだしたかと思えば何かを摘んだ形でアタシに向かい差し出して来た。
手の大きさの迫力に驚いて思わず仰け反ってしまうアタシに備爺は『大丈夫じゃ』と言った。
備長炭「杏珠よ、どうやら其奴はお主に何かを渡したいようじゃぞ受け取ってやるがよい」
杏珠「え?う、うん」
恐る恐る両手で器を作って前に出せば、白兵衛の手が上に来る、その直後にチャラと音を立て、硬い感触が手に伝わった。
白兵衛の手が離れたので自分の手の中を覗けば、雫型の青いイヤリングが一つあった。
杏珠「わ、綺麗…!本当にいいの?これもらっても…」
アタシの言葉に白兵衛は何度も頷く。
杏珠「ありがとう!じいちゃん、みてみて」
人徳「ほう綺麗なイヤリングだ、良かったな杏珠」
杏珠「うん」
備長炭「おお、良いのをもらったではないか、ささ、早う着けてみるのじゃ」
杏珠「備爺がそう言うって事は良いアイテムって事だよね、なら早速!」
とは言うものの、片方イヤリングなんて高等オシャレアイテム、見るのも初めてなんだよね、ハードル高のをいきなり着けて良いのかなアタシ。
などと考えても仕方ないので右耳に着けた。
杏珠「ど、どうかな?」
雫型の石も程よい大きさだし問題無いとは思う。
人徳「お、似合うじゃないか」
備長炭「うむ着け方も完璧じゃな」
白兵衛「めんこいめんこい(拍手)」
杏珠「そ、そう?ありがとう、じいちゃん、備爺、白…兵衛?」
白兵衛と目が合う。
杏珠「え、え?い、今、白兵衛…喋ったの?」
白兵衛「喋ったど」
杏珠「えぇぇえ!どう言う事!?」
備長炭「ふぉーふぉっふぉっふぉ、どうやら無事に発動しとるようじゃな」
杏珠「発動?まさか、これ?」
イヤリングに触りながら聞けば備爺は頷く。
備長炭「左様、それは特殊個体のオークのみが持つ幻のアイテムじゃ、身に付けると言葉を持たぬ種族と会話が出来るようになるのじゃ」
杏珠「へー!便利ぃ〜」
つまりは翻訳機!
やったー!これでアタシも異世界楽しめるー♪
杏珠「ありがとう白兵衛、大事にするね!」
白兵衛「喜んでくれて、わーも嬉しい」
杏珠「ふふ、うん!本当にありがとう!」
人徳「それより白兵衛、お前さん魔物なのになんでこの子猫と一緒に居たんだ?」
話が落ち着いたのを見計らい、じいちゃんは白兵衛に質問した、白兵衛は腕を組み少し考えて、そして話してくれた。
白兵衛は魔物では珍しく性格が穏やかで戦いが嫌い、更に特殊個体なので目立ってしまい冒険者に見つかるデメリットも高く、仲間を守るため群れから離れたのだと言う。
その途中でお腹をすかせうずくまっていたケットシーの子猫を見つけ保護してあげた時に運悪く血気盛んな冒険者達に見つかってしまい、子猫を守りながらこの森に逃げ込んだそうだ。
白兵衛「森に入った途端、冒険者達が追って来なくなたんでホッとして、そんで深淵龍様の匂いがしたから会いに来たんだど」
杏珠「備爺に?」
白兵衛「んだ」
白兵衛は備爺に向かい合うと両手を地面に着け深々頭を下げた。
白兵衛「おねげーします深淵龍様、わーもこの森に住むことをお許しくだせい」
備長炭「ん、構わんぞ」
早ッッ!?
でも良かった、この森は清き心の持ち主しか入れないって言ってたから白兵衛は信頼できるもんね。
白兵衛「ありがとございます!深淵龍様ぁ!」
子猫「ちろべー、よかったねー」
ケットシーの子猫が口に着けたミルクを舐めながら顔をふにゃとさせて笑顔で白兵衛を祝福した。
そうだすっかり忘れてた。
杏珠「ねぇ君はなんで一人なの?迷子になったの?」
子猫「ぽーけんにでたの、こうきちん、けっとちーのほこり」
杏珠「ぽーけん?」
人徳「冒険の事じゃないか?」
杏珠「あ、なるほど」
備長炭「ケットシーは別名【旅猫】と呼ばれておってな、子猫だろうが成猫だろうが冒険に憧れ旅に出るんじゃ、冒険に出るのはケットシーの喜びであり勇敢の証でもあるからの」
杏珠「だから『ケットシーの誇り』なのか、納得」
冒険、冒険か。
こんな小さな子猫も大きな世界に飛び出すなんて凄いよなぁ。
……よしっ!
杏珠「じいちゃん、聞いてほしい事があるの」
人徳「奇遇だな私も同じだよ」
杏珠「じゃー、せーので言おう」
人徳「良いぞ、せーの」
杏珠&人徳「居酒屋をやろう!…あ」
杏珠「じいちゃん、本当に良いの?」
人徳「ああ、元の世界へ帰るにしても帰らないにしても、どのみち生きて行くには働く事が大事になる、体力の衰えから引退するとは言ったが不思議な事に、ここに来てから体が軽いんだ、これならまだまだ働ける」
杏珠「じいちゃんのスキル凄かったからそれが力になってるんじゃないかな?」
人徳「そうかもな」
杏珠「働く事は決まった、けど何処からはじめたら…」
備長炭「ならば街の冒険者ギルドに行き商人登録をすると良いだろう」
杏珠「でた!異世界あるある、冒険者ギルド!」
人徳「そこにいけば許可が貰えるのか?」
備長炭「うむ、ついでに冒険者登録もするとよい、冒険者登録をすれば街に入るとき通行料などと言うものを払わなくて済むし、ワシの宝石もギルドで金に換えてくれる、さらにお主達のレベルを上げるために必要な戦いの砦にも行けるぞ、まぁダンジョンは至る所にあるが、街が管理するダンジョンは冒険者登録しとらんと入れんからの」
人徳「便利に見えて意外に不便なんだな」
杏珠「と、とりあえず冒険者ギルドのやり取りが小説の世界と同じで安心した」
ダンジョンに行かなきゃならないのは確定なのね…(泣)
人徳「そうと分かれば片付けて出発しよう」
杏珠「善は急げだね、了解!って、みんな食べるの早ッ!?」
何時の間にか大皿の中もお鍋の中もすっからかん。
白兵衛「ふー、満腹だぁ」
子猫「まんぷく」
備長炭「馳走になった、さてと、お主はどうするんじゃ白兵衛よ」
白兵衛「わーは戦うのは嫌いですからここに残ります、人徳さん、杏珠さん、名前と美味しいご飯をありがと」
傷だらけだった体はすっかり回復していて白兵衛は立ち上がるとアタシとじいちゃんに頭を下げた。
人徳「元気になってよかったよ」
杏珠「あまり無茶しちゃ駄目よ白兵衛?」
白兵衛「わかった、そしてこの恩、わー、一生忘れねぇど!」
備長炭「では次にケットシー、お主はどうする?」
備爺が訊ねると子猫ちゃんは胸を張る。
子猫「ぽーけんいく!あんじゅとじーたんについてく!」
じーたんってじいちゃんの事だよね。
なら、あんじゅとは、ひょっとしなくてもアタシの事?
どんだけ可愛いの君!?
人徳「着いていくって…いいのか、私達も予測不可能な旅なんだ危険だぞ?」
子猫「いくー」
人徳「わかった、じゃあ来なさい」
子猫「にゃーん♪」
杏珠「じいちゃん!この子アタシが名前つけても良い?」
人徳「ん?勿論、構わないぞ決めているのかい?」
杏珠「うん、実はそうなの!アタシが《あんず》だから、桃に似ているこの子は【モモリン】にしようと思うんだ!君の名前はモモリンだよ」
アタシが名前を言いながら頭を撫でればモモリンはお座りしたまま嬉しそうに尻尾をビーン!と立てる。
モモリン「ももりん!」
表情も晴れやかな所を見ると名前、気に入ってくれたみたい、よかった♪
人徳「ささ!片付け片付け、時間は貴重だぞ」
杏珠「そうだった、備爺、片付け終わったら次は固有スキルのレクチャー宜しくね」
備長炭「うむ、心得た」
モモリン「かたじゅけ、てつだうー!」
白兵衛「わーも!」
杏珠「2人共、ありがとう♪」
白兵衛達に手伝ってくれたから片付けは楽しく終わった、固有スキル、どんな感じで使うのかな?
ちょっと楽しみかも♪