第2話 憂鬱な魔力鑑定
「ゴースト、明日でお前は12歳になるな。」
おっさんがいつもの夕食の最中にそう口にした。
「あ、ああ、それが?」
ああ、遂に来てしまったか、、、
おっさんが次にいう言葉は分かっている。きっと、魔力鑑定の話だろう。しかし、俺にとってその話題は好ましくない。若干憂鬱な気持ちになりつつ、問いかける。
「ごーすと、もしかして忘れちゃったの?12歳の誕生日といえば、魔力鑑定が行われる日じゃない!」
「ああ、そうだ」
やはりそうだった。
「魔力鑑定…ね~」
俺は助けられたあの日から、おっさんとフィアから一般教養を学んでいたおかげで、魔力鑑定とは何なのかを知っていた。
魔力鑑定とは、教会へ行って自分がどんな魔術を使えるか、そしてどれ程の魔力を持っているか
を確認することである。その鑑定の結果によって、行ける学院、そして将来の職業さえも概ね決まってしまうような一大行事なのである。
なぜそんな行事にワクワクしないのか、それはあくまで鑑定は最終確認にすぎないからだ。
例えば水魔法を使えるやつは鑑定前から勝手に使っているケースがほとんどだ。現に、フィアは8歳にして中級魔法である火、水、土魔法が扱えるが、それは鑑定されたことで身についた魔法ではない。
逆に言えば、鑑定前に自分の使用できる魔法が、嫌でもある程度予想できるわけである。
.........うーーん、行きたくねえな~~。
「私も早く鑑定したいな―」
フィアが羨望の眼差しで俺のことを見てくる。うん、今日も今日とてフィアは可愛い、そして久しぶりに視線を合わせてくれた気がする。
フィアの潤ったお目目を見つめ返すと、視線を逸らされたので少し悲しい気分になった。
にしても...行きたくない。
なぜなら俺の結果はわかりきっているからだ。
俺は下級魔法しか使うことが出来ない。
この世の魔法には、上級魔法、中級魔法、下級魔法が存在する。上級魔法はエルフのみが使える光魔法、中級魔法は光魔法以外の攻撃に使える魔法、下級魔法は主に生活で使える程度の魔法のことを言う。俺は大体の者が一つは持つ中級魔法を一切使うことが出来ない。いわゆる落ちこぼれというやつである。
もちろん俺は普通の村人としての人生が遅れればいいと考えている。しかし、鑑定結果によって、町の人たちの見る目が変わってしまうのも事実である。そうなると一緒に暮らしているおじさんやフィアの気も煩わせてしまう。自分だけの問題ではないのだ。
眉間に皺を寄せ頭を抱える。魔力鑑定は絶対に行かなくてはいけない。どうしたものか、、、
「そういうことだから明日は教会に行けよ。まあ結果は気にすんな。お前には剣術の才能がある。
…あ、それとも一人で行くのが怖いのか?パパが一緒について行ってやろうか?」
そんなことを考えていると俺の気持ちを察したのか、おっさんがにやにやと気持ち悪い表情で煽ってきた。これはおっさんの優しさなのかもしれないが、普通にキモイので無視した。
その後もおっさんは話しかけてきたが、何かと疲れていたため下級魔法である感覚魔法で音を遮断して、さらに魔法鑑定のこともひとまず考えないようにして飯を食っていた。
一応話を聞いている風に、おっさんの口の動きに合わせて「うん」とか「あー」とか適当な言葉を返す。
そうしていると話が終わったみたいなので、チャッチャと皿を洗って二階の寝室へと籠った。
一旦、床に就いてしまえばどんな悩みでも吹っ飛ぶだろう。
そう信じて俺は眠りについた。