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第1話 幸せな生活?

ここはどこだろうか。


 暖かいが、暗い、しかしとても安心できる空間。誰かの鼻歌が聞こえてくる。


 気持ちがいい。 ずっとここにいたい。


 ギギ、ギギ、ギギ、ギシ


不穏な音とともに暖かい空間は崩壊する。


 突如その空間から放り出された俺、先ほどと同じ暗い空間であることには変わりないが、聞こえてくるのは、誰かがむせび泣く声と、叫び狂ったように喘ぐ声、頭の中には不安と恐怖ので埋め尽くされていく。ついには眼前が真の暗闇に包まれていく。



 そんな時、誰がが頭の中に語り掛けてくる。



 *  *  *  *  *  *  


「――――い」



「―――なさい」




「ごーすと、起きなさい!」


「っつあ」


 起きるとフィアが俺のベットの上で仁王立ちしていた。


「はぁ、またこの夢か…」


 額の汗を拭い、深く深呼吸する。


 日常に戻されたことに安堵を覚え、フィアの顔を見てから、いつもの日課へと移る。


 フィアは、5年前に俺を助けてくれた恩人でありかつ妹的存在だ。見た目は、獣族のハーフのため髪の毛量が少し多いが、なかなかに可愛らしい顔立ちをしている。華奢な見た目ではあるが魔術だけでなく体術、剣術も得意とし、教養もしっかり持っている。まあ、所謂才色兼備と呼ばれる存在で俺とは大違いだ…。性格も良くて、家族思いだし、面倒見だっていいように見える。


しかしこれは、傍から見ればだ。いや訂正しよう。俺以外からみればだ。


 彼女は半月ほど前から、俺にだけ傲岸不遜な態度で接してくるようになった。


 最近は常に俺のことを見下して、もっと努力しろとか、魔法や剣術の練習に誘っては俺をぼこぼこにしてくる。俺は別に特段強くなりたいなんて思ってないのにさ。フツーでいいんだよ、フツーで


 まあいいや、でその見下し活動の一環として、毎朝ベットの上で仁王立ちしてくるわけだが...


 はっきり言って、超眼福である。言わずもがなわかると思うが、ベットの上で仁王立ちすると、スカートの中から、あれが見えるのである。


 フィアの細くすらっとした足から、足の付け根に視線を移動するとなんと、毎朝フィアの()()()()を拝みながら起床することができるのだ。脚フェチにも最高だ。俺はフィアの足全体をなめるように見渡した。


 それが最近の日課になっているわけだ。


「どこ見てんのよ」


 フィアが柳眉を逆立てて、俺を訝しむような眼で見てくる。


「いーや、別に」



 とこのような感じでクールぶっている俺様だが、内心ウキウキである。



「あさごはんできてるから、早く来なさい!」


「ホーい」


「あと……最近魘されてるけど大丈夫なの?あんま無理しないでね。」


 少し心配するような顔で問いかけてくる。根はやさしいので、きっと大嫌いであろう俺に対してもたまに、暖かい言葉をかけてくる。


 うわーこれは可愛いね。そこで俺はクールに答える。


「心配ないさ(精一杯のイケボ)」


「っっっキモ」


 フィアはツンデレの常套句を吐き捨てた後、扉を勢いよく閉めて、リビングへと向かった。


「て、照れ屋さんだなー」


 なんて言ってみるも、自分の顔でいえる発言でないことを認識している俺は我に返って、今日も今日とて生きるための最低限の生活を営みに、フィアに続いてリビングへ向かった。


 リビングのテーブルにはおっさんことアレックス、とフィアがすでについており、フィア特製料理がすでに並べられていた。アレックスはフィアの父親で、中年の男性だ。まあ美形ではあるが、おっさんはおっさんだ。


まあとにかく、そのおっさんとフィアは俺が起きるのを待っててくれていたらしい。俺は急いで食卓につく。


「「「いただきます」」」


 食事の最中、おっさんが俺に話しかけてくる。


「ゴースト、フィアから聞いたが夢の件は、大丈夫なのか?」


「うーん今のところ実害は出てないしなー、大丈夫そうかな」


 そう返答するとおっさんは、ニカッと歯を見せわらって「ならよかったぜ」なんて返事をした。


 そのおっさんのニヤニヤ顔を見て、俺は5年前の記憶が蘇る。



 あれは俺が生まれた日、というか俺の意識が生まれた日だ。あのアレックスとフィアと出会った日に俺は生まれた。


 気が付くと、俺は土砂降りの雨の中、雨の騒音に耐えるように耳を塞ぎ蹲っていた。


 なぜここに自分がいるのかもわからないし、自分が誰かもわからない。


 ただ分かっているのはこの都がオーレリアだということと、自分が7歳の誕生日を迎えたばかりだったということだった。


 ニヒルな感情に押しつぶされて、このまま死んでしまったほう楽ではないかと考えたが、何故だが死ねなかった。


 動いて助けを求めようと思ったが、空腹と水分不足、倦怠感により思うように体が動かず、蹲ることしかできなかった。


 そんな中、俺に話しかけてくるやつがいた。雨の音で最初は何を言っているか聞こえなかったが、段々と耳が慣れていき、顔を上げろなどの言葉が聞こえてきた。


 顔を上げるとどうやら、中年の髭面のおっさんと可愛い少女が目の前にいることに気が付いた。そこで俺を連れていく、連れて行かないなどの話が聞こえてきた。


 何故だかわからないが俺の外身は行くのを否定していたが、中身が行くことに賛成していた。


 おっさんが帰ろうとするのを見ると、途端に()()が飛び出した。


それ以降の記憶は、途切れ途切れでぼんやりとしか覚えていない。ただ一つ確かなことは俺の魔力が暴走したこと、そしてどうやら俺が魔族に憑依されたことだった。魔族を宿した時の感覚は今でも覚えている。体が焼けるように熱いのに、それが心地よい様にも感じる。不思議な感覚だった…


その後もそんな状態が続き、次に意識が覚醒したのは、この町プラチドに着いた後だったようだ。どうやらおっさんとフィアが俺を連れてきてくれたらしい。どのような風の吹き回しで俺を連れてくることにしたのかはわからないが、あのまま路上でいたなら俺はきっと餓死していただろうから本当に良かった。おっさんとフィアは俺の命の恩人だ。


……ゴーストと名付けてもらったあの日から早5年、俺は来月で12歳になる。随分色々な事をおっさんやフィアから学ばせてもらったと思う。挨拶、食事のマナーなど一般的なものから、ダンジョンの潜り方やモンスターの狩り方など、この先俺が生きて行くにあたって身につけなくてはいけないスキルまで。


本当に、心から感謝している。


「おっさん、フィアいつもありがとう。」


気づけば心の声が漏れていた。


「ああ…ん?」「めずらしいね、ごーすとのそーゆー言葉」


 二人は困惑した様子で俺を見た。

やっぱり、なんだか気恥ずかしい。目線を落とし、頭を軽く掻く。


 食事を食べた後、おっさんは仕事、フィアは新しい魔法の研究、俺は家事を済ませた後、特にやることもないので週末のダンジョン探索に備えてナイフを研ぐ。

朝、昼、夜のごはんだけは皆で集まるが、それ以外は皆基本一人で行動している。しかし決して仲が悪いわけでなく、人それぞれ好きなことをそれぞれでやっているようなそんな夢のような日常を送っている。


淡々と一日一日が終わっていくことに対しての漠然とした不安感を抱えつつも、こんなのどかな生活が永遠に続けばいいなと願った。






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