森口遥香
森口遥香は俯いている。
深く考え込んでいる。
喜んではいる。
嬉しいと思っている。
楽しいとも思っている。
しかし、疑問にも思っている。
なぜ、この人は、
竹中遼太は、
よく知りもしない
私なんかの為に
ここまでしてくれているのだろうか。
今までにわたしに近付いてきた男子とは全然違う。
視線も
態度も
話し方も
考え方も
そして今まで近づいてきたどの男子よりも自分と言うものを強く持っている。
強そうには見えない。
イケメンでもない。
爽やかでもない。
スポーツマンでもない。
明るくもない。
それでも私はこの人に
竹中遼太に
心が引き寄せられている。
恋。ではないと思う。彼をそれほど欲しいとは思わない。
愛。でもないと思う。そもそも愛ってなんなのか分からない。
友情。それも違う。初めて同じクラスになったばかり、共に何かを成し遂げたこともない。
だったら、今のわたしのこの気持ちは、いったい何だというのだろう?
信用? それは積み重ねるもの。
信頼? 信じて頼ること。
!?
信頼!?
わたしは今、竹中遼太を信じている?
過去に出会った誰か?彼よりも信じるに足るクラスメイトはいた事はあったか?
いや、ない。
今のわたしを守ると言い切ってくれそうな人が彼以外に想像できるか?
いや、できない。
本当のわたしを受け入れてくれる。そんな気にさせてくれた人が今までにいたか?
いや、いない。
彼ならば、本当のわたしを知ったとしても
驚かない。
悲しまない。
怒らない。
蔑まない。
否定しない。
きっと、何でもないような態度と言葉で受け入れてくれる。
そう思う。
そう信じる。
今日、初めてまともに会話したばかりの彼に
わたしはわたしを
知ってもらいたい。
そしてわたしは彼を知りたい。
わたしが彼を信じるように
彼にも私を信じて欲しい
だから
「竹中くん、アナタ達にだけは誤解されたくないから、アナタ達が知っているわたしの噂、全部教えて」
「本当のわたしをしってほしいから」
わたしは天使なんかじゃないってことを
普通の女子高生だってことを
知って欲しいから。