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女子的な趣味をオープンにしたら似たような趣味の女子達と仲良くなれて親友まで出来ちゃったお話  作者: いちくん
第一章:女子的な趣味をオープンにしたら似たような趣味の女子達と仲良くなれた話
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急になに?どうしたの竹中君??

☆★☆ 5月9日(火) 杉見手芸店 元手芸教室 ☆★☆


 カオリおばちゃんがチーズケーキと、なみなみと緑茶を入れた大きなマグカップを4つずつ差し入れに来てくれた。


「どうぞどうぞ。さ、話続けて?」


 この場に居座ろうとするカオリおばちゃんを追い出して俺たちは話を続ける。



 ちなみに先ほどの女子3人の沈黙は「凄く分かりやすくてびっくりした」だの「竹中君ってこんなに内側が熱い人だったんだ」だの「同じ年には見えなくて」だの、まぁまぁ好意的な意味での沈黙だったってことは分かった。



「で、具体的な話をしていきたいんだけど」


 3人とも姿勢を正して傾聴(けいちょう)モードに入る。まさかの喋る気なし?


「まず、悪口を聞かない。あるいは聞こえないようにするには、耳を塞ぐのではなく、会話をするというのが最善手だと考えている」


「耳を塞がない?」


「ある種の開き直りになるが『聞きたいことがあるんだけど』と、悪意を持って近づいてきた者には『え? わたしの話を聞いてくれるの?』と開き直ればいい」


「???」


「腹が立っている事、頭にきている事、何でもいい、愚痴でも、ボヤキでも、いいし、逆にこっちが怒ってるんだとアピールしてみてもいい。悪意を味方にしてみるんだ」


「そんなこと…できるの?」


「一人では難しいかもしれない。だが、森口さんの前の席には誰がいる?」


「あッ!わたし」


 村上さんが元気に声を上げ、挙手までしていい笑顔になる。


「そう。村上さんだ。村上さんは短い休み時間の間は森口さんの前から離れずにいて欲しい」


「森口さんが何か言われたら一緒におしゃべりするんだね~?」


「ん。森口さん一人では言葉が詰まることや、言い返せないこともあるだろう。だが、二人ならどうだ? 片方が詰まってももう片方が、それに、二人がかりで言い返せられれば効果も増大だ」


「そうだね。なんか出来そうな気がしてきた」


 森口さんもちょっと元気が出てきたな。


「しかもな、この戦い方は保険でしかない。本当の戦いは別にあるんだ」


 そう、保険。話かけられてしまってからの『戦術』ではなく、話かけられないように巡らせる『戦略』や『謀略』。

 フフフ、フハハハハッ、俺も気分が乗ってきたぞ。


「本当の闘い……」


「今の戦いを仮に籠城戦に例えるとすると」


「??? 籠城戦???」


 通じなかった……ちょっと気分がダウン。というか元通り。


「あ、ゴメン。じゃ、防衛戦でいいや。つまり、もっと攻撃的な守り方もあるんだ」


「……」


 やっぱり分からないか~


「森口さんは、昼休み以外の短い休み時間、村上さんと普通に会話しているだけで、話かけてくるクラスメイトは出て来にくいだろう」


「それだけで?」


「それだけだ。ちょっと想像してみてくれ。例えば、先生に話かけたいのに、その先生が別の先生と難しそうな会話をしていたら、みんなは気楽に話かけられるか?しかも制限時間は10分間だ」


「言われてみれば」


「な? 話かけづらいだろ? だから勉強の話でもいいし、趣味の話でもいい。例えば全然意味の分からない妄想を語りあっていてもいい。敵に、二人が会話をしていると見せかけるだけでも効果は保証する」


「それも経験?」


「そうだ。しかも、昼休みにはもっと守りの人数が増える。2人に俺と西村さんが加わるからな」


「!!!!」


 どうだ、守備隊が2倍になるんだぞ?


「明日からは俺も、西村さんと村上さんに加わり、森口さんと一緒に昼飯を食べる」


「竹中君も?」


「それって……」


「フッ、気付いたか……」


 噂と言う光を消すための、より強力な光を放つ噂の正体に!(はっはっはッ)




「竹中君、実はわたしたちと一緒にお弁当を食べたかったって事?」


 村上さん? それってボケたんですよね?

 えっ? まさか、本気? ……なのね。ガックシ。


「いや、なんでそうなる……」


「だって、一緒にお昼過ごしたいんでしょ?」


「そうじゃない。俺がキミたちに加わるのは、森口さんの、今の噂を(かす)ませるためなんだ」


「どういうことなの? わけわかんな~い」


 村上さんはこういう考え方は苦手なんだな…


「……あんまり自分で説明はしたくないんだが……まぁ、しょうがないか」


 マジ恥ずかしい。


「ごほん。あー、キミたちみたいな? 美人で? 可愛い? 女子3人と? 冴えない男子が? 一緒に昼を過ごしているってさ? 客観的に見てどう思う?」


「美人?」

「可愛い?」

「3人とも?」

「急になに? どうしたの竹中君??」


 西村さん、森口さん。キミたちもか?うわ~~~ハズい。


「あ~~~!だから俺の口からは説明したくなかったんだよ!」


 なんなの? この羞恥プレイ!?


「もう、はっきり言うよ! 森口さんの、今の噂を早く消すために、俺が、新たな噂の中心に、なってやるって事! つまり『なんで、あんな冴えない男子が、美女3人に、囲まれてるの?』っていう新しい噂を作り出すって事!」


 理解してくれたみたいなのは嬉しいけどさ?


「これって俺に対するイジメだからね!」


「そして放課後は、キミらは3人でさっさと教室から出て一緒に帰る! これを悪口が聞こえなくなるまで、そして悪意を感じなくなるまで、毎日続ける!以上!」







「やった~~~!」

 村上さんがハイテンションで喜び


「わかった。竹中君ってやっぱり凄いね」

 西村さんがはにかんだ笑顔で喜び










「……」

 森口さんは、俯いて沈黙していた。

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