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女子的な趣味をオープンにしたら似たような趣味の女子達と仲良くなれて親友まで出来ちゃったお話  作者: いちくん
第一章:女子的な趣味をオープンにしたら似たような趣味の女子達と仲良くなれた話
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地に落ちた元エンジェル

☆★☆ その日の夜 自宅 自室 ☆★☆ 


 俺は今日の西村さんを参考にして、通学カバンにコサージュをアレンジした、ワンポイントアクセサリーを一つだけさりげなく付けることにした。薄い黒のオーガンジーで作った直径10センチほどの薔薇だ。

 黒いカバンに目立たぬように紛れる。良い感じだ。


 これは俺の最高傑作だ。まさか手作りであるとは思われまい。

 それほどの出来であるという自信がある。

 どこかで買ったか、誰かから貰ったか。そう思ってもらえたらベター。

 親しくなったところで、実は手作りと言う事を打ち明ける。

 我ながら良いアイディアだ。



 しかし、俺の思惑をよそに、クラスの雰囲気は思いもよらない方向に動いていた。



☆★☆ 5月9日(火) 登校直後 1年2組 ☆★☆


 森口遥香(もりぐちはるか)


 俺と同中出身者なら知らない奴はいない。

 学年のエンジェル。天使。女神様。

 超の付くほどの美人で、成績も優秀。

 誰にでも優しく思いやりがあり、責任感も強い。

 スポーツはいまいちだったが3年時は生徒会長を務め、同学年男子ならば誰もが一度は惚れたことくらいはあるだろう。


 そんな彼女が今、地に落ちていた。


 今朝、1年2組はその話題でもちきりだ。


 俺のアクセサリーなど見向きもされていない。

 俺だってそうだ。森口さんの事が気にかかっている。

 言い出せる雰囲気ではない。



 以下、事実に噂が混じっているが、この状況を整理する。



 森口さんは中学の卒業式の日に、爽やか男子に告白された。

 女子人気の高いスポーツマンだ。

 森口さんはその告白にOKし二人は付き合うことになった。

 そして彼は今、隣のクラスに在籍している。

 

 ところが森口さんは高校の入学式の翌日に、ちょいワルのイケメンに告白してOKをもらった。

 俺らと同じクラスの男子で、森口さんは以前から彼に恋心を抱いていたという。


 スポーツマンと別れた後ならば何の問題もないが、実はスポーツマンとは別れてなどいなかった。

 いわゆる二股交際だ。


 だが、昨日、俺が中庭で弁当を食っている間に問題が発生した。

 隣のクラスからスポーツマンが森口さんを訪ねてきた際に、二股交際がばれた。

 ちょいワルとスポーツマンと森口さん。

 人目も(はばか)らずに激しい口論を繰り広げたのだという。


 結果、森口さんは二人からこっぴどく振られた。

 クラスメイトの多くが見聞きしている公衆の面前で。



 ☆★☆  ☆★☆  ☆★☆



 俺は昨日中庭で弁当を食ったのは英断だったと自画自賛した。

 人と人が争う場面に居合わせるのは好きではない。むしろ苦手だ。

 情報として一応は知っておく。だが、その場の観客(オーディエンス)になるなど恐ろし過ぎる。

 昨日の放課後、やけにみんな静かだったのはそう言う事だったのか。


 俺は後ろを振り返る。


 今、森口さんは落ち込んでいるようにも見えるが、なぜか()()()()しているようにも見えるのは、俺の気のせいだろうか?


 森口さんの方にチラッと目を向けるが、森口さんの前の席には村上さんがいる。ちょっと気まずいのですぐに目を逸らして俺は1時間目の授業に備えることにした。



☆★☆ 同日 昼休み 教室 ☆★☆



 西村さんと村上さんは窓際後方から二番目の、村上さんの席で昼食を摂るようだ。


 ならば俺も今日は自分の席で弁当を食べる。

 

 今日の昼休みはやけに人が少ない。

 多分、森口さんの噂話を森口さんのいない所でするためだろう。

 嫌な感じだ。


 昼食を食べ終えた俺は、スマホをいじる。画像。ギャラリー。アルバム。

 先日作ったビーズアートの黒いシャム猫が招き猫のポーズで斜め上を不思議そうな表情で見上げている。


「あのさ、竹中君」


 そんな時に後ろから話かけられて一瞬焦った。

 俺の写真を見られた!?と、思ったが、どうと言うことは無い。俺が作ったとまでバレるはずはないからな。


「ん?」


 極めて冷静な『ん?』うまく演技できた。

 話かけてきたのは西村さんだ。すぐ後ろには村上さんもいる。


「竹中君のカバン。それ、薔薇の花だよね?造花?」


 来た!気付いてくれた!嬉しい!


「あぁ、そうだよ?それが何か?」


 極めてつっけんどんな態度で接する。名演技。


「すごく綺麗なんだけど、もしかして竹中君が作ったの?」


 ちょっと!?なんで俺が作ったと思う訳?俺、男子なんですけど?


 俺は困った。嘘はつきたくない。でも、今すぐに認めるのもなんか嫌だ。


「答えられない」


 そう言うしかなかった。


「わかった」


 昨日の会話でも気が付いていたが、西村さんは言っていい事と悪いことを考えて話すという性質を持っていると思う。俺的にはありがたい限りだ。


「ちょっとこれ見てくれる?」


 そう言って俺に見せてくれたのはヒマワリの造花だ。


「へぇ~綺麗にできているね。全部布で作ったんだ?お、安全ピンブローチだね。夏に被る帽子に似合いそうだ」


 あれ、俺、しゃべり過ぎてない?しかも語尾に『ね』とか付けちゃって、どうした俺?


「フフフッ。竹中君の黒薔薇ほどじゃないけどね」


「だからこれは……」


 言葉に詰まる。


「ねぇ、なんかアドバイスくれない?ここをこうした方がいいとかさ」


 俺が話しにくそうにしていると。


「そうだ、詩織の席で話そうよ。ここじゃあんまり内緒話できないし、今、詩織の席付近に誰もいないからさ」


「森口さんがいるぞ?」


「森口さんならいいじゃん?きっと誰にも言わないと思うよ」


 ……まぁ、昨日の今日だしな。


「わかった」


 それより村上さんが一言も喋らないな。という事が若干気になった。


 席を移動する際、俺は手提げかばんを持った。

 中には3つ俺の作品を入れているからだ。



 一つ。さっきスマホで見てたビーズアート『黒シャムの招き猫』俺のおまもり。


 二つ。クリスタルクレイとジュエルビーズで作った『ネクタイピン』制服のネクタイにいつか使用したい。


 三つ。グレーを基調として薄ピンクを織り交ぜた『羽根つき男性用コサージュ』親戚の結婚式とかでつけるイメージ。もちろん薔薇。


 いずれも自信作だ。


 もし西村さんが俺の理解者になってくれると判断できたら、たとえ村上さんが一緒でもこれらを出して、見てもらおうと覚悟は決めた。


 村上さんの席は窓際の後ろから2番目で、最後方が森口さん。

 西村さんはなぜか上機嫌だ。


「竹中君。私たち実はね、去年の夏ごろから『杉見手芸店』によく通ってるんだけどね」


 すぎみしゅげいてん……?

 げッ? !!!嫌な予感しかしねえ。だがまぁ、だまって話は最後まで聞こう。


「店先のウインドウにすごく綺麗なコサージュやブローチ、ビーズアクセというかビーズはもうアートって感じのすごい作品がたくさん並んでたからね、どうしても気になってて」

 

 はいはい。それ全部俺の作品です。

 あのおばちゃんは、タダで材料上げるから何個か飾らせて~って家まで押しかけてきて、俺の作業部屋に勝手に入ってくるような人ですから。


「昨日思い切ってお店の人に『これの値段は?』って聞いてみたの」


 はいはい。それ、売り物じゃなくて客寄せだもんね。手作りでもこんな作品が出来るんだよ~みたいな?

 なんたって『手芸店』は、材料を売る店。完成品を売るわけじゃない。


「そしたらね、『これはウチで売ってる材料だけでこんなものまで作れるって言う見本で、売り物じゃないんだよ』って言われて、すごくびっくりしたの」


 俺の名前は絶対に言うなと厳命してある。だから、まだその作者が俺だとは分かるまい。あ、もしかして今、フラグ立った?


「そしたらね、『これを作ったのはね、実はアンタらと同じくらいの年の男の子だよ。近所に住んでる子でね、その子の名前は絶対に言えないんだけど、お母さんは夢子ちゃんって言うの。竹中夢子ちゃん。この作品作った男の子のお母さん』って」


 あのくそババア。やっぱりやってくれていやがった!

 確かに俺の名前は言ってねえ。俺の名前はな!

 けどよ、ただのお客さんに俺の母親の名前を言うか普通?っつうかどんな会話の流れでそうなったんだよ!名字も言うなよクソッ

 おしゃべりババアめッ!


「お店の人、夢子ちゃんと親友なんだって」


 竹中遼太は99999のダメージを受けた。


 同級生から自分の母親の名前を『ちゃん』付けで言われる息子の気持ちがわかる人。今すぐ挙手してください。はい、いませんね。


「すまない。ちょっと夜風にあたってきます……」


 今まだお昼だよ!?というツッコミ希望です。


「凄い!やっぱり竹中君だったんだね。私、すごく嬉しい!」


 ツッコまれませんでした~


 キラキラ笑顔の西村さんが眩しい。隣の村上さんもいい笑顔だ。

 昨日の村上さんとの確執もすでに今は昔。既に過去。風化。


 あのババアのせいで。


 今朝聞いた森口さんの話もすでに霞んでしまっている。


 あのババアのせいで。


 杉見手芸店。

 あのババアこそが真の俺の敵。いや、絶対に敵に回してはいけない恐るべき敵。ん?何だろうこの違和感。矛盾?



 その時だった。







「あのお店の見本って、竹中君が作ったの?」







 森口さんが俺たちに、いや、俺に話かけてきた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 店に飾ってもらえるほどの技量、手が不器用な僕は想像ができない領域で羨ましい! そして、気付いてもらうために分かりやすいところにつける所、とても可愛くていいです。 僕なら別の用事を作り出して…
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