表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/49

だからって納得いくか!!

遊びに来て頂きありがとうございます

 ただ外は相変わらずの大雨であり、その雨がドアに当たっての事による音なのかはその直後は判断できない。しかし再度ドアが叩かれた。間違えない。誰かがこんな雨の中、ここに赴いたのだ。

 場所も森の中で、集落から離れている。ましてや私がこの家に来てから誰一人客人が訪れることなどなかったこの家に、こんな中誰なのだろうか? 

 不思議な面もちでドアを見ていると、セルリルは本を机に置き、ドアの方へと足を運ばせる。


「誰だ」

「私です、いつもお世話になっておりますルルカ商店のセドックです」


 確かに声は彼の声だ。セルリルは施錠を外すと戸を開けた。すると、土砂降りの雨が降る中雨具を羽織り佇む、店主と息子のアレルが立っていたのだ。私もその姿に慌てて立ち上がると、家主を押しのけ駆け寄る。


「どうしたんですかこんな雨の中、とりあえず中に入って」


 いきなりの声かけにセルリルは渋い顔を浮かべていた。が、その場は黙認し、元いた席へ戻り本を再び読み始める。


「すいませんお寛ぎ中に」

「いえ。それより、座って下さい。今暖かい物でも用意します」

「いえいえお構いなく。すぐに戻らないと家に医者と妻のミリア、あとキアラも居ますので」


 そう言い、二人は雨具を脱ぎ、本に興じる彼の前に恐る恐る立つ。


「あのーー 魔法使い様。いきなり押し掛け申し訳ございません。実はお願いがありましてお伺いしました」


 その話に頷くわけも、声で答える事もなく聞いているのかもわからない態度に、話す店主も尚の事顔が強ばる。


「実は、私の妻が体調を崩していたのですが、その病名がはっきりしまして。先生からは狂魔病と診断されました」

「狂魔病?」


 聞いた事のない病名に思わず聞き返す。それでも彼の反応は依然として変わらない。そんな中、目の前に立っていた店主がいきなり、土下座をしたのだ。何が起きたのかわからず言葉が直ぐに出てこない。すると、店主の隣で私同様現状を把握できず立ち尽くすアレルの頭に手を置き、頭を下げるよう強要させる。それに従い少年も訳も分からないまま頭を垂れた。そして店主は顔が床につく程に頭を下げ直す。


「魔法使い様の技量は日頃から承知しております。それを踏まえ、どうか特効薬を調合して頂けないでしょうか?」


 悲痛な叫びにも似た声が上がるも、セルリルは全く反応がない。


「魔法使い様。お願い致します。どうか、どうか妻を助けて下さい」


 店主の懇願の声が部屋に響くも、それから暫く異様な静けさが続く。店主とアレルは頭を提げたまま、微動だにしない。その時だった。


「作れない」


 この均衡を破り言ったセルリルの言葉に辺りの空気が一瞬止まった感覚を覚える。そんな中、反応がない彼等に彼は再度声を上げた。


「聞こえなかったのか? 俺は作れないと言ったのだが」


 すると、黙って指示に従っていたアレルの頭が上がり、敵でも見るかのような視線をセルリルに向ける。


「何で出来ないだよ!! 腕良いんだろ? お父さんがここまでして頼んでるのにどうしてそんな事言うんだよ!!」

「やめるんだアレル」


 上げた息子の頭を押さえ漬けようとする父の手を払い、尚も彼に食ってかかった。


「僕は知ってるんだぞ!! 村の人が何て言ってるか!! 鬼畜魔法使いだって!! 腹黒いんだって!!」


 すると、今まで読んでいた本を閉じ机に置く。そしてアレルの前へと立ち、傍から見ても背筋の凍る程の圧の眼力を少年に送った。アレルもまたその眼差しに顔が強ばる。


「口の聞き方がなってないな。俺はあくまで『作れない』と言ったまでだ。よく考えろ。お前の親父だってそれなりに薬を調合する知識はある。そんな奴がここまでするのは何故だ」

「そ、そんなのお父さんに作れないからだろ?」

「だから何故作れない?」


 噛みついていた子供が沈黙するも、その姿に容赦無い冷たい視線を送り続ける。


「おいチビ。サーベルキャット生死関係なく捕まえてこい。そしたら調合してやる」

「そ、それは!!」


 今まで、土下座をしていた店主が勢いよく顔を上げた。



「でも、そういう事だろ? 店主」


 的を射らない話にアレルと私が二人を見る。すると店主は両膝に強く握った拳を置き、顔を俯かせている。その手は微かに震えていた。


「アレル。帰ろう」


 いきなりゆっくりと立ち上がった店主が息子の肩を抱く。心配そうに顔を覗くアレルの頭を数回優しく撫で、雨具を着るように言う。そしておもむろにドアの方に足を進めると、店主が頭を下げる。


「すいません。お寛い中お騒がせしました」


 すると、店主は自分でドアを開け、出た場所で再度頭を垂らす。そして雨の中、息子と肩を寄せ雨の降る薄暗い森へと消えていった。



バンッ


 強く閉めたドアの音が響く、同時にズカズカとセルリルの前へと向かう。


「おい!! あの一連の対応は何なんだ!! しかもあんな子供にまで!!」

「フン、事情も知らない人間がほざくな」

「はあ? 背景はわからないにしても、明らかにあんたより弱い立場の人にやる態度じゃない!!」

「では、無知で弱い立場のお前に教えてやろう。まず狂魔病とは、この世界でも奇病といわれ、何らかの原因で波動がその人間のキャパ以上に取り込まれてしまう病気だ。それにより、臓器の負荷がかかり、最終的に全臓器肥大、破裂する。それに効く薬というのがあるが、それには四肢動物であるサーベルキャットの牙が必須。だがサーベルキャットはほぼ生態が不明。と言うのも元々の個体数が少ない希少種。しかも凶暴且つ生意気にも魔法を使う」

「動物が、魔法?」

「ああ。あいつらは氷属性で、動きも素早い。捕獲するには厄介だな。だが一番は、個体に出くわすかだ」

「そんなに居ないの? そのサーベルキャット」

「居ない。俺も一回しか見たことがない」

「……」


 確かにそんな背景があるとなると、珍品を持ち込む事もある彼なら、ともすれば薬の材料を持っているかもと読み、ここまで足を運んできたのかもしれない。そう考えると店主の過度な対応も納得いく。またそんな状況で、曖昧な言葉を言うのは好ましくはない事も理解出来るが……


「だとしても…… あの態度はどうかしてるっ」


 苦々しく吐いた言葉にセルリルは私を一別するも、すぐさま本に目を落とした。




読んで頂き有難うございます

星、いいね、感想

頂ければ幸いです


また先日アップしました7話ですが

編集前のが上がっていた様です汗


読みにくかったですよねきっと……

申し訳ございません

せっかく遊びに来て下さったのに泣


再度手を加えさせて頂きました

もしこのコメを目を通しお気づきになられた方

読み直して頂ければ幸いです




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ